日本国内において、プロジェクトマネジメントの資格といえばPMP(プロジェクトマネジメントプロフェッショナル)であり、その認定団体は米国に本部を置くPMI(プロジェクトマネジメント協会)、基準となるドキュメントはPMBOKと、広く認識されている。国際標準化といわれても何を標準化するのかいぶかる向きも少なくないはずだ。しかし、ヨーロッパを中心にスイスに本部を置くIPMA(国際プロジェクトマネジメント協会)が活動しており、ICB(IPMAコンピタンスベースライン)という基準を持って資格制度を実施している。さらに、2つの基準に影響を受けながらも各国の基準も存在しており、グローバル化するプロジェクト活動において微妙な基準の違いなどが障害になってきている。
そうしたさまざまなプロジェクトマネジメント基準における用語、定義などの差異を、高いレベルから国際標準化しようという作業が2007年からISOにおいて進められている。その中心となっているのがISOのPC(プロジェクトコミッティ)236であり、国内委員会をIPAが運用している。標準化作業は、この1月にコミッティドラフトが提示されており、その後調整を重ねて、2012年にはISO21500として発行される予定だ。内容は、用語、簡潔なコンセプト(ポートフォリオ、プログラム、ガバナンスなど)、標準プロセス(入力、出力)、プロセスグループ間の関係図といった要素で構成されており、標準プロセスに関しては、PMBOKと比べてステークフォルダーマネジメントが追加され、リスクマネジメントが簡素化されているという。
PC236は、国際的な影響力を持つPMIやIPMAの関係者および各国の代表により構成されており、各団体や国内事情による妥協の産物である部分は否めないという。しかし、利害関係を持つメンバーによって策定された標準であるからこそ、国際標準をどのような形で反映させていくのか、PMIやIPMAの動向、PMBOKの改定などがISO21500の発行前から注目される。
※パネルディスカッション「プロジェクトマネジメント国際標準化の影響」は、PC236国内委員会のメンバーにより行われた。登壇者は次のとおり。
モデレーター:関哲朗(委員長、文教大学情報学部准教授)
パネラー :冨永章(委員、PMラボラトリー代表)
小林正男(委員、富士通)
田島彰二(委員、日本電気)
高橋道夫(委員、日本プロジェクトマネジメント協会統括副理事長)
新谷勝利(副委員長、IPA SEC)