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セールスフォース、AIエージェント「Agentforce 2.0」富士通と協業で日本投入、推論機能やSlack連携など機能強化

AIエージェントの機能拡充と推論能力の向上

株式会社セールスフォース・ジャパン 専務執行役員 製品統括本部 統括本部長 三戸 篤氏/同 製品統括本部 プロダクトマネジメント&マーケティング本部 シニアマネージャー 前野 秀彰氏
(左より)株式会社セールスフォース・ジャパン 専務執行役員 製品統括本部 統括本部長 三戸 篤氏/同 製品統括本部 プロダクトマネジメント&マーケティング本部 シニアマネージャー 前野 秀彰氏

 1月29日セールスフォース・ジャパンは、同社の自律型AIエージェント基盤「Agentforce」の大幅アップデートとなる「Agentforce 2.0」を日本市場で提供していくことを発表した。同アップデートでは、業務自動化のためのAIエージェントのスキルライブラリの拡充や、推論機能の強化、コミュニケーションツール「Slack」との連携機能の追加など、新機能が多数導入される。

 Agentforceは、Salesforceプラットフォーム上に構築された自律型AIエージェントのスイート。営業、マーケティング、カスタマーサービス、コマースなど、幅広い業務タスクを24時間365日自動処理する。リアルタイムデータに基づき、プロアクティブに顧客や従業員を支援する点が特徴だ。

 同社専務執行役員 製品統括本部 統括本部長の三戸篤氏によると、サービス開始からわずか1週間で200社以上の契約を獲得し、2023年12月末時点では1,000社を超える有償ライセンス契約を達成したという。AIエージェントへの注目の背景には、深刻化する労働力不足の課題がある。三戸氏は「企業の持続的な成長には、労働力不足の解決が不可欠です。AIエージェントによるデジタル労働力は、この課題に対して大きなインパクトを与えるテクノロジーになると確信しています」と語る。

 続いて登壇したセールスフォースの前野秀彰氏は、Agentforce 2.0の主要な強化ポイントとして、AIエージェントの機能拡充と推論能力の向上を挙げた。

(出典)セールスフォース [画像クリックで拡大]

 「デジタル労働力を提供するプラットフォームとしてAgentforce 2.0を位置付けています。AIエージェントがより多くのことができるようになり、より人間のように深く考え、正確に行動できるようになることを目指す」と前野氏は説明。

 新バージョンでは、従来の推論エンジンを大幅に強化。特に注目すべき機能として、メタデータで強化したインデックスによる高度な検索機能が実装された。この機能により、PDFなどの非構造化データから、質問に関連する情報を正確に抽出できるようになった。

 前野氏は具体例を挙げながら、「従来のPDF検索では、ドキュメントが質問に対する回答を想定して作られていないため、適切な情報抽出が難しかった。新機能では、ドキュメントから想定される質問リストを自動生成し、それをインデックス化することで、より正確な情報検索が可能になる」と説明する。

 さらに、検索精度を向上させる「検索レトリーバー」が加わった。この機能は、ユーザーからの質問を分析し、必要に応じて検索クエリを自動的に最適化する。また、回答の信頼性を高めるため、情報源のインライン引用機能も備えている。

スキルライブラリの拡充でエージェント作成を効率化

 Agentforce 2.0では、営業やカスタマーサービスなど、業務別に最適化された事前作成済みのスキルライブラリも提供される。「例えば営業領域では、見込み客への自律的なアプローチから商談作成まで行える『セールスデベロッパー』というスキルを用意しています」と前野氏は述べる。

(出典)セールスフォース [画像クリックで拡大]

 また、新たに生成AIを活用したエージェント作成機能も追加された。ユーザーが自然言語でエージェントの役割や業務範囲を記述するだけで、AIが必要なトピックやアクションを自動生成する。これにより、カスタムエージェントの作成プロセスが大幅に効率化される。

(出典)セールスフォース [画像クリックで拡大]
株式会社セールスフォース・ジャパン 製品統括本部プロダクトマネジメント&マーケティング本部 マネージャー 鈴木 晶太氏/富士通株式会社 Global Business Applications事業本部 Salesforce事業部 シニアディレクター 山﨑 洋輔氏
(左より)株式会社セールスフォース・ジャパン 製品統括本部プロダクトマネジメント&マーケティング本部 マネージャー 鈴木 晶太氏/富士通株式会社 Global Business Applications事業本部 Salesforce事業部 シニアディレクター 山﨑 洋輔氏

 もう1つの新機能の目玉が、Slackとの連携機能だ。同社マーケティングマネージャーの鈴木晶太氏は、「社内のコラボレーションツールとしてスタートしたSlackは、その使いやすさによって1日に世界中で7.7億以上のメッセージのやり取りが行われている」とし、Slack上でのAIエージェント活用を紹介した。

(出典)セールスフォース [画像クリックで拡大]

 Slack上では「Agentforceハブ」を通じて利用可能なAIエージェントを一覧表示でき、必要な機能を持つエージェントにすぐにアクセスできる。エージェントは会話形式で指示を受け付け、資料作成やスケジュール調整、IT機器の手配など、様々な業務タスクを自動で実行する。

富士通での実践事例が示す効果

 富士通では、すでにAgentforceの本番運用を開始している。富士通 Global Business Applications事業本部 Salesforce事業部シニアディレクターの山﨑洋輔氏は、サポートデスク業務での活用について、次のように説明する。

 「定常的なお問い合わせや、バージョンアップ時の操作方法など、ナレッジベースで回答できるものは全てエージェントに任せることで、全体の問い合わせの約15%程度をAIエージェントによって置き換えることが可能だ」

(出典)セールスフォース [画像クリックで拡大]

 さらに山﨑氏は、AIエージェント導入の目的について、「オペレーターを減らすのではなく、より高度な対応にオペレーターをシフトさせていくことを目指している。人が今までやってきた業務領域にどんどんAIが入ってくるのは確かですが、人間はAIをより活用し、業務を高度化させていく方向にシフトしていきたい」と語った。

 また導入時の知見として、「AIに任せる業務の選定」「適切な実装」「データ品質の継続的な改善」の3点が重要だと指摘。特にデータ品質については、「AIからの回答はデータの品質に依存する部分が大きく、常にデータを更新・改善していく必要がある」と強調した。

 この実践で得られた知見をもとに、富士通では顧客企業へのAgentforce導入支援サービスも開始する予定だ。山﨑氏は業務アセスメントからAI機能の実装、運用後のサポートまで、一気通貫でのサービス提供を計画していると語った。

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この記事の著者

京部康男 (編集部)(キョウベヤスオ)

ライター兼エディター。翔泳社EnterpriseZineには業務委託として関わる。翔泳社在籍時には各種イベントの立ち上げやメディア、書籍、イベントに関わってきた。現在はフリーランスとして、エンタープライズIT、行政情報IT関連、企業のWeb記事作成、企業出版支援などを行う。Mail : k...

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