日立製作所(以下、日立)は、1年前に発表したNVIDIAとの協業を通じ、新製品のローンチや先進的なプロトタイプの開発、専門家による協議会の設置など、イノベーションを加速し、フィジカルAIの実現を推進する、様々な成果をあげたと公表した。
日立とNVIDIAは、2024年3月に、エネルギー、モビリティ、コネクテッドシステムなどの業界を変革するAIソリューションを開発することにより、社会イノベーションを推進すると発表。同パートナーシップは、デジタルツインによるシミュレーションとアセット最適化の強化、日立のインダストリアルAIソリューションとNVIDIA AI EnterpriseおよびNVIDIA PhysicsNeMoプラットフォームの統合、AIインフラストラクチャーおよびソリューションの包括的ポートフォリオの構築という3つの重点分野を定めているという。
米国子会社の日立デジタルは、AI導入を指揮して顧客と社会にインパクトのあるソリューションを提供するための専門協議会「Industrial AI Advisory Council」を設立。また、2024年の段階で、日立デジタルは、日立とNVIDIAのAI技術を使用したソリューションの定義に重点的に取り組むAI Center of Excellence(AI CoE)を立ち上げたという。AI CoEは、工場組み立てライン設計を支援するLine Builderや送電網運用を最適化するPower Grid Optimization Solverなど、エネルギー、産業、モビリティの各分野における先進的なプロトタイプの試験運用に成功しているとのことだ。
日立のAIに関する具体的な成果は次のとおり。
- インダストリアルAIに関する協議会を設立:日立デジタルは、さまざまな業界の第一人者やソートリーダーで構成される招待制の協議会として「Industrial AI Advisory Council」を設立。メンバーは、大企業や革新的なソフトウェア企業、急成長しているスタートアップ企業、アカデミアからの専門家で構成されており、大規模なプラットフォーム開発やオープンソースLLMアプリケーションからインテリジェントソフトウェア、フィジカルAIアプリケーションに至るまで、幅広いトピックについてアドバイスを行っているという
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AI Center of Excellence(AI CoE)の発足:様々な業界で日立やその他企業の先進AI技術を活用した統合ソリューションの探索、改良、実装に注力。現在までに、CoEは、エネルギー、産業、モビリティの各分野において、いくつかの先進的なプロトタイプの試験運用に成功しているとのことだ。代表例は次のとおり
- Line Builder:AI CoEとJR Automationが共同開発したLine Builderは、NVIDIA Omniverseを搭載し、AIによる可視化により、工場組み立てラインのコンセプト開発を支援するソリューション
- 日立エナジーのPower Grid Optimization Solver:NVIDIA cuDSS上に構築されたソリューションで、電力負荷の複雑化や予測不可能なエネルギー需要の変動によって引き起こされる、複雑で大規模な電力潮流の管理を簡素化するという
- Hitachi iQの提供:スケーラビリティとコスト効率を備えたAIインフラストラクチャーとソリューションを提供するもの。NVIDIAのアクセラレーテッド コンピューティングを活用したこのポートフォリオは、多様かつ変動するデータサイズ、データタイプ、ワークロードに適応する柔軟性を顧客に提供するという。また、Hitachi Vantaraは、Hitachi iQポートフォリオに新たに加わった「Hitachi iQ Mシリーズ」の提供を開始すると発表した。同製品は、組み込みの柔軟性と拡張性により、より低い導入コストで顧客ニーズの進化に対応できるとしている
- HMAXの提供:日立レールが発表したHMAXソリューション群は、鉄道業界向けに提供する、列車や信号システム、インフラを含む鉄道エコシステムの包括的なデジタルアセットマネジメントソリューション。産業用のエッジAIプラットフォームであるNVIDIA IGXと、センサー処理プラットフォームであるNVIDIA Holoscanを搭載したHMAXは、大量のデータをエッジでリアルタイムに処理するという
- 日立のコーポレートベンチャーキャピタルファンド:コーポレートベンチャーキャピタルファンドである「HV Fund」に参画する38社の中には、イノベーションの限界を押し広げる10社以上のAIスタートアップ企業が含まれており、AI分野における先進的な取り組みへのコミットメントを強化しているという。これらのスタートアップ企業は、業務上の安全性の向上や高度な大規模言語モデルの活用から、次世代ロボットプログラムの開発、エッジコンピューティングソリューションの提供、救命に貢献する新薬開発に至るまで、多様な領域でのAI技術の活用に取り組んでいるとのことだ
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