2026年2月28日に、日本市場向けの事業戦略発表会を開催したシスコシステムズ(Cisco)。社長執行役員に就任して今年で3年目を迎える濱田義之氏は、2026年度に向けて「Bold Move ~次のステージへ大胆な一歩を~」をスローガンとして掲げる。
今回の発表会で焦点が当たったのは、同社のサイバーセキュリティ事業についてだ。「Ciscoが目指すのは、『One Cisco/One Portfolio』だ」と濱田氏。ネットワークやコラボレーション、データセンター、セキュリティ、オブザーバビリティをそれぞれ個別に導入するのではなく、単一のシームレスなプラットフォームで提供するというのが同社の責務だと述べた。
直近のサイバーセキュリティ関連の取り組みとしては、同社が運営する脅威インテリジェンスチーム「Talos(タロス)」の日本国籍チームの立ち上げや、国家安全保障アドバイザーの任命、さらには学生向けに展開していた人材育成プログラム「Networking Academy」の社会人向けの開放(今後5年間で10万人の参加者育成を目指す)などが紹介されたが、特にスポットライトが当てられたのは、2024年に設立が発表された「サイバーセキュリティ・センター・オブ・エクセレンス(CoE)」の進捗についてだ。

CoEのセンター長には、同社が買収したSplunkより、内山純一郎氏(Splunk Services Japan 社長執行役員)が就任した。今年度は、従来のサイバー脅威対応や人材育成、政策支援に加えて、「Security for AI(AIを守る)/AI for Security(AIで守る)」の分野にも活動領域を広げていくという。

その一環として、2025年にCiscoが発表したセキュリティ特化のLLM(大規模言語モデル)である「Foundation AI」の日本への展開などが既に始まっている。たとえば、このLLMから生まれたAIモデル「SecureBERT 2.0」は、オープンソースのAIモデルとしてGitHubなどで展開済みだ。情報通信研究機構(NICT)との協業で今後も追加の開発などを検討していくという。
内山氏は、CiscoとSplunkの融合が進んでいる点も強調した。「Ciscoは世界最大級のネットワーク可視性を持つ。いうなれば強靭な“神経”、つなぐ力だ。そしてSplunkは“頭脳”の役割を果たす。ここに両社の統合の本質がある。『Ciscoが捉えて、Splunkが理解する』──そしてAIエージェントの暴走や侵害を止める」と同氏は述べ、この運用モデルを「AgenticOps」と呼んだ。

「両社の統合がもたらす価値の一つが『統合オブザーバビリティ』です。たとえば、基幹システムのSAPで遅延が発生した際、従来はアプリケーション、インフラ、ネットワークの各担当者の間で『自分の担当範囲では問題はない』とたらい回しが起こっていました。しかし、(Ciscoが2017年に買収した)AppDynamicsの技術がSplunkにも統合されたことで、SAPの操作からネットワークの端末まで、すべてのトランザクションが1本の線でつながります。原因は外部からの攻撃か、それともバグか、瞬時に判別できるベンダーは私たちだけです」(内山氏)

CoEについては、2026年には“フェーズ2”へ移行していくと同氏。キーワードは「単なる技術の実証から、日本社会レベルでの実装へ」だと述べた。ここで強調したいのは、パートナーエコシステムの再構築だという。日本市場ではまだまだSplunkを使いこなせていない企業が多い現状を踏まえ、単にソリューションを提供して終わりではなく、同社のCoEがパートナーとともに伴走型のマネージドサービスも提供し、顧客が自走できるレベルまで支援するとのことだ。
また、国家サイバー統括室(NCO)やNICTとの連携も引き続き強化し、日本の安全保障を支える“Threat Intelligence Hub(脅威インテリジェンスハブ)”としての機能を果たすとした。そして、AIと人が協働する時代こそ「人」の存在価値と役割を大切にし、Human-Centric/Human in the Loopなアプローチを重んじる姿勢を示した。
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名須川 楓太(編集部)(ナスカワ フウタ)
サイバーセキュリティとAI(人工知能)関連を中心に、国内外の最新技術やルールメイキング動向を取材しているほか、DX推進や、企業財務・IRなどのコーポレート領域でも情報を発信。武蔵大学 経済学部 経済学科 卒業。
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