Snowflakeは7月2日、年次カンファレンス「Snowflake Summit 26」の発表内容および日本法人の事業戦略に関する説明会を開催した。
冒頭、同社 社長執行役員の浮田竜路氏は直近の業績について言及。2026年度の売上高は44億7000万ドル/前年比29%成長を記録し、直近の2027年度第1四半期においても売上高は13億3000万ドル/前年比34%成長と、さらに勢いを加速させている状況を示す。特にAPJの成長率はグローバルの成長率を上回る高い水準にあり、日本市場におけるパフォーマンスが向上していることを示した。
続いて、同社 井口和弘氏が、Snowflake Summit 26で発表された「Agentic Enterprise(エージェント型企業)」を実現するための具体的な製品・技術戦略を紹介した。Agentic Enterpriseとは「何をするか」を人が決め、「どう動くか」をAIエージェントが自律的に担うという新しい仕事の形を指す概念。井口氏は、このビジョンを支える4つの主要コンポーネントとして「AIモデル」「エンタープライズデータ&コンテキスト」「エージェンティックコントロールプレーン」「ソフトウェア&アプリケーション」のそれぞれにおける機能強化を解説した。
1つ目の「AIモデル」の領域では、Anthropicとの戦略的提携の進化により、ClaudeをSnowflakeへ直接統合したことが発表されている。これにより、高度なガバナンスを維持したまま、高精度のAI推論を自社データのすぐ側で実行できる環境が整ったと強調。さらに、xAI社の「Grok」のフルマネージド提供、独自モデルやオープンソースモデルをプラットフォーム上にホスティングしてSQL関数から直接呼び出せる「Bring Your Own Model」の機能も提供される。
2つ目の「エンタープライズデータ&コンテキスト」の領域では、組織内に散在するデータ定義や利用情報を集約して正しい業務文脈として自動活用する「Horizon Context」や「Cortex Sense」が発表されている。これにより、企業向けのビジネス回答の精度が大きく向上し、本番グレードのAIエージェントを数日で構築できるようになるとした。データ基盤自体の強化として、Kafka完全互換でサブ秒レイテンシを実現するフルマネージドストリーミングサービス「Snowflake Datastream」や、「Apache Iceberg V3」のサポート実装も示された。
3つ目の「エージェントコントロールプレーン」は、AIエージェントが企業データや業務システムに安全につながり、ガバナンスと制御、監査を行うための共通基盤。同社は今回のカンファレンスにて、MCP(Model Context Protocol)のガバナンスプラットフォームをもつNatoma社の買収を発表し、SalesforceやWorkday、ServiceNowといった100以上の外部業務システムに対してセキュアに接続できる体制を確立したという。
さらに、エージェントを悪用した攻撃から自動的かつ設定不要でリアルタイムに守る「Horizon AI Guardrails」を標準搭載。コンプライアンス要件を満たすために、エージェントに固有の識別子を与える「Agent Identity」を導入し、「誰が何をしたか」をセッション単位で追跡・監査できる仕組みも提供するとした。
4つ目の「ソフトウェア&アプリケーション」の領域では、サードパーティーとのコラボレーション環境の一般提供開始や、SAPデータなどをETLプロセスなしでコピーせずにリアルタイムでAIに届ける「ゼロコピー双方向統合」の強化が行われたことを説明する。また、これらのインフラの上に構築されるエンドユーザー向けの新製品として、ナレッジワーカー向けのパーソナルAIエージェント「Snowflake CoWork(CoWork)」と、データエンジニアリングや機械学習のコーディングを自律的に行う開発者向けエージェント「Snowflake CoCo」の2つが紹介された。
ゲストとして登壇したNTTデータの渡辺麟太郎氏は、データエンジニアリング業務そのものにAIを組み込むアプローチとして、実業務における3つの具体的な応用事例を紹介した。
1つ目は、ITの専門知識をもたない現場のビジネスユーザーがCoWorkと自然言語で対話しながら、動的にデータビューやデータアプリケーションを構築していく「データの民主化」の事例。原価管理において過去の実績との比較アプリを自作したり、営業が戦略に基づいて顧客のヒートマップを作成したりといった作業が、現場主導で行われているという。これらは現場自身の手で継続的に改修されており、迅速性と業務への浸透度が高まっているとした。
2つ目は、メタデータの整備を自動化する試みだ。従来は業務部門へのヒアリングシート配布やエンジニアによる手作業の作り込みで多くの工数がかかっていたプロセスを、AIが関連する設計書などのドキュメントを読み込んで自動でメタデータ整備の一次案を作成する形に変革したという。データエンジニアは生成された一覧をレビューしてマスター登録するだけで作業を完了させることができるとしている。
3つ目は、ダッシュボードの情報に、議事録や業務文書、メール履歴といった非構造化データの背景情報をAIエージェントによって付加する取り組み。これにより、その数字の裏にあるプロジェクトの状況や文脈を深く知らない人であっても、熟練者と同等の業務インサイトを得られるようになったことを指摘する。渡辺氏は一連の取り組みを経て、「1つのデータが便利に使えるようになると、それに惹かれてさらに多くのデータが集まってくるという『データの引力』のような現象が起きている」と語った。
再び登壇した浮田氏は、日本市場における事業戦略について語った。まずは日本市場におけるデータのサイロ化にまつわる課題を指摘し、「個別課題ごとにバラバラなツールを導入するのではなく、データとAIの基盤が強固に融合されたプラットフォームを導入することで、複数の複雑な課題を同時に解決に導くアプローチが重要になる」と述べる。
実際にSnowflakeの国内導入企業のうち、既に78.4%の企業がSnowflakeのAIサービスを利用しているという。浮田氏は、日本政府のセキュリティ要求基準をクリアしたクラウドサービスとして「ISMAP」への登録が完了したことに触れ、「官公庁や自治体のほか、金融や医療といった厳格なガバナンスが求められる民間企業のDXプロジェクトに対しても、高水準のセキュリティを担保したうえで全社レベルのAI実装を推進できる体制が整った」とした。
さらに同社は現在、国内におけるパートナー連携によるビジネスの割合が90%以上を占めており、数百社の国内パートナーとの信頼関係を築いているという。人材育成面においても、2025年4月に開講したプラットフォームトレーニングの受講者数が、5日間の講習を経て既に3,000名を超えている実績をアピールした。
浮田氏は最後に、「AIモデル、エンタープライズデータ、ソフトウェア、そしてそれらを安全に制御するコントロールプレーンを1つのプラットフォームとして包括的に提供できるのはSnowflakeだけである」と自信をみせ、日本市場におけるAgentic Enterpriseの実現を支援していく姿勢を示した。
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