Women AI Initiative Japan(以下、WAIJ)は2026年7月6日、AI技術を活用して自らのキャリアやライフスタイルを切り拓いた女性を表彰する「WOMAN AI AWARD 2026」の表彰式を開催した。
初の開催となった同アワードには、全国から191件のエントリーが集まったという。そのうち約9割が非エンジニアで、15歳から69歳まで幅広い世代の女性たちが応募。審査では「共感性」「独自性」「変革性」の3軸が重視され、一般投票では2,803票が集まった。
代表理事の國本知里氏は冒頭、「AIに仕事を奪われると敵視するのではなく、AIを味方にして自分のキャリアを切り拓く女性を表彰し、そのストーリーを社会に発信していく」と開催の狙いを語る。
部門別の受賞者は以下の通り。
カンパニー・イノベーター賞(企業・組織内でAI変革を主導した人)
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安達真実氏(株式会社サイバーセキュリティクラウド)
採用業務を55の工程に分解し、AI前提のプロセスへ再設計。面接評価の工数を半減させながら、評価品質の向上と全社展開を成し遂げた。
審査員講評(朝比奈ゆり子氏):「採用は定型が作りづらい業務の代表格。そこに正面から向き合い、再現性のある形に再構築した。キャリアか育児かの二者択一に悩む人々にとっての希望になる」
受賞者コメント(安達氏):「前例のない取り組みを力強く後押ししてくれた会社に感謝したい。AIを単なる効率化のツールではなく、自分の領域を拡張してくれる『協働パートナー』と定義し直したことが大きな転換点となった」
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石丸香織氏(株式会社Reelu)
乳がんの治療や出産といったライフイベントの渦中にありながら、社内のオペレーションに生成AIを組み込んで自動化。人件費約20%の圧縮と黒字化前倒しを達成した。
審査員講評(朝比奈氏):「AI活用を個人の武器にとどめず、組織の仕組みへと昇華させた。ライフイベントはキャリアのブレーキではなく、仕組みを進化させるきっかけになると身をもって証明してくれた」
受賞者コメント(石丸氏):「20代は月300時間以上がむしゃらに働いてきたが、30代後半で乳がんが発覚した。治療しながら成果を出す働き方に悩んでいたときに生成AIに出会い、希望を見つけた。時間的・身体的な制約があっても挑戦を諦めなくていい」
【コミュニティ賞】(AIの活用文化を広げ、仲間を増やした人)
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長瀬マキ氏(フリーランスエンジニア)
AI開発の勉強会で会場の女性が自分1人だったという原体験から、女性向け技術コミュニティ「Women’s Base」を設立。託児付きにするなど参加の壁を下げ、毎回40人近い女性が参加する実践の場へと育て上げた。
審査員講評(川嶋治子氏):「当事者意識から課題を一つひとつ丁寧に解消し、温かくも革新的な場を作った。自ら先陣を切って背中を見せることで、後に続く多くの人のために扉を広げている」
受賞者コメント(長瀬氏):「行動のきっかけは『自分が現状に不満だから、嫌だから』という理由だったが、評価されて嬉しい。アワードを通じて技術コミュニティの存在を知ってもらい、一歩を踏み出す人が増えれば本望だ」
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藤本祥恵氏(株式会社すかいらーくホールディングス)
店舗での接客・調理の現場経験を活かし、本部のAI推進チームリーダーとして生成AIの社内浸透を牽引。非IT人材の立場から、本社で8割以上の日常活用を達成した。
審査員講評(川嶋氏):「確立された大企業を変革し、無関心層を巻き込んでいくのは並大抵ではない。現場のリアルを知っているからこそ、技術と現場の距離を縮めるインクルージョンを体現できた」
受賞者コメント(藤本氏):「現場出身だからこそ解決したい課題が多くあった。これまでエンジニアリングができず形にできなかった人に、AIはチャンスを与えてくれた。『パソコンが苦手だから』と使わないのはもったいない。ちょっとずつ使って現場を楽にしていきたい」
ソーシャルインパクト賞(公共・教育・医療などの現場で社会課題を解決した人)
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小林七彩氏(東京科学大学)
精神科医としてゲーム・ネット依存症の臨床に向き合う中で、医療の地域格差に対峙。AIチャットボットによる早期介入ツールなどを自作し、24時間寄り添える支援体制を構築した。
審査員講評(白河桃子氏):「限られたリソースの中で地域格差の大きい精神医療にAIを組み合わせ、インパクトのある社会的アプローチを可能にした。診察室の外にいる患者へ医療を届ける新たな可能性を開いた」
受賞者コメント(小林氏):「診察室で出会う患者さん以外に支援を届ける手段を考えたとき、AIは非常に便利だった。デジタルは強力な武器だがリスクもともなう。いかにリスクを最小限にし、生活を豊かにしていくかが大事だ」
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こやままゆこ氏(片山小学校職員)
専業主婦を経て小学校の職員に再就職。キャリアブランクを埋める伴走者にAIを選定し、紙のプロンプト通信というアナログなアプローチを併用して学校全体に活用を広げ、教職員の残業時間を5割削減した。
審査員講評(白河氏):「学校のリソース不足という深刻な課題に対し、若手からベテラン、栄養士にいたるまで誰一人取り残さない『優しいAI活用』を展開した。その成果は全国の教育現場のモデルとなる」
受賞者コメント(こやま氏):「壁に当たることもあったが、温かい支えがあってここに立つことができた。『紙』の前にまだいる先生方にもこんなに素晴らしい世界があるんだよと伝えるために、足が震えながらも壇上に立っている」
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吉谷愛氏(フロイデ株式会社)
IT・福祉のグループ4社を率いる経営者として、AIを福祉現場に導入。障害のあるスタッフやIT未経験者がWeb制作などの高付加価値業務を行える環境を整備し、自社基盤のOSS公開も行った。
審査員講評(白河氏):「無職やフリーターのエンジニア育成実績をもとに、DXが難しい福祉領域の現場に切り込んだ。AIを用いて障害のある方々がより高い付加価値を生み出す、社会構造を変える取り組みだ」
受賞者コメント(吉谷氏):「業界では『AIに仕事を奪われる』と言われるが、私たちの現場では逆の現象が起きている。病気で離職したシニアエンジニアが復帰し、未経験の若者が結果を出している。AIは今まで陽の当たらなかった人に光を当てる道具だ」
ネクストジェネレーション賞(次世代のロールモデルとなる10〜20代の旗手)
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渡邉茜氏(シンシアリー株式会社)
やりたいことが見つからず悩んでいた中、大好きな「推し活」のために生成AIを活用し始めたことをきっかけに人生が一変。現在はリードAIエンジニアとしてキャリアを確立している。
審査員講評(川嶋氏):「キャリアの目的(パーパス)を求められがちな時代に、自分の『好き』に正直に生き、人生の主導権を取り戻したストーリーが素晴らしい。自分に嘘をつかないかっこいい次世代のリーダーだ」
受賞者コメント(渡邉氏):「純粋に『もっと推し活がしたい』という思いでAIに出会った。テクノロジーに疎かった私でも行動し続けた結果、ここに立てている。人を輝かせ行動させるのは純粋な『好き』の気持ちだ」
ファウンダー賞(AIを核に、自ら事業を立ち上げ・経営する人)
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澤田ありさ氏(株式会社Scale Technology)
広島を拠点とする非エンジニアの経営コンサルタント。自身の知見をAIに実装し、本来なら3ヵ月規模の人事アプリ開発を2週間で実現。中小企業へ大企業並みの人事機能を届けるビジネスを展開する。
審査員講評(藤本あゆみ氏):「開発期間を圧倒的に縮めたスピード感も素晴らしいが、それを地方の中小企業の経営加速のために役立てている。作りたいものを素早く形にして世界を変えられるという、AI時代の起業を体現している」
受賞者コメント(澤田氏):「1年半前までは普通の会社員だった。コンサルの仕事がAIに置き換わるという危機感を抱きつつ、中小企業にとっては大きな力になると確信して起業した。環境や場所、性別を言い訳にせず挑戦できることを証明したい」
ライフ・イノベーター賞(「暮らし」の領域をAIで変革した人)
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宮崎真理氏
3人の子育てをする専業主婦期間中に、生成AIを家庭に導入。対話を通じて自作した暮らしの仕組みをXで1,000日以上発信し続け、書籍『AI×家事』(扶桑社)の出版にいたった。
審査員講評(羽生祥子氏):「ライフ領域の応募は非常に多かったが、彼女の取り組みはブラックボックス化しない点が秀逸。1人で完結させず、情報を家族LINEへ自動共有して夫や子どもを巻き込むなど、家庭の課題を社会の知見に変えた」
受賞者コメント(宮崎氏):「10年間、仕事の現場ではなく家庭という自分の地盤でAIを家事や子育てに使ってきた。家庭での活用はまだまだこれから。新しいテクノロジーが家庭に入ってくることで、毎日の暮らしはもっと楽しくなる」
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和田幸子氏(株式会社タスカジ)
家事代行マッチングプラットフォーム「タスカジ」の運営において、現場に眠る家事の知見を生成AIで構造化。かつては5名でも不足していたカスタマーサポートを、1人で運用できる体制へと進化させた。
審査員講評(羽生氏):「共働きが肯定される前の15年前から『家事を人に頼む輪郭』を社会に提示してきたパイオニア。そこから時を経て、今回はフィジカルAIやサポートの省力化など、最先端の技術へ臆せずトライする姿勢を高く評価した」
受賞者コメント(和田氏):「正しい仕組みを導入すれば業務の無駄がゼロになり、人はクリエイティブになれる。家事の課題が誰かの犠牲で維持されている現状をテクノロジーで解決したい。AIを家庭に導入し、家の中から世界を変えていく」
リ・スタート賞(AIに出会い、キャリアを再起動した人)
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澤田智馨氏(株式会社NTTフィールドテクノ)
20年間の派遣社員生活を経て正社員に。定年まで残り10年という段階でAIに挑戦し、会社のダブルワーク制度を用いて最も負荷の高かった電話対応業務などの自動化・標準化を主導した。
審査員講評(矢田稚子氏):「日本において派遣という働き方を選ぶ女性は多い。その中で葛藤を抱えながら一歩を踏み出し、組織の活用率を大きく改善させた。『これなら私にもできるかもしれない』と思わせる最高の実践モデルだ」
受賞者コメント(澤田氏):「あと10年で何か社会貢献ができないかと悩んでいた時にAIが登場した。50歳を前に挑戦したが意外とすんなり習得でき、人生が変わった。今後も現場発の変革リーダーとして課題を解決していきたい」
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本多充輝氏(全国英語通訳案内士)
キャリア20年の全国英語通訳案内士。69歳でAIに出会い、GoogleのGeminiと1,000時間以上の対話を重ねて「通訳案内士に特化したAI研修」を独自開発。第1期は1分で満席となり、大手旅行会社のAIアドバイザーにも就任した。
審査員講評(矢田氏):「新しいことを学び始めるのに年齢は関係ないと証明してくれた。年齢は単なる年輪。通訳案内士という極めて専門的な産業に焦点を当て、新しい事業の可能性を提示してくれたことに非常に勇気をもらった」
受賞者コメント(本多氏):「ぶっちぎり最年長の69歳だが、AIという言葉が生まれた1956年と同い年なので、私は『AIの申し子』。パソコンを壊しかけるほど知識ゼロからのスタートだったが、対話を重ねて研修を作ることができた。今後はインバウンドと防災を組み合わせた地方創生に取り組みたい」
一般投票賞(一般投票において最多得票を獲得した人)
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葛󠄀谷志帆氏(東海旅客鉄道株式会社)
各部門で孤軍奮闘していた総務担当者24名をつなぐ部門横断コミュニティ「アドミンコネクト」を設立。生成AIを伴走役に業務の標準化を推進した。
審査員講評(高井志保氏):「数あるファイナリストの中で最も多くの票が集まった。寄せられた温かい応援コメントは、葛谷さんの歩みがいかに多くの人の心を動かしたかの証。『支える側から会社を変える側になれる』という言葉を体現した」
受賞者コメント(葛谷氏):「メンバーの多くが文系出身でIT初心者だったが、生成AIを活用することで、受動的ではなく『自分が業務をデザインする側』に踏み込めた。単なる会社の効率化ではなく、それによって生み出された時間で、メンバー1人ひとりがより豊かな人生を送ることを大切にしている」
最後に総評として登壇したWAIJ代表理事の國本氏は、今回のアワードを「専門家だけのものだったAIを使い、自身の人生や周りの仕組みを当たり前に変えていく『景色のアップデート』を感じた」と振り返った。15歳から69歳まで、派遣社員や専業主婦など挑戦に属性や年齢は関係ないとし、「当事者の『困りごとを解決したい』という思いをAIが後押ししてくれた。世の中全体が変わっていく大きな一歩を確信できた」と総括した。
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小山 奨太(編集部)(コヤマ ショウタ)
EnterpriseZine編集部所属。製造小売業の情報システム部門で運用保守、DX推進などを経験。
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