エクイニクス・ジャパンは2026年9月30日、AIインフラの市場動向とソリューションに関するオンライン記者説明会を開いた。9月上旬に米国で発表したマネージド型接続サービス「Equinix Fabric One」と、推論基盤の構想「Equinix Inference Exchange」を国内向けに紹介。AI活用の重心が学習から推論へ移り、データ、モデル、GPUが複数の場所に散らばるなかで、それらを中立的な立場で結ぶ接続基盤を打ち出した。
Equinix Fabric Oneは、米エクイニクスが2026年9月2〜3日に米サンフランシスコで開いた同社初の顧客・パートナー向けイベント「Equinix Horizon」で発表したサービスだ。利用企業がポータルやAPI、自動化ワークフロー、AIエージェントからのリクエスト、自然言語のプロンプトで「どこと、どんな要件でつなぎたいか」を指定すると、必要な接続を判断して自動で提供する。ルーティング、クラウド接続、暗号化、冗長化、フェイルオーバーといった機能のオーケストレーションと運用管理を、単一のマネージドサービスとして担う。
接続仕様には、アマゾン ウェブ サービス(AWS)とGoogle Cloudが共同で策定したオープンソースの接続仕様「OpenAPI 3.0 Interconnect」を採用した。アプリケーションやAIエージェントが、人手を介さずにプログラムから接続の検出、要求、プロビジョニングを実行できるようにするという。2026年後半にベータ提供を始め、まず北米で2027年中の一般提供を予定している。
エクイニクス・ジャパン リューションエンジニアリング本部 シニア ソリューションズアーキテクトの吉田英一氏は、Fabric Oneを既存サービスの延長線上に位置付ける。同社のレイヤー2(L2)接続サービス「Equinix Fabric」は、もともと「クラウドエクスチェンジ」の名称で提供してきたクラウド接続サービスで、現在は企業間接続やグローバル接続もオンデマンドで提供している。今年はこれに可観測性と自動化を担う「Fabric Intelligence」を加え、その先にオーケストレーションを担うFabric Oneを置く。
「これまではどのルーターが必要か、どのポートが必要かという話でした。Fabric Oneなら『データをここからここへ移したい』『このモデルを使いたい』と伝えれば、自然言語で自動的にやってくれます」と吉田氏は話す。たとえば社内で使っているTeamsから「AWSとつないでほしい」と入力すれば、オンプレミス環境とAWSとの接続が立ち上がる使い方を想定しているという。
接続が構成されるまでの時間は「ほぼ即時と考えていただいて構わない」(吉田氏)。現在のEquinix FabricでもL2接続はすぐに立ち上がるが、BGPによるピアリングなどレイヤー3(L3)の設定は利用企業側の作業が必要で、それを含めると1時間程度かかる場合があるという。Fabric Oneは上位レイヤーの設定や利用企業側の環境との連携まで自動化の範囲を広げ、即時に近い接続を目指す。
セキュリティ面では、ファイアウォールだけでなく、AIガードレールやAIゲートウェイのようにAIモデル自体の振る舞いを監視する仕組みもFabric Oneの中で提供するとした。料金はデータ転送量ではなく帯域に応じて課金する。「クラウドから出ていくデータのコストが高いと困っているお客様も多く、帯域ベースなので、コストを予測しやすく予算も取りやすい」(吉田氏)。
吉田氏が接続の自動化を急ぐ理由として挙げたのが、クラウドの種類そのものの広がりだ。同氏によると、現在のクラウドは開発者向け、PaaS、SaaS、SASEなどのセキュリティ、インフラなど20程度のクラウドが6つほどのカテゴリーに分かれるにとどまるが、2030年までに50以上のクラウド、15以上のカテゴリーに広がる見通しだという。増えるのはネオクラウド、モデルクラウド、GPU as a Service、ソブリンクラウドといった領域で、「そこへのオンデマンド接続の需要が飛躍的に高まっている」と吉田氏は説明する。
分散を後押しする要因として同氏は、データやインフラの主権(ソブリン)要件、電力の確保、そして遅延を挙げた。推論ではエンドユーザーやデバイスに対して10ミリ秒以下で応答することを求める声が、グローバルの顧客から出ているという。
GPUの調達難も背景にある。吉田氏は、NVIDIAの最新GPUを搭載したサーバーをオンプレミス向けに見積もると、有効期限が1週間しかない見積もりが出てくる状況を紹介し、「完全に売り手市場になっている」と話す。大手クラウド事業者と長期・大規模な契約を結んでいながらGPUが割り当てられない企業もあるといい、パブリッククラウド以外のネオクラウドやGPU as a Service、水冷に対応したコロケーションへと選択肢を広げる動きが進んでいるとした。国内では水冷を前提に設計した東京の「TY15」や大阪の「OS3」などで、最新GPUの設置に対応しているという。
こうした接続先の広がりを受け止めるのが、同社のデータセンター網だ。エクイニクスは世界77都市、36ヵ国で280を超えるデータセンターを運営し、国内では東京に14拠点、大阪に4拠点のリテール向け「IBX」とハイパースケーラー向け「xScale」を展開している。230を超えるクラウドやネオクラウド、AIサービスプロバイダーへのオンランプ(直接接続点)を提供しており、プレスリリースによれば、上位10社のAIモデルプロバイダーのうち8社、上位10社のネオクラウド事業者のうち9社が同社の接続基盤を利用している。
同社 エンジニアリング本部 シニア ソリューションズアーキテクトの矢萩陽一氏は「私たちの価値は、1つのクラウドやAIモデルを提供することではありません。企業が用途ごとに適したサービスを選び、安全かつ柔軟に組み合わせられる環境を提供することです。AIが分散すればするほど、中立的な接続基盤の重要性は高まる」と述べる。日本企業については投資対効果(ROI)が導入の壁になることを懸念しているといい、「クラウド、自社環境、複数のAIサービスを適材適所で組み合わせ、コストと性能、ガバナンスのバランスを取る分散AIが進んでいく」と見通した。
Fabric Oneの先に構想するのが、Equinix Inference Exchangeだ。クラウドエクスチェンジがクラウド事業者との接続をマーケットプレイス型で提供してきたように、推論モデルを選ぶと、オンプレミス、パブリッククラウド、ネオクラウドなど基盤を問わず、データやユーザーの近くに推論環境を展開する仕組みを目指す。複数の環境に散らばるAIモデルを抽象化して束ねるレイヤーとして、推論プラットフォーム「Together AI」と組み合わせ、NVIDIAなどのエコシステムとも連携する。吉田氏は「一歩二歩先の、コンセプチュアルな話になる」と前置きしたうえで、「データセンターレスと言われた時代から、もはやクラウドレス。下の基盤に関係なく推論モデルを展開できるようにする」と語った。
推論をユーザーの近くで処理する流れのなかで、東京と大阪に集中する国内拠点で地域分散に対応できるのか。吉田氏は「東京に置けば東北まで、大阪に置けば福岡まで、10ミリ秒の要件はある程度カバーできる」とする。さらに、北海道にも拠点を持つさくらインターネットなど、同社データセンター内でエコシステムを構成する国内プロバイダーとの連携を広げ、地方に近い場所でも推論基盤を展開しやすくしていく考えだ。同社はNTT東日本、さくらインターネットとの実証実験(PoC)も進めている。
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京部康男 (編集部)(キョウベヤスオ)
ライター兼エディター。翔泳社EnterpriseZine/AIdiverには業務委託として関わる。翔泳社在籍時には各種イベントの立ち上げやメディア、書籍、イベントに関わってきた。現在はフリーランスとして、エンタープライズIT、行政情報IT関連、企業のWeb記事作成、企業出版支援などを行う。Mail ...
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