IPAが公開情報を元に独自に集計した結果、国内で発生したシステム障害の件数は、2009年では月平均1.3件でだったが、2014年には月平均3.0件となっており、2009年の約2.3倍まで増加している(図参照)。
また、民間企業が発表した調査結果(「EMC Global Data Protection Index」)によれば、データ損失やシステムダウンなどのシステム障害により生じた過去1年間の損失額は、国内企業1社あたり約2億1,900万円、国内全体で約4兆9,600億円とされており、システム障害による経済損失やその影響は大きく、システム障害の未然防止は企業にとって喫緊の課題であるとしている。
IPAは、こうした背景を踏まえ2013年に、障害事例やその再発防止策などのノウハウを「教訓」として整理・体系化した「情報処理システム高信頼化教訓集(ITサービス編)」を公開している。
今回、IPAが新たに公開した2編のガイドブックは、自社内で発生したシステム障害事例や再発防止策などを自ら「教訓」として作成し、それらを企業間や業界内でも共有・活用可能とするためのガイドブックになる。このガイドブックを通じて、企業間・業界全体でシステム障害を未然に防止するための情報共有体制や枠組み構築を促進することを目的としているという。
「情報処理システム高信頼化教訓 作成ガイドブック(ITサービス編)」は、自社内で発生したシステム障害事例の原因分析や再発防止策などを「教訓」として作成するための手法を解説している。一方、「情報処理システム高信頼化教訓 活用ガイドブック(ITサービス編)」は、自社で作成した教訓やIPAや他社などの第三者が提供する教訓を自社内で活用するための手法を解説している。
このガイドブックの公開を通じて、IPAはこれまで各企業内で閉じられていたシステム障害の情報や再発防止策などのノウハウが「教訓」としてオープンにされ、企業間や業界内における情報共有活動が進むことで、従来よりも信頼性の高いITシステムの構築・実現につながるものと期待しており、ガイドブック活用セミナー等の実施により普及促進を図っていく予定だという。