8割以上がEITに取組んでいるものの全社横断的な取り組みに至っていない
1月に実施された今回の調査では、2014年4月に発行された「IDC MaturiyScape:Enterprise IT Transformation(EIT)」に基づいて、国内ユーザー企業のCIO 176人に対するWebアンケートを実施し、その調査結果をもとに国内EIT成熟度を分析した。
「IDC MaturiyScape」とは、IT環境の導入状況を客観的に評価するためにIDCが開発した手法。特定のIT環境について、まったく導入していない場合をレベル0(未導入)とし、導入後のユーザー企業の成熟度を、レベル1(個人依存:基本IT)、レベル2(限定的導入:第2のプラットフォーム基盤のIT)、レベル3(標準基盤化:第3のプラットフォーム基盤のIT)、レベル4(定量的管理:ビジネスのイノベーション)、レベル5(継続的革新:ビジネスの変革)の5段階のステージで評価するもの。
今回の調査レポートでは、ユーザー企業のEIT成熟度を、EIT推進の主要な能力である、「戦略とイノベー ション」「組織開発とタレントマネジメント」「ITサービスマネジメント」「エンタープライズアーキテクチャ」「ベンダーソーシングマネジメント」の5つの評価項目から総合的に分析している。
その結果、国内では、レベル1のEIT成熟度を持つユーザー企業が3.2%、レベル2が27.1%、レベル3が56.6%、レベル4が8.6%、レベル5が4.4%であることがわかった。限定的導入ステージ(レベル2)と標準基盤化ステージ(レベル3)に分布される企業の合計が全体の8割以上を占めた。
すなわち、企業が目指すべき定量的管理ステージ(レベル4)や継続的革新ステージ(レベル5)には至っておらず、第3のプラットフォームの潜在的効果を認知し、第3のプラットフォーム技術の導入を進めているものの、ビジネス戦略と一体となった全社横断的なEITの取り組みが実現できていない企業がほとんどであることがわかった。
「CIOは競合他社を凌ぐ勢いでEITを全社的に推進すべき」
財務的成果を出している企業(リーダー企業)と、そうでない企業(フォロワー企業)のEIT成熟度の比較も実施した。この2つのグループの差は、標準基盤化ステージ(レベル3)から、定量的管理ステージ(レベル4)にステップアップできている企業数の差に表れた。リーダー企業は、全体分布にみられた程の大きなギャップなく、より高いステージに向けて、なだらかな分布になっているのに対し、フォロワー企業にとってはレベル4が大きな壁になっていることがわかった。
なお、「戦略とイノベーション」の評価項目においては、リーダー企業にとっ ても、レベル3からレベル4へのステップアップは高い壁となっており、「第3のプラットフォーム活用に関する明確なビジョンを掲げ、IT部門がビジネス部門と一致団結して、EITを全社横断的に推進していく」ことの難しさが表れている。
IDC Japan エンタープライズインフラストラクチャ リサーチマネージャーの下河邊雅行氏は、「国内のユーザー企業のほとんどがEITに取り組んでおり、ビジネス変革への対応を進めようとしているが、横並び感が否めない。今、多くのCIOに求められるのは、競合相手を凌ぐ勢いでEITをけん引することであり、真のビジネス変革に向けて、横並び意識から一歩抜け出すことである」と述べている。
今回の発表は、IDCが発行したレポート「IDC MaturityScape Benchmark:国内エンタープライズ IT トランスフォーメーション市場」にその詳細が報告されている。IDC MaturityScapeは、企業のICT投資効果を最大限に高めるための、ICT利活用に関する意思決定を支援するツールとしてIDCが開発した「IDC DecisionScape」のひとつで、特定市場におけるICT成熟度を規定し、自社のICT環境の成熟度やあるべき目標とのギャップを把握するためのフレームワーク。