ガートナー ジャパンの発表によると、今回の調査の結果、回答者の69.7%が「デジタル・ビジネスへの取り組みを行っている」と回答した。また、部門としてではなく全社的に取り組んでいると答えた企業の割合は、1年間で20.1%から29.3%に増加。デジタル・ビジネスは本格的に取り組むべき経営テーマであるという理解はすでに広がりつつあり、企業内のデジタル・ビジネスへの取り組みは拡大傾向にあるという。
今回の調査において、成果が挙がっていると認識している企業は24.8%に上り、既に一定数の企業がデジタル・ビジネスで成果を挙げ始めていることが明らかになった。
デジタル・ビジネスに取り組んでいる企業が7割程度に達している一方、デジタル・ビジネス戦略を策定している企業は5割未満であることから、2割の企業は戦略がないまま、戦術的あるいは機会追求的にデジタル・ビジネスに取り組んでいることが判明したという。
さらに、デジタル・ビジネス戦略を策定している企業の中でも、IT戦略と連携させている企業は3割未満にとどまり、デジタル・ビジネス戦略がIT部門の方針や中期計画とは別枠で考えられている状況のようだ。
ガートナー リサーチ部門バイス プレジデントの鈴木雅喜氏は、今回の調査結果に関して、次のようにコメントを寄せている。
「デジタル・ビジネスの実現に向けた企業戦略の策定は重要です。その理由は、2つあります。1つは、デジタル・ビジネスに向けた取り組みが、『始めればすぐに大きな成果が出る』というものではなく、中期的な視点で進める必要がある点です。短期的な視野の中で進める活動のみでは、簡単に頓挫してしまいます。もう1つは、新たなビジネスが従来のビジネスを破壊するなど、大きな変化に対応するために、経営レベルの方向の提示や舵取りが必要になる点です。特定の部門で進める活動には限界があり、また従来の延長線上に限定して進めるだけでは、大きな機会を逸してしまいます」
また、デジタル・ビジネス戦略を検討/実行する際の促進要因について尋ねたところ (複数選択)、促進要因として最も多い回答は「経営層のリーダーシップ」(76.4%)となり、続いて「『攻め』の企業文化」(55.8%) という結果となった。
同様に、デジタル・ビジネス戦略を検討/実行する際の阻害要因について尋ねたところ (複数選択)、5割前後の企業が、「スキル/ノウハウの不足」(57.0%)、「危機意識の欠如」(55.8%)、「『守り』の企業文化」(53.3%)、「経営層の無理解」(49.1%) という結果となった。
この結果に関して、ガートナー リサーチ部門リサーチ ディレクターの本好宏次氏は、次のようにコメントしている。
「デジタル・ビジネスを既に実践している企業にとって、『スキル/ノウハウの不足』は今まさに直面している課題として、またこれから実践する企業にとっては二の足を踏む要因として懸念されている様子がうかがえます。ビジネスと直結した革新的な取り組みを行うというデジタル・ビジネスの性質上、公開される先行事例は乏しく、あったとしてもそのまま自社に適用できるものではないため、この問題は一朝一夕には解決しないでしょう。外部からの人材登用に加え、内部の人材育成を進め、場合によってはこれまでに付き合いがなかったような新興パートナー企業の力も借りる必要があります。さらに、異業種にまで視野を広げ、貪欲に先行事例から学ぶという姿勢が、一層重要になるでしょう」
今回の調査では、IT部門がデジタル・ビジネスを推進する際に特に重要視しているテクノロジー要素についても尋ねている。選択率のトップ5は上位から順に「クラウド」「セキュリティ」「モバイル」「アナリティクス/BI」「人工知能」となった。
本調査は、2016年8月にインターネットを通じてアンケート調査を実施。有効回答者数は165人。回答者の多くはIT系の業務に携わるマネージャー層、ユーザー企業の割合がベンダー企業より若干多い構成だった。