RPAに関しては、その実態や使われているテクノロジの先進性や成熟度、適用可能な用途、日本市場でビジネスを展開しているベンダーや製品、導入事例などについて、多くの企業から問い合わせが寄せられているという。
2017年5月に実施したWeb調査の結果、先行する国内企業の導入事例が増えているものの、RPAを「既に導入済み」と回答した企業の割合は全体の14.1%で、まだ普及はそれほど進んでいないことが明らかになった。一方で、「導入予定/検討なし」と「分からない」を合わせると、全体の60.4%となり、明確な導入の意思を持ち合わせていない企業が6割に達する結果となった。
ガートナーではRPAについて、「ユーザー・インタフェース(UI)上の操作を認識する技術とワークフロー実行を組み合わせることで、人間がPCなどのデスクトップ上で各種アプリケーションを操作する『手作業』を模倣し、各種アプリケーションを介してシステム間で構造化データを自動的に移動したり、入力したりできるよう設計された『ソフトウェア』の総称」と定義している。
RPAツールを構成する主要コンポーネントには、人間の作業を支援しプロセスを部分的に自動実行する「部分自動化ツール」、人手を介さない「完全自動化ツール」、ワークフローを設計・修正するための「デザイン・ツール」が含まれる。
現在市場で採用されているRPAの大半は、基本的に成熟したテクノロジの組み合わせで構成されていて、テクノロジとしての革新性や先進性がほぼないという。しかし、これまで企業において優先度やコストなどの問題からシステム化が見送られてきた手作業の業務プロセスを、比較的低コストでシンプルなソフトウェア構成によってシステム化できる点や、自動化によるメリットを短時間で得ることができ、そうした効果を可視化しやすい業務プロセスや用途に適用できるようにした発想こそが、革新的であるといえるとしている。
RPAは、導入によって一定以上の効果が期待できるが、現状では実態を上回る過度な期待と過剰なマーケティング・メッセージなどにより、テクノロジや導入効果、課題、現状と将来などのRPAにまつわるさまざまな事柄に関する理解が異なるため、市場では混乱が見られる。
ガートナー ジャパンのリサーチ&アドバイザリ部門リサーチ ディレクターである阿部恵史氏は、RPAの現状について次のように述べている。
「多くのRPA製品は成熟したテクノロジの組み合わせであり、人工知能(AI)や機械学習テクノロジを実装している製品は極めて少なく、本格的な実装と利用はこれからになります。企業のITリーダーは、現在利用可能な製品の機能や今後のロードマップ、実装目的、RPAに適した用途について、テクノロジの観点から定期的に情報収集と評価を行うべきです。そして、導入を検討する際は、適用可能な業務領域に最終的にはできる限り拡大することを自社のロードマップとして描きつつ、小さなプロジェクトから始めることを推奨します。これによって、RPAの適用効果を一層高めることができます。また、既にRPA製品を導入済みの企業においても、他ベンダーの製品の併用や、将来的な移行なども状況に応じて検討し、今後RPAを最大限活用するための知識や経験を積んで、実運用から見えてくる課題を整理することが望まれます。ITリーダーは、まずRPAで今できることと、本テクノロジに対する将来の期待を冷静に整理し、効果的な利用に向けて準備する必要があります」。
ガートナーでは、10月31日から11月2日にかけて東京(グランドプリンスホテル新高輪 国際館パミール)で「Gartner Symposium/ITxpo 2017」を開催する。このイベントにおいて、ガートナーの国内外のアナリストやコンサルタントが、デジタル・ビジネスとデジタル・テクノロジについて、さらにはIT全般に関する従来の観点についても、幅広い提言を行うという。