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PCまわりのバックアップ用メディアに潜む落とし穴―実際にあった怖い話 その2

 ヴィーム・ソフトウェア株式会社で技術を担当している西巻則保です。今月も前回に引き続きましてお話をさせて頂きます。前回は、企業のIT部門がバックアップを実行していたにもかかわらず、様々な理由で運用に失敗したりリストア不可だったりした悲しい事例をいくつかご紹介しましたが、今回は個人がPCのバックアップをするメディアとしても使われるSSDやUSBメモリに関する、皆さんの身のまわりにある落とし穴的な事例をご紹介したいと思います。こちらも私の実体験からのお話です。

 高速な記録媒体としてSSDは既に一般的になっており使っている方も多いと思います。500GB相当の製品でも15,000円前後で購入することができますので、まだレアもの扱いで非常に高価だった10年前を思うと、隔世の感があります。

 10年前、私が会社から貸与されていたノートPCは12インチ液晶モデルで、小型軽量とのトレードオフでHDDが1.8インチドライブの40GBかつ4200rpmという激遅のスペックで閉口してました。ちょうどその頃にSSDが出始めて、非常に高速という情報でしたので、1.8インチ32GBのSSDを自腹で購入し会社のノートPCに組み込んで使ってみました。これがとても速くて、電源ONで3-4分かかっていたBootプロセスが1分以内で起動するようになり、まさに目から鱗の衝撃でした。この32GB のSSDの価格は当時3万円程度しましたが、費用をかけただけの効果はあるなと感心した次第です。

 しかし当時のSSDは、プチフリと言ってまれにPCの動作が止まる持病や、いきなりブルースクリーンになるきまぐれがあり、資料作成やプレゼン時に悩まされました。原因としてはいくつか考えられました。たとえばPC側の省電力機能との相性だったり(当時はHDD専用の仕組みでSSDを想定していない)、SSD側にキャッシュがなかったり、書き込み時のガベージコレクションがWrite処理に追い付かないなど、SSDの特性自体に起因する症状だったようです。

 ガベージコレクションは厄介で、簡単に説明しますと、SSDは特性上、読み込みは各ブロックのページ単位で実行可能ですが、書き込みにはページがまったく使用されていない空白のブロックが必要です。空白ブロックがない場合は、書き込もうとするブロック内で既に使用されているページを他のブロックに移動させてわざわざ空白ブロックを作るという、かなり面倒な処理をします(イメージ的には大きなビルを建てるために、既に住んでいる多数の住民を追い出して大きな空き地を作ると言った感じです)。

 HDDでも同様の処理を行なってますが(HDDのイメージは下図参照)、SSDの方が手順的にはるかに煩雑で、書き込みが遅くなったり、コントローラに負荷をかけて全体的な性能が劣化するなど大きな問題につながったりします。またガベージコレクションを実行する事で各セルに対するRead/Writeの回数が相対的に増えます。特に、SSDの空き領域が少なくなるとガベージコレクションが頻繁に実行されますので、結果、セルへの書き込み回数制限のあるSSDの寿命が短くなるという悪循環が発生します。SSDを使っていくうちに性能が落ちた、書き込みができなくなってエラーになったといった経験をお持ちの方は、こうした原因があるかと思います。

空き領域を作るハードディスクのガベージコレクション例
空き領域を作るハードディスクのガベージコレクション例

 最近ではウェアレベリングという、特定のブロックにI/Oが集中しないようにする技術や、キャッシュメモリの搭載、あるいはチップ自体の書き込み回数制限も増えていますので、比較的寿命が長くなったようです。なおガベージコレクションをSSD側で行なう製品もありますが、コントローラとの兼ね合いで機能オフになっている場合が多いようです。

 余談ですが個人でVMware検証環境の自作サーバーを4台ほど構築・所有しているのですが、数千円ケチって三流メーカーのSSDをVMwareのキャッシュで使用したら半年も経たないうちに数台が書き込みエラーで使えなくなったことがあります。一流メーカーの売れ筋品に交換したのちは2年以上経っても問題なく使えています。このキャッシュのようにRead/Writeを頻繁に行うようなワークロードの場合は高品質な製品がお薦めです。

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この記事の著者

西巻則保(ニシマキ ノリヤス)

ヴィーム・ソフトウェア株式会社 シニア・システムズ・エンジニア 大手ゼネコンの技術研究所・情シス、大手国産メーカーの情シス・技術部を経て、2000年にIT業界に飛び込み、主に外資ハードウェアメーカーにてパートナー及びハイタッチプリセールスの経験を持つ。会社間の合併を入れると計6社の製品に携わ...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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