2017年は前年比33.3%増の2,400億円と大きく拡大、2021年には6,500億円と予測
2017年の国内クラウド基盤サービス市場は、前年比33.3%増の2,400億円(事業者売上高ベース)と引き続き大きく成長した。既存システムのクラウドへの「リフト&シフト」が市場を牽引し、クラウド基盤サービス市場は順調に伸長を続けている。さらに、近年は業務特性に合わせた利用方法として、ハイブリッドクラウドやマルチクラウドの活用が増加している。
その背景には、ユーザー企業が複数のクラウドサービスを使い分けてベンダーロックインを回避することや、クラウドベンダー各社によるPaaSの機能差異化に伴ってシステムの価値が向上したこと、情報システム部門に依頼せずに各事業部門がクラウドを活用するシャドーITが増加していること等があると考える。
クラウド基盤サービス市場の拡大を後押しする動きの1つとして、2017年1月に大手金融グループがAmazon Web Services(AWS)の採用を発表したことが挙げられる。この発表の影響もあり、これまでパブリッククラウドの採用に消極的であった金融業が積極的な活用を始めており、さらに、この動きが他の業種にも波及している。そのため、2018年の同市場(同ベース)は、前年比29.2%増の3,100 億円に達する見通しである。
今後は、「デジタルトランスフォーメーション」の進展に伴い、AIやIoTを活用したビジネスやそのトライアルの増加を理由として、既存ユーザー企業によるサービスの従量(使用量)が増加すると考える。また、エンタープライズ分野のシステム案件の増加に伴って、案件自体が大規模化することや、クラウドベンダーとユーザー企業が長期的な関係を構築できるようになる。こうした状況を背景として、クラウド基盤サービス市場は2018年以降も高成長を維持していき、2021年の同市場規模(同ベース)は、6,500億円に達すると予測する。
導入検討中のパブリッククラウド上位3サービスはAzure、AWS、K5
調査において、2017年7~8月に国内民間企業および公的団体・機関517社に対し、郵送によるアンケート調査を実施した。そのうち、パブリッククラウドを「導入検討中」と回答した34社に検討中のサービス名称を尋ねたところ、「Microsoft Azure」との回答が35.3%(12社)で1位となった。2位に「Amazon EC2」(AWS)が23.5%(8社)、3位に「K5」(富士通)が11.8%(4社)で続いている。
Azureは2014年に国内データセンターを開設して以降、衰えることなく高成長を続けており、その一因は、エンタープライズ用途における高い信頼にあると考える。一方、パブリッククラウドでは既にAWSを利用しているユーザー企業が多く、また同サービスも新規導入の際、必ず候補として名前が挙がるなどの認知度の高さを強みにユーザーを増やしていく。
しかし、今後基幹系システムをパブリッククラウドに「リフト&シフト」するケースも増えていく中で、エンタープライズ用途に強みを持つAzureがアンケート結果同様にユーザーを増やし続ければ、AWSとAzureの売上高シェアが逆転する可能性もあると考える。
なお、この発表について詳細は、矢野経済研究所が刊行した「2018 クラウドコンピューティング(IaaS/PaaS)市場の実態と展望」に掲載されている。