
アドビのデジタルマーケティングのソリューションは、昨年、マーケティング・オートメーションからエクスペリエンスへと拡大した。そのアドビのエクスペリエンスのソリューションの最新動向を紹介する「Adobe Summit 2018」が、米国ラスベガスで開幕した。今回からアドビでは、より良い顧客体験を提供するために活動する企業や個人を「エクスペリエンス・メーカー」と呼び、彼らが今どのような顧客体験を提供しているかの事例も数多く紹介されていた。
エクスペリエンスを提供するためのプラットフォームに大きな投資をする

シャンタヌ・ナラヤン氏
「人々はエクスペリエンスを買うのであり、もはや製品を買うのではありません」―こう語るのは、オープニングの基調講演に登場したアドビシステムズ CEO シャンタヌ・ナラヤン氏だ。今日、エクスペリエンスのための製品やサービスという視点で選択している。
サブスクリプション型のビジネスが伸びているのも、製品ではなく体験がビジネスになっていることの証しでもある。また、さまざまなデバイスにまたがって、より良い体験を提供することが重要だという。そしてこれはコンシューマ向けのビジネスだけの話ではい。すでにBtoBの領域でもエクスペリエンスが重要となっている。
そしてアドビらしい指摘となったのが、素晴らしいエクスペリエンスを提供するには素晴らしいデザインが必要だということ。これはアドビのビジネスの中核でもある。現状、AIなど技術的進歩があり、顧客体験を提供する可能性は大きく広がっている。その中では、コンテンツなどがしっかりとデザインされてないと、最良な顧客体験は提供できない。それができることが、企業のビジネスにおける競合力となる。
ナラヤン氏によれば、最良のエクスペリエンスを提供するにはインテリジェンスが必要だ。そのためにはデータが必要であり、それに対しミリ秒単位でアクセスできなければならない。たとえばインテリジェンスを使いデータを学習し異常を検知してすぐに解決する。あるいは顧客の体験をもとに、タイムリーリーに最良なコンテンツを提供し購買を促す。データやコンテンツは大量に存在しており、それらを深く理解して適切に判断しなければならない。「このコンテンツを理解して判断するところは、その世界をアドビが最も良く理解しています」と自信を見せる。
素晴らしい顧客体験をエンタープライズレベルで実現するには、新しいアーキテクチャが必要だ。これは単に仕組みをクラウドに移行すれば実現できるものではない。それぞれの組織の中にある顧客情報を管理するシステムの、サイロ化を解消する必要がある。サイロ化を解消するには、「プラットフォーム」という考え方をしなければならない。「アドビはこのプラットフォーム化のところに大きな投資をしています」とナラヤン氏。
アドビではAdobe Creative Cloudで、個々のソフトウェアを提供する形からクラウド上のプラットフォーム化へと刷新した。これは世界規模で成功を収め、プラットフォームの上で各製品をシームレスに連携させ、コラボレーション機能で新たなクリエイティブな業務のやり方も示した。Adobe Document CloudとPDFでも、人々の情報との関わりを変え、紙からデジタル化を推進し新たなイノベーションを起こしている。
同様にAdobe Experience Cloudにおいても、プラットフォーム化に積極的に取り組んでいる。それにより、パーソナル化した経験を全てのタッチポイントで提供できる。「スクリーンがあるところでは、その全てで一元化した顧客体験を提供できます。アドビではカスタマージャーニーに焦点を当てており、それを顧客と一緒に実現しています」とナラヤン氏は言う。
「デジタル・トランスフォーメーションが、今まさに進んでいます。アドビは多くの顧客、パートナーとともにエクスペリエンス・ビジネスを展開したいと考えています」(ナラヤン氏)
会場の参加者がエクスペリエンス・メーカーであり、エクスペリエンス・メーカーがデジタル・エクスペリエンスで世界を変えるとナラヤン氏は語った。
この記事は参考になりましたか?
- この記事の著者
-
谷川 耕一(タニカワ コウイチ)
EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーターかつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリスト...
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
この記事は参考になりましたか?
この記事をシェア