目の前のお客様にお薦め映画をAIが提案「シャンテ シネマヴィジョン」
映画を見に行くきっかけとして大きいのが「映画予告編を見て」だ。映画館で本編を見る前に流れた予告編を見て「これ面白そうだ。次はこれを見に来よう」と思うことが多いという。ただし、じっくり時間をかけた30秒の予告編を映画館以外で見ることは少ない。映画館から離れると、どんどん映画から離れてしまう。
日比谷シャンテでは地下2階の広場に「その人に合った」映画の予告編を表示する「シャンテ シネマヴィジョン」を設置した。
「シャンテ シネマヴィジョン」のモニターには近くの映画館(TOHOシネマズ日比谷やTOHOシネマズシャンテなど)で上映予定の一部の作品の映画予告編がランダムで連続再生されている。モニター上には小型カメラが設置されており、お客様がモニターの前に立つとカメラに写った画像から年齢や性別を判定する。判定にはMicrosoft Azureの顔認識のAI(Cognitive Services)を活用した株式会社アロバの「アロバビューコーロ」というサービスが使用されている。
モニターの前に誰かが立つと、その人に合った映画予告編が流れる。ただしすぐではない。そのとき再生していた映画予告編が再生し終えてから、「あなたに合った予告編を再生します」という画面が入り、性別や年齢層に応じて幾つかのお薦め作品の予告編を流している。様々な作品が用意されているため、同じ年齢や性別でも同じ作品の予告編が流れるとは限らない。異なる予告編が流れることもある。また作品によっては、女性の顔を優先的に認識するような設定がなされているという。
ここで得られたデータは日比谷シャンテや、映画宣伝担当者のマーケティング分析に用いられている。5月に設置して以来、いくつか興味深いデータが得られているようだ。なおデータはお客様がカメラをのぞき込んだ時間、判定された年齢と性別というテキストの情報のみ蓄積されている。カメラ画像そのものは分析対象として蓄積されていない。
モニターの前に立った人数は平日で1日30人程度、休日だとその倍になる。また日比谷シャンテでは「40~50代女性のお客様が多い」が、実際にデータを見ると、より若い層も多く、男性の割合も思った以上に高いことが分かった。このデータは日比谷シャンテに意外な気づきをもたらしているという。
飲食店の空き状況をリアルタイムでデジタルサイネージに表示
先述したように、日比谷シャンテ周辺には劇場や映画館があるため、飲食店には観劇前の腹ごしらえに立ち寄るお客様が一定数いる。時間に制限があるため、混雑状況は事前には把握しておきたい。外食に関する統計でも、飲食店を選ぶ時に重視されるのが「入店時に待たないこと」が筆頭に挙げられる。
日比谷シャンテでは館内5ヶ所にあるデジタルサイネージに、地下2階レストラン&カフェの混雑状況を表示するようにしている。お客様は館内にどのようなお店があるかだけではなく、空席情報も同時に確認できる。
デジタルサイネージは地上入口や地下通路からの入口すぐにもあるため、実際にお店がある場所まで移動しなくても混雑状況が一覧で分かる。デジタルサイネージにあるQRコードを読み取ると、この空席情報が表示されるWebページを開くことができるため、後からスマートフォンで確認することもできる。なお表記の言語は日本語と英語が交互に表示される。
空席かどうかは、入店を待つお客様がいるかどうかで調べる。入店を待機する椅子に誰かが座っていれば「待ちあり」、そうでなければ「空席(空きあり)」とする。椅子に誰かが座っているかどうかは、椅子に取り付けた複数のセンサーから判定している。椅子にあるセンサーから得た情報は定期的にAzureに集約し、デジタルサイネージに表示している。
この空席情報サービスは株式会社バカンのリアルタイム空席管理プラットフォームをベースにしている。株式会社バカンでは、対象店舗の待機椅子にセンサーを取り付けることにした。
椅子につけるセンサーなので特注の椅子ではなく、既存の椅子に取り付ければいいだけで導入は手軽にできる。もちろん、他の飲食店でも導入できる。