打ち合わせと共有の徹底がIT企画成功の勘所
「企画フェーズ」は、第3回で解説した要件定義の前にある工程です。具体的には、情報システム部門が経営戦略に沿ったプロジェクトゴールを設定、システム要件を明確化し、社内承認を得ることを指します。また、情報システム全体の開発や一部機能のみを外部に委託する場合、この企画フェーズでRFPを外部に提示し、外部からの提案書をもとに受注者(ITベンダー)を選定、契約を締結しておく必要があります。
では、どの様な契機で情報システムの企画を考えるのでしょうか。例えば、会社の事業計画で決まったものを企画する「経営層起因」の場合もあれば、情報システム部門や利用部門から新規サービスの創出や課題解決のために企画する「現場起因」の場合もあります。前者では、会社の方針で既にプロジェクトゴールが決まっており、具体的な実現方法や見積もりなどシステム要件を明確化して進めます。一方、後者は、プロジェクトゴールの設定から行う必要があり、経営層向けの資料作成や説明時間の調整など、前者よりも社内承認を得るまでの時間が長期化する傾向にあります。
企画フェーズでは発注者(情報システム部門)と受注者(ITベンダー)の見解の相違に注意
昨今、情報システムの導入を外部委託している会社が多く、発注者と受注者が協力して進めるケースが非常に多く見られます。この様な体制でシステム構築を成功させるためには、発注者と受注者の間で、両者がWIN-WINになる関係を築くことが不可欠です。しかし実際は、しばしば見解の相違が起こり、以下のように両者がWIN-WINの関係とはならないケースが発生してしまいます。
この両者のWIN-WINの関係を阻害している原因は、あいまいな要件や役割分担を抱えた情報システムの企画フェーズに多く存在しています。こういった対立要因が内在したまま契約を締結し、プロジェクトを進めた場合、後から問題が顕在化する可能性が高く、プロジェクトの成功確率は低くなってしまいます。プロジェクトを円滑に進め、成功の確率を上げるためには、情報システムの企画フェーズにおいて綿密な打ち合わせや資料の共有等を徹底し、いかにプロジェクトの目標やリスクの共有と合意をしておくかということが重要になります。