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情シス部門の悩みどころ、外部委託先選定とベンダーマネジメントの要点解説≪情報システムの基礎知識≫

 情報システム部門は、外部委託先であるITベンダーと協力し、ITプロジェクトを推進する重要な役割を担っています。しかし、「ITベンダーの知識が不足している、協力的ではない」と言った悩みを抱える現場も多いのが現状です。そこで、今回は情報システム部門とITベンダーを経験してきた講師の観点で、外部委託先の選定とベンダーマネジメントのポイントを、外部委託先を選定するまでのステップ、最適な外部委託先を選定するポイント、情報システム部門が目指すべきベンダーマネジメントの三段階別に解説します。

情報システム部門が外部に業務委託するまでのステップとは

 情報システム部門がプロジェクトを成功に導くために、自分たちの力だけでなく、不足部分には外部リソースを活用することが多くあります。その際、プロジェクトの規模や特性に合った最適な外部委託先を選定する必要があります。

 特に、影響範囲や開発規模が大きなプロジェクトほど、慎重に外部委託先を選定しなくてはいけません。例えば、過去の取引実績だけで安易に外部委託先を決めてしまうと、外部委託先の「作業内容の理解不足」や「業務知識不足」による作業遅延やトラブル発生など、プロジェクトの成功を阻害する要因になりかねません。したがって、影響範囲や開発規模が大きなプロジェクトほど、きちんと外部委託先の選定プロセスを立案することが重要になります。外部委託先の選定プロセスとそれぞれの作業内容は、以下のとおりです。

出典:富士通ラーニングメディア作成

調達計画の準備

 まず、外部委託先を選定する前に、情報システム部門内で調達計画に関わる準備をします。あいまいな調達範囲のまま作業を発注すると、契約後の開発現場での混乱や納期の遅延といったトラブルにつながります。これらの問題を防止するため、外部調達においてはその必要性や目標、および調達範囲を明確にする調達計画の準備が重要になります。具体的には、「外部調達の必要性分析」「外部調達の作業範囲の定義」「RFPの作成」「外部調達先選定基準書の作成」といった準備が必要になります。その中でも、重要なものが「RFPの作成」です。RFPとは、提案要請書(Request For Proposal)のことで、外部委託先候補に提案書で提案してほしい事項や契約事項などをまとめたものです。

出典:富士通ラーニングメディア作成[画像クリックで拡大表示]

 また、今回はRFPの作成で特に重要なポイントを2点ご紹介いたします。 まず1つ目は、作業範囲を明確に記載することです。作業範囲が不明確なまま作業を依頼してしまうと、外部委託先から受け取るアウトプットが不足している、必要な作業がお互いに抜けるなどの問題が起こります。この対応により、開発コストの増加や作業遅延という結果につながってしまいます。

 2つ目は、契約事項を明確に記載することです。契約に関わる部分は、自社の法務部門に任せてしまいがちですが、情報システム部門も確認する必要があり、特に以下の事項は、事前に明確にしておきましょう。

 発注形態 外部委託先への発注形態を記載します。要求した成果物の完成責任がある「請負契約」か、要求した成果物の完成責任がない「委任契約」かによって、外部委託先への報酬の支払い義務が異なります。例えば、事前に成果物が明確な場合は「請負契約」が適切ですが、成果物や作業が明確に定まっていない場合は「委任契約」が適切と言えます。
 検収条件 どのような条件で検収するかを記載します。例えば、事前に成果物が明確な場合は、成果物の完成が適切な条件ですが、成果物や作業が明確に定まっていない場合は、作業期間等を条件にすることが適切と言えます。
 著作権 外部委託先が作成した成果物の著作権の扱いを記載します。何も記載しない場合、作成したプログラムの著作権は外部委託先のものとなります。例えば、外販して欲しくない場合や今後自社でメンテナンスしたい場合は、「譲渡」や「利用許諾」とすることが適切と言えます。

外部委託先候補の選定

 作業を委託する外部委託先の候補を選択します。情報システム部門は、選択した外部委託先の候補に対して、提案書の提出期限、提出場所、提出方法などを伝えます。ここで重要になるのが、「複数の外部委託先の候補を挙げておくこと」です。複数の外部委託先の候補を挙げることで、「作業内容の理解度」「作業内容と費用の妥当性」等を複数の提案の中から比較して判断することが出来ます。具体的な外部委託先候補の選定に当たっては、以下の様な観点があります。

  • 過去からの知り合い(経営者、プロジェクトメンバーなどの知り合い)
  • 紹介(同業者、知人、関連会社などからの紹介)
  • 過去の取引実績(過去に自社と取引実績があり、業務も理解しているため信頼できる)
  • 公告(新聞、業界紙、自社HPなどでの公募)
  • その他(特殊な業務知識が必要な場合、発注者側で調査し選定。外部委託先候補からの売込みなど)

出典:富士通ラーニングメディア作成

 また、情報システム部門は必要に応じて複数の外部委託先候補に対して、入札説明会を実施する場合もあります。このような場を設けることで、外部委託先候補に対して、RFPの内容を明確かつ確実に伝えることが出来るため、不明点や確認事項を解消する手助けになります。情報システム部門は良い提案をもらうためにも、質疑に対しては可能な範囲で、全ての外部委託先候補に対し、平等に情報を公開することが求められます。

出典:富士通ラーニングメディア作成

提案書の受領、外部委託先の選定

 複数の外部委託先候補からの提案書を期日までに受領し、内容の不備の有無を確認。その後、外部委託先の選定を行います。外部委託先の選定に当たっては、調達計画の準備段階で用意した外部調達先選定基準書に基づいて評価します。

外部調達先選定基準の参考例
  • プロジェクトマネージャ/リーダの経験・スキル
  • 要求事項の正確な理解力
  • 技術的能力
  • 過去の実績
  • コスト
  • 組織的な動員力
  • 財務基盤

出典:富士通ラーニングメディア作成

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外部委託先の選定ポイントとベンダーマネジメントについて

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この記事の著者

柏木 雄也(カシワギ ユウヤ)

株式会社富士通ラーニングメディア ナレッジサービス事業本部 第二ラーニングサービス部 現在は、仮想化やクラウドなど最新技術系のインストラクターとして、講習会での教育を担当。主な所有資格はITIL、VCP6.5DCV、ニフクラ認定など。以前は、大規模システムを扱う現場でインフラエンジニア、また社内SE...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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