
企業向けクラウドサービスを提供するServiceNow。2004年に設立された同社は、現在世界で最も急成長を遂げている企業で、サービスマネージメントのSaaSベンダーとして知られ、エンタープライズ向けのSaaSで高い市場評価を得ている。実は設立当初からPaaSを提供しており、それこそが同社の最も大きな価値となっている。企業における社内外の活動を「サービス」として捉え、情報管理の一元化を実現、さらにその上で業務プロセスを標準化、自動化する。デジタル変革時代において、プラットフォームはどのような価値をもたらすのか。同社日本法人の村瀬将思社長に訊いた。
ServiceNowは「世界で最も革新的な企業」

ServiceNow Japan社長の村瀬将思氏は、「設立時からServiceNowのビジョンは、“普通の人々の生産性を高めるためのクラウドベースのプラットフォームを提供すること”です。個別技術に精通していない普通の社員でも使えることが、重要なポイントです」と話す。2004年、プラットフォームの提供から始まったServiceNow。しかし当時はまだ米国でもPaaSという言葉も定着しておらず、市場ではなかなか受け入れられなかった。そこでクラウドプラットフォームの良さを示すため、ITサービスマネージメントの仕組みをプラットフォーム上に構築し、SaaSでの提供を開始した。
ITサービスマネージメントのSaaSは、市場で大いに受け入れられ多くの企業が利用するようになった。そして本SaaSを活用している顧客がさらに用途を広げたいと考え、本来のプラットフォームとしての利用を開始。ITサービスマネージメント以外の領域に活用範囲を広げ、以降、ServiceNowのビジネスは順調に拡大している。
そして2018年5月、世界的な経済誌『Forbes』が発表している「世界で最も革新的な企業100社」において、ServiceNowは初登場で1位に選ばれた。「これは2004年の創業当初から掲げてきた、普通の人たちの生産性をあげるためのプラットフォームを提供するというミッションが、世界で認められたということでもあります」と村瀬氏。
新しいデジタルテクノロジーを提供するServiceNowだが、同社が最もフォーカスしているのは「人」だ。そのため、ロゴの「o」の文字のデザインも、人をモチーフとしたものへとリニューアルした。「ServiceNowは、人を中心にしてデジタル変革を進めます。そのためのクラウドプラットフォームを提供しているのです。このプラットフォームの活用は、あらゆる側面から従業員のユーザー体験を向上させ、今後の働き方改革にも大きく貢献します」(村瀬氏)

出典:ServiceNow Japan作成[画像クリックで拡大表示]
ServiceNowは現在、グローバルで7,000名を超える従業員を要し、毎年売上は40%増で成長。サービスのリニューアル率は97-98%と高く、これは一度ServiceNowを使った顧客がサービスの利用を継続しているということを意味している。
ServiceNowは企業のデジタル変革を支援するプラットフォーム
かつての産業革命では、変革を生んだ新たな技術を専門的に使いこなせる人たちに大きな恩恵があった。対して、現在起こっているデジタルによる第四次産業革命は、誰もがその恩恵を受けられるという特長がある。たとえばコンシューマの世界を変革したスマートフォンやタブレットなどは、使用することで誰もがメリットを得られる。誰でもシンプルに利用できるモバイル端末を起点とした、デジタルサービスの利用は急激に拡大した。
このようなコンシューマのデジタル変革には、シンプルさとスピード感があり、完結性と透明性がある。これら4つの恩恵は、当然BtoBの世界でも要求されるはずだ。しかしながら、会社に来ると家ではスマートフォンで便利に行えていたようなことができない。昔ながらの手間のかかる作業が当たり前となっている。この業務の中での不便さをServiceNowのNow Platformの活用によって解決していくことを、ServiceNowは目指していると村瀬氏は言う。
業務の現場でデジタル変革をするためには、IT部門が社内システムをシンプルかつスピード感のあるものに変え、そこに業務の完結性と透明性を入れていく必要がある。しかしながら現状の社内システムは使い勝手が悪いことに加え、業務領域ごとにばらばらに構築されサイロ化されており連携もままならないことが多い。
村瀬氏によると、この状況は2010年頃から少し変わってきたという。ERPのアプリケーションなど、堅牢性と正確性に重点を置いているSoR(Systems of Record)と、アプリケーションを利用するユーザー体験を向上させるSoE(Systems of Engagement)を分け、それぞれを連携させる考え方が出てきたのだ。この考え方は当初コンシューマを主に対象とし、検索・注文・決済・配送までを一度に簡単な操作で完結できるオンライン・ショッピング等を中心に浸透したが、こうしたデジタル技術を活用したユーザー体験の変革を、社内システムでも起こそうという機運が出てきた。
しかしSoEの発想が入ったとは言え、社内システムのサイロ化が解消されるわけではない。この課題の解決には、組織を横串のように連携し一元化できるプラットフォームが必要となる。「基幹系業務は、既存のSAPのERPなどをこれまで通り活かします。その上のSoE部分をばらばらに作るのではなく、ServiceNow Now Platformで一元化して実現するのです」と村瀬氏。こうすることでたとえば、ユーザーがSAPの中から今の売上情報を見つけ出す方法を知らなくても、ServiceNowのNow Platform上のポータルでクリックするだけで売上情報をグラフで描画する、といったことが簡単に実現できるようになる。
出典:ServiceNow Japan作成[画像クリックで拡大表示]
このServiceNow Now Platformをさらに進化させるため、ServiceNowでは買収も積極的に行う。多くのベンダーが買収した技術を既存製品と連携させ新たなサービスとして提供しているが、ServiceNowの場合は買収した企業の技術をServiceNow のNow Platformの一部として再構築するアプローチをとっている。「買収した企業のテクノロジーは、ServiceNowのアーキテクチャに合うよう作り替えます」と村瀬氏。これには時間はかかるが、必ず取り組んでいる。もう1つServiceNowが力を入れているのがデザインだ。「ユーザーインターフェイスが優れていて使い易いものは、結果的にユーザーがどんどん使います」と続ける。
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谷川 耕一(タニカワ コウイチ)
EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーターかつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリスト...
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