
Dreamforce 2018では、新たなパートナーとの協業発表も行われた。その1つがAppleとの新たな提携だ。Salesforceからはここ最近、「Salesforceエコノミー」という言葉が良く聞かれる。昨年行われたIDCによる「Salesforceエコノミーが創出する経済効果に関する最新調査レポート」では、Salesforce.comとその顧客やパートナーで形成されるSalesforceエコノミーが、2022年までに世界で330万、日本で15万の新規雇用を生み、世界で8,590億ドル、日本では1,060億ドルの売上を新規ビジネスで創出するとしている。また2022年までに、Salesforceの売上が1ドル計上されるごとに、Salesforceパートナーエコシステムは世界で5.18ドル、日本では6ドルの売上を計上する見込みとのことだ。
iOSでネイティブにSalesforceアプリケーション開発を行うためのSDKを提供
Appleと戦略的なパートナーシップを明らかにした共同CEOのマーク・ベニオフ氏は、「こういったことの全てが、素晴らしいSalesforceエコノミーを作っているのです」と語る。プレスブリーフィングで「今はテクノロジーのイノベーションが起きています。SalesforceはAppleと一緒になり、開発者にパワーを与えます。それにより、素晴らしい顧客体験を提供できるようになります」と語るのは、Salesforce CMOのステファニー・ブシェミ氏だ。
今回の提携は、Salesforceのモバイルアプリケーションを強化するものだ。Appleとの協業により、iOSで動くモバイル端末でのみで動作するような機能を備えた、ネイティブ・モバイルプラットフォームに対応するアプリケーションを容易に構築できるようになる。
そのために両社では、開発者が自身のネイティブアプリケーションを構築するための「Salesforce Mobile SDK for iOS」を提供する。さらにSalesforceの無料オンライントレーニングサービス「Trailhead」にも、新たにiOSアプリケーションの開発コースを無償で提供。これにより、モバイルアプリケーションの開発者が、Salesforce用のiOSアプリケーションを構築する方法をオンラインで学ぶことができる。

またこのSDKを利用して再設計される「Salesforce Mobile App」が、Salesforceから2019年には提供される予定だ。他には、これを使いiOSの上で動作する最初のアプリケーションとして「Trailhead Mobile App」も提供する。さらにSalesforceのパートナーも、それぞれの業種や中小企業に特化した顧客ニーズに対応したiOSアプリケーションの提供が可能となる。「Salesforceのコミュニティには500万人の開発者がいます。一方、iOSの開発者は世界中に2,000万人もいるのです」とブシェミ氏。2,000万の開発者がSalesforceのモバイルアプリケーションを作れるようになるわけであり、これはSalesforceエコノミー拡大の大きな可能性があると言える。
今回はAppleとの提携を発表したが、もちろんAndroidの対応を辞めるわけではない。iOSの便利なショートカット機能などを使えるようにすることで、iOSアプリケーションとSalesforceの連携がさらに強化される。それにより、顧客のエクスペリエンスが向上することを目指すための提携だ。そしてAppleとしてはよりエンタープライズ領域での存在感を強める効果につながるだろう。
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谷川 耕一(タニカワ コウイチ)
EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーターかつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリスト...
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