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人工知能は「過度な期待」のピーク期から幻滅期の直前へ――ガートナーが人工知能の推進に関する提言を発表

AIは「過度な期待」のピーク期から幻滅期へ(出典:ガートナー、2018年10月)

 ここ数年で、多くの企業がAIを試行したが、2018年後半から、一連のブームは去りつつあり、市場ではAIの捉え方が冷静になってきている側面が見られる。

 AIは、2019年以降幻滅期に入ると予想されるが、今後も重要なテクノロジであり続けることに変わりない。幻滅期とは、「これからが本番」という時期であり、このようにステージが変わるということは、企業がAIをより冷静に捉え、これまで以上に戦略的に推進する必要が出てきていることを意味している。

 ユーザー企業は、AIのリアリティを適切に捉え、短期的な改善を目指す活用から中長期的で革新的なインパクトの創出までを視野に入れて、その可能性を継続的に探索し、追求することが重要だ。

AI推進を戦略レベルへと引き上げる必要がある

 ガートナーでは、ユーザー企業がAIを推進する際には、「改善レベル」と「戦略レベル」の2つのステージがあると考えている。一般企業において、AIの推進の多くは、現場による改善レ ベルにとどまっているが、今後、AIがさらに重要なものとなることに鑑み、一般企業であっても、このステージを戦略レベルへと引き上げる必要がある。

 ここで言う改善レベルとは、現場の改善を中心としたAIの推進を意味する。例えば、営業や生産の現場における課題を解決することを狙うものであり、こうしたアプローチを採っている企業は多く見られる。ここ数年ブームとなったチャットボットなどはその一例であると言える。改善レベルでは、POCを行って終わり、それほどのインパクトが出せなかった、といったケースが散見される。

 一方、戦略レベルとは、企業が中長期の戦略イニシアティブとしてAIを推進することを意味する。戦略であるため、そのリーダーは経営者(CEO、CIO、CDO、CFOなど)となる。この場合は、AIだけでなく、クラウド、モノのインターネット(IoT)、ブロックチェーン、デジタル・ツインといった、さまざまなテクノロジや考え方を総合的に駆使することで、より大きなビジネス・インパクトを狙うことになる。よって、AIはそのイニシアティブの中に吸収される可能性があるが、それでもAIは1つの大きな柱となる。

 昨今、経営者が単に、担当者に「AIの導入を検討せよ」という指示だけを出し、また現場もAIの提案依頼をベンダーやシステム・インテグレーターに丸投げするといったことが散見されるが、ここで言う戦略レベルとはこのようなものではない。それは、企業が自らの戦略的意思を持って、顧客満足度の向上や、競争優位の確立、企業価値の向上などを狙って実行されるものだ。

 また、AIの本質とリアリティを理解していることを前提に、中長期の観点で自らリスクテイクすることも覚悟の上で、推進されるものを指している。

継続的な改善のアプローチを採用すべき

 こうしたことを踏まえ、企業は、AIに関する取り組みを再考する必要がある。

 まず、企業はスポット的な改善やアピールを目的としたAIの事例だけではなく、継続的な改善のアプローチを採用すべきだ。ここでは、現場だけの短期的な改善ではなく、中長期の継続的改良を前提とした戦略的なアプローチが求められる。

 また、スポット的な改善のために高価なAIの導入はできないというケースも多いが、そもそもAIは継続的に学習させることが必須であるため、「1回導入して終わりのプロジェクト」という発想自体が成り立たない。こうしたことを解消するためにも、ユーザー自身でAIのスキルを身に付けていく必要がある。書籍、座学やオンライン講座など、日本でも機械学習や深層学習を学ぶ機会は増えてきているが、初心者が一定のスキルを身に付けるためには、相当高いハードルを越えなければならない。

 ガートナー リサーチ&アドバイザリ部門 ディスティングイッシュト バイス プレジデント,アナリ ストの亦賀忠明氏は次のように述べている。

――これからの時代、テクノロジを駆使できる企業とそうでない企業に分かれます。その結果、10年後のビジネス競争は、今の競争から大きく様変わりするでしょう。今後は、ユーザー企業であっても、AIを『導入する』と捉える時代から、自分たちで必要なAIや、AIを組み込んだサービスを作り提供する時代へと変わります。

――それを支えるのが、例えば、クラウドから提供されるAIプラットフォームです。企業は、こうしたトレンドにさらに注目し、過去の延長に基づく検討や議論だけではなく、早期に、AI関連の人材投資を加速し、AIを自分で操るスキルを獲得す べく準備を開始する必要があります。

――そのためには、人事制度や報酬面での見直しが求められ、この場合、人事(HR)担当との議論・調整も必要となります。なお、AIはバイモーダルのモード2に属するテクノロジです。モード2は、ダイナミックな変化を前提とする継続的改善というアプローチで臨むべきものです。ここでは、AIプロジェクトということで、これまでのモード1型の大規模プロジェクトのような進め方は必ずしも適切ではないことに注意する必要があります。

――これから起こり得る最大級のビジネス・インパクトは、デジタル・ディスラプション(破壊)です。 このディスラプションに備えるという意味でも、AIをより戦略的に推進することが、多くの企業にとって極めて重要になっていきます。

 ガートナーは11月12~14日、「Gartner Symposium/ITxpo 2018」をグランドプリンスホ テル新高輪 国際館パミール(港区高輪)で開催する。ガートナーのセッションでは、CIOをはじめとするITリーダーの最重要課題について、13の主要な領域におけるテクノロジ、戦略、リーダーシップに関する最新トレンドや最先端の知見、洞察を提供するという。

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EnterpriseZine編集部(エンタープライズジン ヘンシュウブ)

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