ネットワーク仮想化全般に対して、導入に積極的かそうでないかに二極化
今回の調査により、国内企業におけるSDN技術の導入が着実に進んでいることが分かった。SDN技術を導入していると回答した企業の割合は、2017年の調査結果と比較して、データセンターネットワークで11.1ポイント、企業内LANにSDN技術を導入している企業は13.1ポイント増加した。
SDN技術導入の目的は、2017年の結果と大きく変わらず、物理ネットワークの統合やネットワーク機器設定の一元化、さらにはセキュリティ対策が上位に挙がっている。このことから、SDNの導入効果を得やすいユースケースに対する認知が、市場内で定着していることがうかがえる。
また、ネットワーク仮想化全般に対して、導入に積極的かそうでないかに二極化していることも明らかになった。たとえば、SDN技術をすでに導入している企業ほど、別なネットワーク仮想化技術であるNetwork Disaggregation(ネットワーク機器におけるハードウェアとソフトウェアを分離する技術)や、NFV、vCPE(virtual Customer Premises Equipment)の導入にも前向きであることが分かった。ネットワーク仮想化の導入姿勢において、技術間の相関性は非常に高いといえる。
SDNの認知度は50%前後でほぼ飽和状態に
さらに、約60%のネットワーク管理者は、自社ネットワークとその運用管理で経営層の要求を満たしていると考えていることが明らかになっているが、そのように考える企業は、ネットワーク仮想化に対して積極的に取り組む傾向があることも分かった(図)。
たとえば、データセンターSDNを導入済み企業の78.8%は、経営層の要求に応えられていると考えているのに対して、導入しない企業では約6割に留まっている。また、導入しない企業では、経営層の要求に応えられているかどうか分からない企業も目立ち、経営層の要求に対する意識の違いも明らかになっている。
導入が進んでいるSDNだが、SDNの認知度は50%前後でほぼ飽和状態に達していて、マーケティングメッセージとしての「SDN」の鮮度が低下していることがうかがえる。一方で、Intent-Based Networkingなどの企業ネットワークにおける新たな潮流に対する認知度も、現在のところ20~30%に留まっている。
IDC Japan コミュニケーションズ グループマネージャーの草野賢一氏は、「ネットワーク機器ベンダーは、SDNに代わるメッセージで自らが描く次世代ネットワークを訴求すべき時を迎えている。その一つであるIntent-Based Networkingに関して、まずはネットワーク仮想化技術に対する感度と受容性の高い企業の理解を促すことに力を注ぐことが得策である」と述べている。
今回の発表は、IDCが発行した「2018年 国内ネットワーク仮想化市場 ユーザー調査」にその詳細が報告されている。レポートでは、企業のSDNやNFVに関する技術、サービスの導入状況や課題に加えて、Network Disaggregationの企業における展開可能性について分析している。また、SDNベンダーの認知度や導入ベンダーについても分析している。