IT部門がぶつかる矛盾の壁を解消するServiceNow
山下氏:まずは岡田さんがどのような経験を経て、どのような立場でお仕事をされているのか。さらにどのような経緯でServiceNowを導入することになったかを教えてください。
岡田氏:私は新卒で外資系IT企業に入社後、数社を経て2011年にグリーに入社し、グローバルオペレーションの構築やグリーでの情報システム部門の立ち上げなどを担当してきました。入社当時は、ServiceNowについてはよく知りませんでしたが、2012-13年頃に当時のサンフランシスコにあった子会社のITマネジャーから、ServiceNowというITサービスマネジメントの良いツールがあるよと紹介されました。ちょうどその頃、グリーでは社内FAQのシステムが老朽化しており、その移行先としてServiceNowを検討したのがServiceNowを導入するに至った経緯です。
しかし、当時の私は、ServiceNowのITSMやプラットフォームのコンセプトを完全には把握しきれておらず、実際に導入後にどのような効果が実現されるのかは十分に腹落ちしていませんでした。インシデントに対するチケット管理の仕組みなどにも利用できるだろう、ということは想定していたのですが、トータルでのITSMによるIT部門や関連部門の業務効率化の可能性まで具体的にはイメージできていませんでした。それを実感することになったのは、実際にServiceNowをFAQ以外の領域に導入し、利用し始めてからですね。
山下氏:単なる既存のツールの置き換えでなく、デジタルトランスフォーメーションを推進する上で、IT資産管理や、人事業務の効率化を含めて幅広い領域でServiceNowプラットフォームを活用していただいておりますね。
岡田氏:はい。ServiceNowのさまざまな機能を確認し、いくつかの社内業務上のユースケースに当てはめていく中で、IT部門が頼りにできるプラットフォームなのだという印象を持つようになりました。ServiceNowの仕組みを利用すれば、個々人のエンジニアリングスキルに依存することなく、多くのIT部門の人間が標準的なフレームワークに沿って高品質な開発ができる。また、ServiceNowで開発された業務ツール群は統一化された共通のプラットフォーム上で動作するので、それらを利用するユーザー(従業員)にとっても、それまでの業務部門ごとにバラバラのサイロ化されたツール群ではなく統一されたユーザーエクスペリエンスを体感できることになります。これは生産性向上にもつながっていると思います。
企業のIT部門の立場としては、日常生活において誰しもがスマートフォンを利用して様々なアプリケーションを利用するようになったのと同様に、企業内のシステムもスピーディで使いやすいものにしたいです。1つの大きな目標としてこうした「エンタープライズITにおいてもコンシューマITレベルの使い勝手を実現する」ことが、ServiceNowで実現できていると言えます。
山下氏:そうですね。全ての従業員が普段行っている仕事を楽にする。それを実現するための手段がServiceNowのプラットフォームです。結果的にそれが働き方改革につながっていきます。ServiceNowでは、「業務の生産性の変革」、「従業員体験の高度化」、そして「顧客エンゲージメントの再構築」という3つのアジェンダを掲げています。グリーはそれらをまさに実践していますよね。
岡田氏:現在のIT部門は、レガシーシステムの運用と新しいデジタル化の2つに同時に取り組まなければなりません。この2つの命題を同じ人間が同時に担当しようとすると、どちらも進まずに停滞してしまうケースが散見されます。しかしServiceNowのようなモダンな仕組みを使うことで、レガシーな業務・システムを一新し、業務の自動化や効率化を加速させ、デジタル化のチャレンジを一層加速させることができます。実はこれが限られたリソースで様々な改革を成し遂げなくてはいけないIT部門の生産性向上にも大きな効果を発揮していると考えています。
データを一元化、部門間の壁をなくしリードタイムも3分の1に短縮
山下氏:すでにグリー様はServiceNowを導入し数年経過されていますが、これまでに得られた効果としては具体的にどのようなものがありますか?
岡田氏:もっとも大きな効果として、いわゆるサイロ、部門間の壁がなくなったことです。ServiceNowのコンセプトの1つにシングル・レコードシステム(管理情報の一元化)というものがあって、これはバラバラなツールで個別にデータを管理するのではなく、共通プラットフォーム上で様々な部門で使うデータを一箇所に溜め、部門横断で利活用しようというものです。従来は部門ごとに業務プロセスもデータもサイロ化した仕組みとなっていましたが、ServiceNowを使うようになってからはデータが一元化され、その上で複数部門で横断する必要性のある業務プロセスを効率的に回せる仕組みができあがっています。
たとえば人事部門では従来、社員の入社/退社業務におけるメールアドレスやシステムのアカウントの発行/停止、PC手配/回収、入館証の作成/回収、給与振込口座登録などの一連の処理は、既存のシステムやスプレッドシートあるいは紙で管理していました。これらの業務は人事、経理、ITなど複数の部門を横断するものです。これを既存の仕組みで行っているとトラッキングもままならず、ミスが1つでもあると処理が大きく滞ってしまいます。修正のための差し戻しは、時間や労力の大きなロスにつながるだけでなく、部門間の軋轢を引き起こしかねません。しかし今では、ServiceNowのプラットフォームに統合化された仕組みとして提供され、業務のスピードと正確性も上がり、ユーザーにとってもServiceNowにさえアクセスすれば全て終了するという使い勝手の向上があります。
実際、これまでのスプレッドシートあるいは紙ベースだった頃と比べると、業務の工数が大きく減りリードタイムも3分の1程度に短縮しています。ServiceNowを利用するようになり、そこに蓄積されているデータをどんどん活用していこうという意識が生まれています。これは大きな変化だと言えます。
他にもグリーでは、IT資産管理にもServiceNowを使っています。これにはちょっと工夫をしており、1つ1つのソフトウェアやPC、スマホなどのIT資産利用のコストをServiceNowの上で定量化し可視化しています。このコストに応じて、各部門でどのように利用したかの実績が算出できるようにしています。IT部門は社員にITサービスを提供するサービス・プロバイダーです。提供するサービスにはお品書きがあり、それぞれには値段がある。管理会計上ではそれらを社員が利用した分は、利用部門の費用として(またはIT部門の収入として)捉えられます。つまり利用部門にとって、どのITサービスを幾らで利用しているかがガラス張りになるため、逆に我々にとっても、市場価格よりも競争力のある価格でITサービスを提供できているか、という視点を常に持っています。ServiceNowで作ったこの仕組みは社内の管理会計の仕組みの上でも重要な基盤となっており、社内でも一定の評価を得ています。
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ServiceNowの大きな価値"ユーザーグループ"
山下氏:ServiceNowはここ数年ユーザーグループを初めとした国内のServiceNowコミュニティ育成を強化しており、昨年は国内で初のServiceNowアプリケーション開発コンテストであるハッカソンを開催致しました。岡田さんにはServiceNowのユーザーグループの代表も努めていただき、ServiceNow国内マーケットとコミュニティ拡大にあたって貢献いただいております。今度はそのお立場からご覧になって、ServiceNowの活用状況をどのように捉えていますか。
岡田氏:まず最初に思いつくのは、ServiceNowを活用する上で、同じ悩みを持っている企業どうしで情報交換ができることですね。このユーザーグループの活動が、どうすれば自分たちの悩みを解決できるかの糸口が見つかる、または課題解決のショートカットの場になっています。これによりServiceNowと、そのユーザーがWinーWinの関係を築けていると思っています。ServiceNowは買って終わりではなく、導入してユーザーグループに入ってからどう使いこなしていくかが重要だと思います。
山下氏:ServiceNowでは、今年もハッカソンを開催して開発者同士の交流も加速しようとしています。「Knowledge」という毎年開催されるグローバルのカンファレンスイベントでは、全セッションの約80%が顧客やパートナー自身にServiceNowのイノベイティブな活用事例や導入効果さらにはベストプラクティスを共有してもらう場となっています。こういう活動を通して、顧客、パートナー、そして我々が三位一体となったエコシステムを構築していきたいと考えています。最終的には日本国内企業の生産性を押し上げて日本の国際競争力を更に高め、グローバルを牽引するようなリファレンスケースになり得る事例を多く作っていきたく思います。
岡田氏:そのためにも、ユーザーグループでは日本で成功したエコシステムモデルを作り、それを世界に発信できるようにしたいとも考えています。それには日本での導入実績がさらに増え、その効果を裏付ける事例がたくさん出てくることも必要だと考えています。
長く付き合えるパートナーとして
山下氏:是非ServiceNowをご存じ無い方に向け、岡田さんご自身が抱かれたServiceNowの価値を共有いただけないでしょうか。
岡田氏:兎に角、何か新しい仕組みを実装しようとしたときにすぐに活用ができる業務プロセスのベストプラクティスや標準の再利用可能なモジュール群が豊富に揃っているのはすごいことだと感じています。ServiceNowは製品価値に対していくらという対価を払うのではなく、買った後にPaaS上でかんたんに仕組みを作ることができ、どんどんカスタマイズができる。それによってもたらされる業務効率化こそがリターンである、として捉えることが大事だと思います。世の中の多くのパッケージ・アプリケーションもカスタマイズはできますが、作り込みが複雑だったり、短期間での開発が難しかったりと、どうしても高コストになりがちです。しかし、ServiceNowは、ガートナーの2018年のEnterprise High-Productivity aPaaSとしてもリーダーポジションに位置付けられているように、low-codeプラットフォームとしての統合開発環境が非常に優れており、比較的容易に、アジャイルに追加開発することができます。自社の業務プロセス上、こうした方が便利だ、といった機能をすぐにIT部門が実装し、実現できる高い開発生産性を備えたアプリケーションプラットフォームだと思います。
山下氏:我々もServiceNowの開発生産性の高さには自負があるところです。ユーザーのちょっとした要望を、ベンダーに発注しなくても叶えられる。しかも、必ずしもトップクラスのプログラマーでなくても叶えられる。そのために新たにGUIベースのフローデザインという機能も提供しています。ServiceNowを自ら変革していくデジタルワークフローの仕組みで、優れたユーザー体験を提供しながら従業員の生産性を大きく向上できるようにしていきます。最後に、ServiceNowに対する要望、期待があれば教えてください。
岡田氏:ServiceNowは、どんどん新しい機能が登場しますよね。クラウドなのでそれらを我々ユーザーは自然な形で利用できます。グリーでは半期に一度の機能追加の中から我々が使えるものはないか、しっかりとチェックしています。その結果、バーチャルエージェント機能を使えば、FAQチャットボットが実現できそうだと考え、今取り組んでいるところです。このように買ったら終わりではないので、継続的に一緒に育てていくような体制の強化をさらに期待します。
山下氏:ServiceNowの最新リリースにおいては、モバイルネイティブのための機能を強化しています。モバイル環境でも直感的に使えるような機能が登場します 。更にこういったイノベーティブを短期間でお客様にお届けするため、必ず一年に二回、最新リリースを提供することをお約束しております。
岡田氏:社内の承認業務などをモバイルで行いたいとのニーズがあります。なので社内システムのモバイル化は、これから積極的に取り組むことになります。その際には利便性はもちろん、セキュリティ性も確保しなければなりませんし、そのアプリケーションを簡単且つスピーディに実装できることも大切な要件となります。そのあたりをServiceNowが強化することは大歓迎です。ServiceNowが市場や顧客のフィードバックをきちんとうけとめつつ、顧客へイノベーションを起こす為のテクノロジー投資をビジネス上の最優先課題としていることは大変市場にマッチしたものと思っていますし、ユーザーにとっては今後長く付き合っていくためには重要なことだと思います。
山下氏:今回、ServiceNowの存在意義やServiceNowを自社のデジタルトランスフォーメーションの手段として活用しているリアルなユースケースについてお尋ねし、ServiceNowが企業に及ぼすインパクトについてお話していただきました。特に昨今、働き方改革というとどうしても【労働時間規制】・【会議効率化】・【賃金アップ】・【休暇奨励】といった要素に目が行きがちです。しかし、本来働き方は社員あるいは組織の生産性を如何に改善するかが本質です。ServiceNowはデジタル化されたワークフローによって『人と人』・『人とモノ』・『モノとモノ』を有機的につなぐことで優れたユーザー体験と圧倒的な労働生産性を高めることが出来ます。是非、デジタルトランスフォーメーションや働き方改革という点で悩みを持っている方がいらっしゃれば、ServiceNowの導入を検討して貰いたいです。
【資料】グリーはどのようにServiceNowプラットフォームを活用しているのか
「小さく始めて適用範囲を拡大する」――。
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