
この連載では、ユーザ企業から示されたRFPを正しく理解し、ユーザが本当に求めるITを実現するポイントを「RFPの読み方講座」として書いて行きたいと思います。ユーザが求めるIT、そしてユーザの期待を超えるITを導入するために、RFPをどのように読むのか、今回は第一回ですので、RFPの各項目について詳述する前に、全体としての読み方、あるいは心構えについてお話ししたいと思います。
RFPはIT導入の出発点
今、この記事をご覧の方 (ITベンダやコンサルタントの方が多いでしょうか) であれば、IT開発において、発注者 (ユーザ企業) が受注候補者に示す RFP (Request for Proposal : 提案依頼書) について、既にご存じの方も多いでしょう。中には、お客様であるユーザ企業に代わって、書いたことのあるという方もいるかもしれません。
今の業務にはどんな課題があるか、ITを導入する目的は何か、それを解決するためのITやそれに関連するサービスについてどんなイメージを持っているか。スケジュールはどのように考えているかと言ったことを伝え、新しいシステムの実現方式やサービスについて提案して欲しい、見積もりもして欲しい。こんなことが書いてあるRFPは、正にIT導入を具体的に行っていく際の出発点であり、この記述を誤ると最終的に役に立たないITが導入されたり、そもそもシステムが出来上がらなかったりという悲劇の引き金にもなってしまいます。
RFPを読めれば、自身の価値が上がる
最近は、ITも以前より安価になってきたとはいえ、この導入は、ユーザ企業にとって数千万円から数百億円の高い買い物であることに変わりはありませんし、お金をもらう側のベンダ企業にとっても大きな売上のかかった重要プロジェクトです。逆にこれに失敗すると、どちらの側にいても、場合によっては経営を揺るがす一大事にもなりかねません。(もしも、利益率10%の企業が、1億円のIT導入費用をドブに捨てるとなれば、その企業は通常の売上に加算して10億円の新規売上が必要となるわけです。予定外の受注を10億、別の仕事もしているメンバーが稼ぎ出すとなると、それは相当な負担になりますし、どんなに頑張っても埋まらないことだてあります。ですからIT導入の失敗は、そのまま経営問題に直結している、皆さんの賞与や給与にだって関係してくる問題でもあるのです。その成否の多くが正しいRFPを書くこと、そしてRFPを正しく読むことに関係するとすれば、この為のノウハウを得ておくことは、皆さん達ご自身が企業 (あるいは組織) にとって高いValueを持った人間になるということに他なりません。
ん?RFPを読むことが価値になる?そんなもの日本語とIT知識があれば読めるんじゃない?そんな声が聞こえてきそうです。確かに、ユーザ企業から受け取ったRFPをそのまま理解するだけであれば、それほど特別なノウハウはいりません。しかし、例えば、世の中のIT紛争などを見ていると、RFP自体はちゃんと読んで、それに対応した提案をして、要件定義をしているにも関わらず、結局、業務の不理解が原因でプロジェクトが失敗してしまうという例がいくつもあります。RFPを読むには、それなりの知見とスキル、そして疑り深さが必要になるのです。
この記事は参考になりましたか?
- ITベンダのためのRFP読み方講座連載記事一覧
-
- IT導入の目的・主旨(前編)
- RFPはノーコンピッチャーの悪球!?
- この記事の著者
-
細川義洋(ホソカワヨシヒロ)
ITプロセスコンサルタント東京地方裁判所 民事調停委員 IT専門委員1964年神奈川県横浜市生まれ。立教大学経済学部経済学科卒。大学を卒業後、日本電気ソフトウェア㈱ (現 NECソリューションイノベータ㈱)にて金融業向け情報システム及びネットワークシステムの開発・運用に従事した後、2005年より20...
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
この記事は参考になりましたか?
この記事をシェア