SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

EnterpriseZine(エンタープライズジン)編集部では、情報システム担当、セキュリティ担当の方々向けに、EnterpriseZine Day、Security Online Day、DataTechという、3つのイベントを開催しております。それぞれ編集部独自の切り口で、業界トレンドや最新事例を網羅。最新の動向を知ることができる場として、好評を得ています。

最新イベントはこちら!

Enterprise IT Women's Forum

2025年1月31日(金)17:00~20:30 ホテル雅叙園東京にて開催

Security Online Day 2025 春の陣(開催予定)

2025年3月18日(火)オンライン開催

EnterpriseZine(エンタープライズジン)編集部では、情報システム担当、セキュリティ担当の方々向けの講座「EnterpriseZine Academy」や、すべてのITパーソンに向けた「新エバンジェリスト養成講座」などの講座を企画しています。EnterpriseZine編集部ならではの切り口・企画・講師セレクトで、明日を担うIT人材の育成をミッションに展開しております。

お申し込み受付中!

EnterpriseZine(エンタープライズジン)

EnterpriseZine編集部が最旬ITトピックの深層に迫る。ここでしか読めない、エンタープライズITの最新トピックをお届けします。

『EnterpriseZine Press』

2024年秋号(EnterpriseZine Press 2024 Autumn)特集「生成AI時代に考える“真のDX人材育成”──『スキル策定』『実践』2つの観点で紐解く」

ITベンダのためのRFP読み方講座

IT導入の目的・主旨(前編)

 「RFPの読み方講座」今回と次回は、この文書の前半に登場する「IT導入の目的・主旨」あたりについてのお話です。むろん、この部分は、その前にある「組織の課題」「KGI」「KPI」と密接に関係してきますので、そのあたりも併せて解説します。

 皆さんはRFP(提案依頼書)を読むとき、どこに注目されるでしょうか。正直なところ、IT技術者であれば、提案依頼者(ユーザ)がITにどんな機能を求めているかが気になるところで、それより前に書かれている「目的・主旨」については、サラっと読むだけで、それ以降はもうあまり見ないかも知れません。私自身も以前、エンジニアや提案をする営業職だった頃はそうでした。RFPを見るときには、どうしてもユーザがどんな機能を求めているのか、それを実現するのに具体的にどんな技術要素を組み合わせ、どんなプログラムを想定しているのかという部分が気になり、それより前の部分は、飾りか枕詞程度にしか認識していなかったというのが正直なところです。

ユーザが欲しいのは「要件を満たすIT」なのか?

 ただ、ここでちょっと考えていただきたいのは、果たして本当にユーザがほしいのは、「要件を満たすIT」なのかということです。

 例えば通販サイトにおいてお客さんのこれまでの購買傾向から興味を持ってくれそうな商品を人工知能が判断して自動的にプロモーションをかけてくれるような機能であれば、ユーザもそれなりに興味を示し作る側にとっても技術的な挑戦心を刺激する楽しいモノづくりになるかもしれません。しかし本当にユーザはそうしたプロモーション機能がほしいのでしょうか?あるいは人工知能という先進技術を自分のものにしたいのでしょうか?おそらくそんなことはないでしょう。ユーザにはもっとほしいものがあるはずです

 この例で言えば、ユーザがほしいのは、結局のところ、”売上”あるいは効率の良いセールスを実現すること、つまり営業の“生産性”といったところでしょう。決して機能や技術がほしいわけではなく、突き詰めれば、財務諸表に並ぶ売上やコスト利益と言った数字が目的なのかもしれませんし、企業イメージのアップや 社員の働きやすさといったもう少し柔らかいものを目的としているかもしれません。それさえ出来れば、人工知能であろうとEXCELであろうと、購買傾向の把握やプロモーションであろうと単なるアンケートであろうと、つまり技術や機能は問わないはずです。ユーザがほしいのは IT自体ではなくそれによって実現される経営の目的やKGIであるはずです。

 RFPを読む際には、こうしたITの裏側にある本当の目的を正確に捉えなければならないというわけです。ちょっと以下の判例を見てみましょう。

  (東京地方裁判所八王子支部 平成15年11月5日判決)

 あるスーパーマーケットがシステム開発会社に,ハンドヘルド端末等を利用した商品の仕入,買掛,支払管理システムの開発を委託したが、スーパーマーケット側は出来上がったシステムを使用に耐えないとして契約を解除し,既払いの開発費用の返還を求めて裁判となった。

 (スーパーマーケットの主張する不具合)

  • 商品コード桁数が多く,オーダーブックが厚くなり,発注対象商品の検索に手間取るほか,ハンドヘルド端末の使い勝手が悪い
  • システム停止後に再起動すると大量のログリストが出力される
  • 伝票を画面で確認する際,一枚の伝票が一画面に表示されず確認しにくい
  • 発注集計表の追加・修正を一件ずつ行わなければならず,一括入力できない
  • 数量の入力方法が煩雑である 他2点

 この裁判の結果自体は論点ではありません。判決ではスーパーマーケットが”使用に耐えない”と主張するこれらの不具合については、いずれも損害賠償の対象となる瑕疵とまでは言えないと裁判所が判断し、システム開発会社の勝訴となりましたが、注目したいのは、判決文の中に以下の一文です。

次のページ
要件だけでは本当の要件はわからない。

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • X
  • Pocket
  • note
ITベンダのためのRFP読み方講座連載記事一覧
この記事の著者

細川義洋(ホソカワヨシヒロ)

ITプロセスコンサルタント東京地方裁判所 民事調停委員 IT専門委員1964年神奈川県横浜市生まれ。立教大学経済学部経済学科卒。大学を卒業後、日本電気ソフトウェア㈱ (現 NECソリューションイノベータ㈱)にて金融業向け情報システム及びネットワークシステムの開発・運用に従事した後、2005年より20...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

EnterpriseZine(エンタープライズジン)
https://enterprisezine.jp/article/detail/11995 2019/05/14 06:00

Job Board

AD

おすすめ

アクセスランキング

アクセスランキング

イベント

EnterpriseZine(エンタープライズジン)編集部では、情報システム担当、セキュリティ担当の方々向けに、EnterpriseZine Day、Security Online Day、DataTechという、3つのイベントを開催しております。それぞれ編集部独自の切り口で、業界トレンドや最新事例を網羅。最新の動向を知ることができる場として、好評を得ています。

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング