「セキュリティ市場には複数の大手ベンダーが存在し、それぞれがウイルス対策ソフトの開発研究に注力している。しかし、個々の企業が独自に開発研究を進めても、発見できるマルウェアは重複する。現在、セキュリティベンダー1社だけで、すべてのマルウェアを検知するのは難しい」
こう語るのは、米PolySwarm(ポリスワーム)で最高経営責任者(CEO)を務めるSteve Bassi(スティーブ バッシ)氏だ。
米PolySwarmは2017年8月に創業したスタートアップ企業である。従業員は25名(2019年3月現在)で、そのうち9人は世界トップレベルのセキュリティエキスパートだ。共同創設者兼CTOのPAUL MAKOWSKI(ポール マコフスキ)氏と、共同創設者兼開発者のBEN SCHMIDT(ベン シュミット)氏は、国際的なセキュリティイベント「DEF CON」のCTF(Capture The Flag)常連のチーム「Samurai」のメンバーでもある。Bassi氏自身、過去のDEF CON CTFで2回の優勝経験を持つ。
PolySwarmを設立する以前、Bassi氏は米Narf Industriesに所属していた。同社は、政府や大規模企業向けのカスタムソリューション開発に特化した、専門情報セキュリティ企業である。NarfでBassi氏は、米国国防総省の機関である国防高等研究計画局(DARPA)のプロジェクトなどを担当した。
ただし、そこで感じたのは、ウイルス対策の非効率性だったとBassi氏は語る。Narfでは顧客企業の環境に特化したインシデント レスポンス ツールを作成していたが、そのツールを他の企業に展開することはできない。せっかく高性能なツールを作ったとしても、小規模なベンダーは、自社のツールや技術を市場に提供する機会がなかったのである。
「長らくセキュリティ業界で働いているが、こうした課題はNarfだけではないことを理解していた。だから、サイバーセキュリティのディストリビューションチャネルを創設し、セキュリティエキスパートらの能力を1個所に集めて利用できようにしたかった。それがPolySwarmだ」(Bassi氏)