プログラムしたものが思い通りに動くのは楽しい
2010年8月に設立したサイバーセキュリティクラウドは、「世界中の人々が安心安全に使えるサイバー空間を創造する」を理念に掲げ、WAF(Webアプリケーション・ファイアウォール)を中心にセキュリティソリューションを開発、提供している。18歳で起業した大野暉さんが代表取締役を務めていることでも話題となっている会社だ。渡辺洋司さんは2016年CTOに就任した。40代半ばになるのに、若々しく爽やかな印象を与える。
サイバーセキュリティクラウドのクラウド型WAF「攻撃遮断くん」のサービス向上のために、CTOとして技術チームを取りまとめることになった。AIによる「AWS WAF」のルール(シグネチャ)自動運用サービス「Waf Charm」の開発にも携わり、エンジニアと一緒にお客様先にうかがうことも多かったという。もちろん、2019年2月にサービスを開始した、AWS Marketplaceで販売されるAWS WAFマネージドルール「Cyber Security Cloud Managed Rules for AWS WAF -HighSecurity OWASP Set-」の開発にも携わっている。
最近は時間に少し余裕ができたので、エンジニアを連れてイベントやカンファレスに出かけてコミュニケーションを取ったり、他社のCTOなど同じ立場の人に相談したりしているという。「年齢は行っていますが、CTO歴はまだまだ浅いので、“平CTO”として企業やセキュリティにおける課題やその乗り越え方などを聞きに行っています」と渡辺さんは笑います。
前職はソフトウェアを受託開発する会社で、14年務めていました。新しい技術の研究開発も行う会社なので技術者が多く、フラットな組織だったといいます。転職でサイバーセキュリティクラウドを選んだ理由について、渡辺さんは「開発の組織作りができること」、そして「自分のバックグラウンドを有効に活かせると思ったこと」の2つを挙げた。
渡辺さんのバックグラウンドとは何か。それは、高校時代にさかのぼる。高校では理系の情報科学科というクラスにいて、ちょうど1990年代半ばのWindowsフィーバーの時期でもあり、今後はIT系が世の中で重要になると感じ、「これは行っておくしかない」というノリでITの世界へ進むことを決めた。そして明治大学理工学部情報科学科に進学し、ソフトウェアやシステムについて学んだ。その中でも、自分でコンパイラを作る授業と、自分で計算機を作る授業の2つが、強く印象に残っている。
大学ではまた、ロボット科学研究室で自動運転における2台のカメラでの距離計測をメインで取り組んでいた。なぜソフトウェア開発を仕事にしようとしたとのかを聞くと、「やはり、作ったものが思った通りに動くことの楽しさですね」という。新卒で入社したのは交換機の会社で、交換機は止められないので動作中にアセンブラでプログラムを書き換えたりした。「スマホアプリよりも、アーキテクチャ設計など裏の仕組みが好きで、設計を実装に落とし込んだものがシステムとして動くのが楽しい」(渡辺さん)という。