「自分の力で社会や世界を良くしていきたい」Elastic セキュリティエンジニア 中島明日香さん
NTTからElasticへ、一貫した思いを胸にセキュリティへの情熱はより強く

小説をきっかけにセキュリティの世界に飛び込み、研究者として、エンジニアとして、数々の発表や活動を続けてきた中島明日香さん。2022年11月からはElasticに移籍し、セキュリティリサーチエンジニアとして、セキュリティの研究開発や製品実装に携わっている。はたして、今はどのような境地に立っているのか。
「パソコンで世界を救うことができる!」とセキュリティの世界へ
セキュリティの世界には、情報セキュリティに興味がある女性を対象に「CTF for GIRLS」を立ち上げ、サイバーセキュリティカンファレンス「Black Hat」の査読委員も担うなど、精力的に活動している中島明日香さんがいる。『サイバー攻撃 ネット世界の裏側で起きていること』(講談社)『入門セキュリティコンテストーーCTFを解きながら学ぶ実戦技術』(技術評論社)の著書もあるなど、とてもパワフルだ。
中島さんがセキュリティに興味を持ったのは小説『Project SEVEN』(アルファポリス)。元々インターネット上で連載されていたところ、多くの読者の支持を得て書籍化した一冊だ。物語は近未来のサイバー空間におけるアドベンチャーで、中島さんは「女子高生ハッカーが悪いサイバーテロリストから世界を救うという話です。これを見てパソコンで世界を救うことができるんだ! すごい! と感銘を受けてセキュリティの世界に入りました」と目を輝かせながら話す。

似たような話を他でも聞いたことがある。イスラエルでセキュリティコミュニティをいくつか立ち上げ、TEDにも登壇したサイバーセキュリティ専門家のケレン・エラザリ(Keren Elazari)さんも最初のきっかけは、映画『Hackers(邦題「サイバーネット」)』だったそうだ。アンジェリーナ・ジョリーが女子高生役で登場し、サイバー空間で死闘を繰り広げるサスペンス。どちらもフィクションが現実世界で活躍するヒロインを生みだしたかのようだ。
中島さんは独学でセキュリティを学び始めると、大学ではセキュリティの学びを深め、NTTの研究開発部門に身を置いた。「自分の力で社会や世界を良くしていきたい」と考える中島さんにとって、日本のインフラを担う同社はぴったりの就職先だったと振り返る。
NTTでは研究者として、ソフトウェアセキュリティを中心に従事し、国際会議での発表や論文の執筆、特許取得などを精力的にこなしていった。たとえば、ソフトウェアの脆弱性についての発見や対策。脆弱性が発見され、いくつかの機器やソフトウェアでは修正が施されたものの、まだ修正されないものも残る。そうした未対策のソフトウェアや機器をどうやって発見するかなどをテーマとした。
「自分が持つ力やスキルで世界を良くしたい」という熱意は、CTF for GIRLSコミュニティ発足にもつながった。中島さんは「セキュリティ業界、特に技術者だと男女比が9対1ほどになります。この男女比を見て『私には無理かも』と感じる女性もいます。そこで解決策の1つとして、女性限定のコミュニティやワークショップを開くことにしました」と話す。
男性だらけで飛び込みにくい世界でも、入口に女性だけの場所があると安心して扉を開くことができ、次のステップにつなげられる。IT業界には各種の女性コミュニティがあるように、次代の担い手を招き入れることに寄与している。
また、中島さんは「Black Hat」応募論文の査読も担当。最初は研究者としてBlack Hatでの発表を目標にしていたが、2018年からBlack Hat Asiaの査読に加わり、2021年からは最高峰となるBlack Hat USAの査読委員に加わるなど活躍の幅をひろげている。
この記事は参考になりましたか?
- Securityプロに会いたい!連載記事一覧
-
- 『an・an』から警視庁まで「セキュリティを広い層に届けていきたい」──SBテクノロジー...
- 「自分の力で社会や世界を良くしていきたい」Elastic セキュリティエンジニア 中島明日...
- PCショップ店頭での身震いする原体験から「驚きに満ちた“体験”を届けたい」──アカマイ 中...
- この記事の著者
-
加山 恵美(カヤマ エミ)
EnterpriseZine/Security Online キュレーターフリーランスライター。茨城大学理学部卒。金融機関のシステム子会社でシステムエンジニアを経験した後にIT系のライターとして独立。エンジニア視点で記事を提供していきたい。EnterpriseZine/DB Online の取材・記事も担当しています。Webサイト:https://emiekayama.net
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
この記事は参考になりましたか?
この記事をシェア