アプリケーション、インフラ、ビジネス、全てのチームに恩恵をもたらすインフラとは
続いてZwolenski氏は「クラウドとは(システムが稼働する)場所ではなく、IT運用のオペレーティングモデルです。3つの観点から考えて見ましょう」と切り出し、企業でDXを成功させるための重要な観点について説明した。DXを実現するには、企業内でアプリケーションチーム、インフラチーム、ビジネス部門が効率良く連携することが重要だ。しかしそれぞれが別のことを考えている。
まずはアプリケーションチームの観点から。アプリケーション開発の世界では、かつてのモノリシックな構造からマイクロサービスへの転換が進んでいる。
こうした背景における重要なIT戦略としてZwolenski氏は「アプリケーショントランスフォーメーション工場を作ること」を提案する。既存のアプリケーションを調査し、モダナイズか、リファクタリングか、リプレイスか、あるいはもう引退させてしまうかなどを判断する。その先にアプリケーションをどこに着陸(移行)させるかを考える。
着陸先には大きく分けてパブリッククラウドかパブリッククラウド以外に二別できる。Zwolenski氏は「今後2~3年の中長期で考えたときに、アプリケーションをどこに展開したいかを尋ねると、多くの企業が複数の環境を使い分けると答える」と指摘する。
パブリッククラウドだけではなく、オンプレの仮想化、プライベートクラウド環境にも展開することを想定している。DXのアプリケーションだからといってパブリッククラウドだけでやっていけるとは思ってはいない。
ではインフラチームに視点を移してみよう。ITインフラはレガシーや仮想化などからなる「従来型IT」と、クラウドを中心とした「デジタルIT」に二別できる。現在のデータセンターの9割は従来型ITで、デジタルITはまだ1割程度だ。しかし今後は急速にデジタルITへと進み、IDCの予測では2022年には7割にまで伸びると見られている。
仮想化とIaaSの違いについて、Zwolenski氏は「仮想化では運用の多くが手動ですが、IaaSではデータセンター運用は100%自動化されており、人の手が介在することはありません」と説明する。労働力不足が深刻な日本において、運用の自動化は特に実現すべき切実な問題だ。
これからのデジタルITはクラウド化だけではなく、マルチクラウド化へと進むことが確実視されている。現在企業が利用しているクラウドプロバイダーの数は平均で4.8になるという調査結果もある。Zwolenski氏は「現在のクラウドは中央集権的ですが、今後は分散化が進むとみられています。コアクラウドを作り、プライベートクラウドやエッジクラウドも併用する企業も出てくるでしょう」と話す。
マルチクラウド化が進むと、それぞれのクラウドプロバイダーのいいところ取りができるメリットがあるものの、運用が複雑になるというリスクがある。例えばAWSチーム、Azureチーム、プライベートクラウドチームなどを編成し、それぞれ別のスキルが必要になる。
Zwolenski氏は「私たちの戦略はパブリッククラウドだろうと、プライベートクラウドだろうと、ワークロードがどのクラウドで稼働していても一貫性のあるIT運用を実現するということです」と断言する。この恩恵を受けるのはインフラチームだけではない。ビジネス部門にも一貫性あるサービスが提供できるようになる。
つまりデルテクノロジーズが目指しているのはAWSやGCPのようなパブリッククラウドを新たに作るのではなく、全てのクラウドを1つにつなげるレイヤを作るということ。それが「Dell Technologies Cloud」と呼ばれるものだ。
複数のクラウドプロバイダーに渡り運用を可能にするという点では、ほかに似通った技術もあるが、Zwolenski氏はデルテクノロジーズ独自の技術として、クラウドを横断的に使えるVMwareがあることと、CIやHCIなど統合された形で提供できる製品がある点を挙げる。
具体的な製品名で言うと、VxRailやVxBlockとなり、プライベートクラウド構築には欠かせない選択肢だ。Zwolenski氏は何百人ものデルテクノロジーズとVMwareのエンジニアが協力して開発している点も優位点として強調した。
ビジネス部門へと視点を移すと、ビジネス部門の多くはインフラのストレージやネットワークなど技術的なことには特に関心を持っていない。必要な時にセルフサービスでITにアクセスできることを求めている。裏を返すと、ビジネス部門のニーズに応じるには、自動化されたセルフサービス型の運用モデルを構築することが求められていることになる。