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創造的破壊はビッグバン型だけではない。継続的に「賢明なピボット」を実行せよ──アクセンチュアが提言

edited by Operation Online   2019/10/02 19:00

 アクセンチュアのオマール・アボッシュ氏が来日しプレス会見をおこなった。アクセンチュアがおこなった世界の企業の創造的破壊に関する調査の結果を紹介するとともに、「潜在的な収益価値」や「賢明なピボット」などの考え方を紹介し、日本企業への提言をおこなった。

71%の企業がすでに創造的破壊の脅威にさらされている

アクセンチュア 通信・メディア・テクノロジー事業グループ グループ最高責任者 オマール・アボッシュ(Omar Abbosh)

アクセンチュア 通信・メディア・テクノロジー事業グループ グループ最高責任者 オマール・アボッシュ(Omar Abbosh)

 今回のオマール・アボッシュ氏の来日会見は、同氏が共著者である新著『ピボット・ストラテジー :未来をつくる経営軸の求め方、動かし方』(東洋経済)の発刊にともなうもの。

この本はアクセンチュアの数千社の企業を対象にした調査から得られた知見を元に、現在進行している企業の「創造的破壊」と事業の再構築に関する深い考察が紹介されている。

 冒頭、アボッシュ氏は「71%の企業がすでに創造的破壊の脅威にさらされている」と述べた。その脅威を乗り越え、イノベーションを起こすために膨大な金額の投資がおこなわれているが、そのうち効果をあげているのは14%にすぎないともいう。

 ビジネスパーソンにとっては、「創造的破壊」は馴染み深い。「イノベーションの必要性」も多く語られてきた。クリステンセンの「イノベーションのジレンマ」をはじめ、様々な研究がある。この本は、そうした流れに位置しつつも、近年のデジタルテクノロジーの動向と調査の成果を踏まえ一石を投じるものだ。

「ビッグバン型創造的破壊」と「圧縮型創造的破壊」

 アボッシュ氏のいう「創造的破壊」そして、事業の転換を意味する「ピボット」という言葉は、これまでの通念よりも少し掘り下げた意味が込められている。

「破壊的イノベーション」という言葉からは、AppleがiTunesやiPhoneを通じて音楽市場や携帯電話の市場を塗り替えたり、Amazonが書店を、Uberがタクシー業界を文字通り一変させたことなどのイメージがある。

 しかし、アボッシュ氏によると、それらは「ビッグバン型創造的破壊」であり、われわれが注視するべきなのは、現在も数多くの既存産業で進行する「圧縮型創造的破壊」なのだという。むしろ数年かけてじわじわと進行する破壊こそが問題なのだとも。

 数百億ドルの企業価値を喪失したテクノロジー企業もあるものの、恐竜のように絶滅したわけではない。「アマゾンエフェクト」が語られながらも、大手の流通や小売の大企業はまだ存在しているし、フィンテックが言われながらも銀行や証券は存在している。問題はそれらの産業の大企業の成長率が鈍化していることだ。

「通信業界のARPUは下がってきており、大手銀行は2%の成長しかできない。公益事業の資本の価値も、10年前に比べて著しく低下している。しかし市場が縮小しているわけではない。」(アボッシュ氏)

「賢明なピボット」を推進する

 つまり、われわれが意識すべきなのは、「継続的な破壊」であり、それに対しては「継続的な再構築」が必要なのだという。人材や財務、戦略の再構築をおこない、ひとつの事業から次の事業へとビジネスを再設計していくこと──アボッシュ氏はこれを、「賢明なピボット」(Wise Pivot)と呼ぶ。

 

 たとえば、ピボット戦略をとる場合、従来のコア事業を軽視し廃止してしまうのではなく、過去の収益や新しい事業との連携を探りながら継続的にバランスの修正を行うという方法が成果を生むこともある。

 例えばネットフリックスは、一時期はDVDの送付サービスを終了させたが、再度見直しをはかり古いサービスの改善を行い継続したという。

 こうした創造的破壊への対処、賢いピボットを推進するためには、テクノロジーの進化とビジネスの進化のギャップを見る必要がある。新しいテクノロジーは、潜在的な需要を解放する。自社のビジネスがそのギャップに対応出来ない場合、競合や新規参入にその需要を奪われるのだという。その収益を「潜在的収益価値」と呼んでいる。

 

 この「潜在的収益価値」を開放するためのアプローチを実践しているのが、ディズニー、エアビーアンドビー、ボッシュなどの企業だと述べ、彼らの実践から導いた「7つの勝利戦略」を提示した。

 

日本企業は古びた「社是」を刷新せよ

 アボッシュ氏の話を受けて、アクセンチュア株式会社戦略コンサルティング本部のマネジメント・ディレクターの中村健太郎氏は、日本企業への提言をおこなった。まず中村氏が紹介したのは、2009年と2019年の日本とグローバルのそれぞれのトップ企業の時価総額の比較だ。

 それによると、グローバルでは2009年ではペトロチャイナ、エクソンモービル、チャイナモバイルが上位。2019年にはマイクロソフトからいわゆるGAFAとよばれる企業が並び、様変わりしているのが見て取れる。それに比べると日本は「トヨタ、NTTドコモ、NTT」などが10年後も上位であまり代り映えしない。また世界の時価総額のランキングに入っているのは、わずかにトヨタ1社のみで、しかも45位という低迷ぶりだ。

 こうした日本企業の停滞ぶりを突破するような事例はあるのか?これについて、中村氏は、リクルートの成長を可能性としてあげた。リクルートは2011年のグローバリゼーションによる事業構造の大変革を機に、成長が続いている。
この成功の背景には、M&Aや、IndeedなどのHR領域の新事業、SUUMO、じゃらんなどの住宅事業などが挙げられる。しかし最も重要な点は、その上位にある「新・経営理念」なのだと中村氏は言う。

 

「マイクロソフトのサティア・ナデラ氏が、それまでのビジョンを刷新し、復活させたように、リクルートは経営理念まで遡った変革を推進したことが功を奏した。それに比べると、日本の伝統的な企業は今だに古い“社是”に縛られている。変革のための改訂が必要なのではないか」(中村氏)

 中村氏によると、日本の伝統企業は明治期の陽明学ブームを受けて公的な役割や存在意義を重視した。また「豊かな暮らし」や「生活の充足」に価値をおいている。こうした企業理念に歴史的な価値はあるものの、生活や社会環境が大きく変化した現在、新しい価値が問われている。

 日本企業にとっても、ミッション、価値、ビジョンを再設計し新しい企業のあり方を追求することが「賢いピボット」につながると中村氏は締めくくった。



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