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第2回 機械学習技術で今解決できることと、今後できるようになることとは

 AIの専門家であるAppierのチーフAIサイエンティスト ミン・スン氏に、現状のAIのリアルな姿を解説してもらうシリーズ。その2回目では、現在のAIの主流技術である機械学習を取りあげる。機械学習や深層学習の技術を使うことで、現状どのような課題が解決できるのか。さらには機械学習を活用していく上での課題、そして今後の機械学習技術の進化についても話を伺った

機械学習の学習時間は大きく短縮できる可能性がある

Appier チーフAIサイエンティスト ミン・スン氏

Appier チーフAIサイエンティスト ミン・スン氏

Q::現状の機械学習、深層学習の技術を利用することで、いったいどのような課題が解決できるのでしょうか。

スン氏:基本的に機械学習でも深層学習でも、できるのは予測することです。Xを入れるとYというアウトプットを出す。インプットのXとアウトプットのYに一貫性があり、Yを測定できれば機械学習は有効です。これについては、機械学習が有効でない例を示すと分かりやすいかもしれません。たとえば「芸術作品にどれくらいの価値があるかを予測する」といったことです。これだと誰が評価するかで、結果である価値が変わります。アウトプットに一貫性がないので、機械学習でこういったことを予測するのは得意ではありません。

Q::機械学習と深層学習の違いはどのように捉えれば良いのでしょうか。

スン氏:機械学習という言葉は、包括的なものを表しています。広い意味で捉えれば、データから学ぶことは機械学習と言えるでしょう。そのデータから学ぶやり方には、さまざまなものがあります。その中の1つに深い階層で意思決定をするものがあり、それが深層学習(Deep Learning)と呼ばれ、多層のニューラルネットワーク(Deep Neural Network)で学習することが特別なものとなります。

Q::深層学習が登場して、機械学習で解決できることに変化はあったのでしょうか。

スン氏:たとえば、深層学習でネコの画像を解析するとします。コンピュータがネコの画像を見ると、2次元のピクセルの配列があり、基本的にはピクセルの明るさの違いを見ることになります。それを概念化することで、ネコかどうかを判断するのです。この判別の仕方は、実際のネコからはかなりかけ離れた情報を使って判別していることになります。

 一方で、ネコにもっと近い情報があります。たとえば「かわいい」、「毛が生えていてもふもふしている」、「ニャーと鳴く」などの情報は、実際のネコに近い情報です。それらを従来の機械学習に投入することで、高い精度でネコだと判別できるでしょう。しかし、ピクセルの情報を従来の多層のニューラルネットワークではない機械学習に投入しても、あまり良い判別結果は得られません。画像からネコかどうかを判別するようなところでは深層学習が有効であり、問題解決方法として採用される余地があったと言えます。

Q::機械学習では大量のデータを学習することになりますが、現状のコンピュータ環境では学習の処理のために必要な能力は、十分に得られているのでしょうか。

スン氏:クラウドの中で行う機械学習の処理では、80〜90%のケースで十分な能力が得られているでしょう。しかしながら十分な能力を得ようとすると、コストは少し高くなってしまいます。またスピード面でも少し課題があります。これも80%ほどは十分なスピードが出ているかもしれませんが、場合によっては学習に3日〜4日かかるものもあるでしょう。そういったものを3、4分に短縮できると、1日の間に何度も試行錯誤しながらさまざまなことが行えるようになるはずです。スピードが速くなれば、それだけたくさんの人の要望にも応えられるでしょう。

 また、クラウドだけでなく今後はよりエッジで機械学習の処理が行われるはずです。と言うのも、データのプライバシーの問題もあり、クラウドにデータをあげたくないこともあるからです。またリアルタイムな処理を求める場合も、クラウドは向いていません。そのためエッジでの機械学習処理については、まだまだ十分な能力がなく遅れています。

次のページ
アルゴリズムでも実装の技術でもさらに機械学習の処理は高速化できる

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この記事の著者

谷川 耕一(タニカワ コウイチ)

EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーターかつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリスト...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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