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SaaS/サブスクリプションビジネス最前線

Zuora創業者兼CEOのツォ氏に聞く、SaaS/サブスクビジネス成長戦略の要諦


 Zuora創業者兼CEOティエン・ツォ氏が来日し、単独のインタビューに応えてくれた。サブスクリプションビジネスの会計モデルや成長戦略とリーダーシップ、変革への手順について、すでに広く知れ渡っているSaaS/サブスクリプションのモデルに関する筆者の疑問を解き明かす内容となった。

<p>Zuora, Inc. 創業者兼CEOティエン・ツォ氏</p>

Zuora, Inc. 創業者兼CEOティエン・ツォ氏

 著書『サブスクリプション』の中で、著者Zuora, Inc. 創業者兼CEOティエン・ツォ氏は、従来の損益計算書とは全く異なるサブスクリプションビジネス専用の損益計算書の必要性を主張している。それは期初の年間定期収益から始まり、当期の年間定期収益で終わるもの。注目するべきは、損益計算書における「販売費及び一般管理費」の位置付けである。ツォ氏は、著書の中で「サブスクリプションビジネスでは、この費用項目は既存顧客や新規獲得顧客からの支払いを増やし、ビジネスを成長させるために費やす『成長コスト』に相当する」と主張している。

 この考え方はこれからSaaS及びサブスクリプションビジネスに取り組もうとする企業にとって、大きな考え方の転換を迫ることになろう。
この記事ではツォ氏の考える成長戦略モデル「The Climb」と、ZuoraCFOのタイラー・スロート氏が考えた「タイラーのスライド」を紹介し、来日したツォ氏に聞いたサブスクリプションビジネスの成長戦略、リーダーシップ、変革への手順についての見解を共有したい。

サブスクリプションビジネスの成長ステージ

――著書の中で、SaaS企業を成長させる方法を決めるためのモデル「タイラーのスライド」を提示していました。図1では、年間定期収益(ARR)に対して、「販売費」と「売上原価+一般管理費+研究開発費」をそれぞれ「50:50」に割り振るとしています。従来型の企業では、販売費及び一般管理費はコスト削減の対象になりがちです。「50:50」は大胆な配分に思うのではないでしょうか。

<p>図1:ZuoraCFOのスロート氏が考えた「タイラーのスライド」出典:Zuora</p>

図1:ZuoraCFOのスロート氏が考えた「タイラーのスライド」出典:Zuora

 どの会社もこの比率がベストなのではありません。急成長している企業であればこの比率でいいでしょう。過去2年を振り返ると、日本では爆発的にSaaS企業が増えています。

 私たちはこれらの企業を観察してきましたが、営業やマーケティングよりも極端にエンジニアリングへの支出が上回っているケースが多いと見ています。ちなみにセールスフォース・ドットコムは長く「50:50」を維持してきました。Zuoraの場合は、プロダクトに幅広い機能セットが求められることを理由に「60:40」と、より成長コストを重視した配分を採用しています。

――この比率はチャーンレートにも関係するのでしょうか。

 チャーンレートが高い場合、「50:50」にしても効果がありません。チャーンレートが高い場合、顧客セグメントが適していない場合などが考えられます。あるいはロイヤルカスタマーに育てるまでにもっと長いトライアル期間を必要としているからかもしれません。市場の選択が間違っている場合はもっと深刻です。

――ティエンさんは定期収益(ARR)の規模別に取り組むべきことを示した「The Climb」という成長戦略モデルを示したことでも知られます(図2)。成長コストへの配分は成長ステージによって変わるのでしょうか。

<p>図2:「The Climb」が示すビジネス成長のステージ 出典:Zuora(<a  data-cke-saved-href=

図2:「The Climb」が示すビジネス成長のステージ 出典:Zuora(https://jp.zuora.com/guides/climb-build-billion-dollar-run-rate/

ステージ1:アイデアの証明(0ドル〜100万ドル)
ステージ2:製品の証明(100万ドル〜300万ドル)
ステージ3:市場の証明(300万ドル〜1,000万ドル)
ステージ4:ビジネスモデルの証明(1,000万ドル〜3,000万ドル)
ステージ5:ビジョンの証明(3,000万ドル〜1億ドル)
ステージ6:業界の証明(1億ドル〜3億ドル)

 ステージ3の「300万〜1000万ドル」に到達するまでは、チャーンやビジネスモデルはあまり気にしなくていいと考えています。その理由は創業間もない若い会社は学習することを優先するべきだからです。ステージ1やステージ2では、多くのテストを繰り返すことが先決で、無理に制約を作らないことです。難しいのはどこでテストをストップするかの見極めですね。見極めというのは、大企業と中小企業に販売していて、より中小企業に向いていると分かったら、中小企業に売るようにすることなどです。例えば7つぐらいテストをしてからストップするなど、どこかで見極めをつけることが大事です。

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米国ではプライシング戦略はCFOの仕事

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この記事の著者

冨永 裕子(トミナガ ユウコ)

 IT調査会社(ITR、IDC Japan)で、エンタープライズIT分野におけるソフトウエアの調査プロジェクトを担当する。その傍らITコンサルタントとして、ユーザー企業を対象としたITマネジメント領域を中心としたコンサルティングプロジェクトを経験。現在はフリーランスのITアナリスト兼ITコンサルタン...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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