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【チームスピリット×Zuora対談】サブスクリプションビジネスの本質は価格に見合った価値の提供にあり

edited by Operation Online   2020/03/19 06:00

 働き方改革プラットフォーム「TeamSpirit」を開発・提供するチームスピリットの社長で、2020年1月に初の著書『サブスクリプションシフト DX時代の最強のビジネス戦略』を上梓した荻島浩司氏と、サブスクリプションサービスの実現を支援するZuora Japan社長の桑野順一郎氏。二人の社長がサブスクリプションビジネスの本質について語り合った。

上場準備がZuora導入のきっかけ

荻島:実は当社でZuoraを最初に見つけたのは私です。私たちは勤怠管理や経費精算および工数管理といった従業員が毎日使うシステムをひとつにまとめたサービス TeamSpirit をSaaS/サブスクリプションで提供しています。当時は国内で参考にできる事例が全くなかったので、サブスクリプションの請求処理については、自社でシステムを開発して使っていました。サブスクリプションビジネスでは、納品時点の収益一括計上は認められておらず、基本的に月次処理になります。同じお客様でも月中にユーザー数が増減すると、日割り計算で対応しなくてはなりませんし、計算ミスを見つけると、過去のデータに遡って修正しなくてはなりません。請求業務がとても複雑になることが当時のシステムの悩みでした。ちょうど上場準備のための監査を受ける準備を始めようとしていた頃にZuoraを知り、私たちが必要としていた機能が正に全て揃っていると思いました。弊社の経営管理担当の取締役が桑野さんと面識があったこともあり、直接契約することにしたのです。

桑野:チームスピリット様は私たちの最初の顧客5社のうちの1社です。Zuoraの日本法人設立は2015年のことですが、翌年の1月に連絡をいただいてからはトントン拍子で話が進み、導入決定となりました。

Zuora Japan 代表取締役社長 桑野順一郎氏(写真左)株式会社チームスピリット 代表取締役社長 荻島浩司氏(写真右)

Zuora Japan 代表取締役社長 桑野順一郎氏(写真左) 株式会社チームスピリット 代表取締役社長 荻島浩司氏(写真右)

荻島:ずっと探していたのです。今でこそチームスピリットのお客様は1,300社を超えましたが、当時はまだ数100社でした。上場準備では、監査法人が私たちの会計オペレーションが正しく処理できているかを検証し、指示を受けて対応しなくてはなりません。サブスクリプションビジネス特有の前受金の処理、日割り計算、端数の処理など、あらゆる処理を自動化できることが魅力でした。

桑野:私たちがお客様のところを訪問すると、最初はExcelのマクロで管理しているケースが多いですね。これではマクロを組んだ人でなければロジックがわからないという問題がありますし、最悪の場合はマクロが壊れて売上のデータが消失することにもなりかねません。

 Zuoraのお客様を見ていると、「100社の壁」があると感じます。ユーザーの追加やプランのアップグレードのない月額固定料金のサービスであれば、難しくありません。お客様の数が少ないうちはExcelでなんとかできても、100社を超えると新しいことができなくなるのです。こうして、当初のビジネスモデルを変えられないまま、ビジネス成長の壁にぶつかるのです。

自社開発の請求システムからZuoraに移行

株式会社チームスピリット 代表取締役社長 荻島浩司氏

株式会社チームスピリット 代表取締役社長 荻島浩司氏

荻島:上場準備の時のシステム監査では、Excelにせよ自前のシステムにせよ、どんなロジックで売上を計算しているかの説明と、それが正しい計算であることを証明する必要があります。私たちは自前のシステムでしたが、それでも正しく計算できているかを証明することは大変でした。お客様の数は数100社でも、ユーザー数では数万人に上ります。しかも、大手のお客様ではグループ会社の段階導入も多く、最初は1000人が使い始めて、段階的にライセンスを数百人ずつ追加してもらったり、年度末になると退職者分のライセンスを減らすことになったりと、ユーザー数の変動が大きいのです。

 また、複数の機能を組み合わせた価格の異なるパッケージを用意しています。Zuoraを使うと、プログラムを変えることなく設定だけでプライシングモデルを変更できるのがいいですね。

桑野:B2Bのビジネスならではの複雑さですね。

荻島:自社開発のシステムからZuoraへの移行は比較的簡単にできましたし、結果として上場監査もスムースに終わらせることができましたが、Excelからの移行でデータを整理するのは大変だと思います。

桑野:お客様からは「初めからZuoraを入れておけばよかった」と言われます。よくあるのが、スタート時に売上を作るために顧客毎の条件で契約するのですが、いざスケールしようとするとその個々の契約が障害になるケースです。どこかのタイミングでZuoraに移行するときに既存の契約を整理して、個別に新しいプランへの誘導を交渉し、スケールさせることが必要です。

 サブスクリプションビジネスをスケールさせるときに直面する課題は大きく3つあります。第一に、売上増加に伴う契約管理と請求の複雑性の増大です。顧客ニーズの変化に即して提供プランや販売プロセスが複雑になるのですが、既存システムのメンテナンスで対応するには膨大な時間と費用が必要です。

 第二に成長戦略をスピーディに展開できないことがあります。新しい商材のリリースや新しい料金プランの追加をしたくても、裏側の仕組みの対応に時間がかかるのです。

 最後にコンプライアンスです。チームスピリット様の場合は、上場準備をきっかけでZuoraへの移行を進めたわけですが、コンプライアンス上のリスクを抱えることがないようにしなくてはなりません。つまり、コア業務である商材開発にリソースを集中できる仕組みを必要としているのです。

荻島:Zuoraの創業者はSalesforce出身ですよね。Salesforceがビジネスを拡大させる時に直面した請求の課題解決をビジネスにしたと理解しています。クラウドビジネスの人たちはプラットフォームを作るのがうまい。必要な機能を揃えたプラットフォームを使えば、私たちはアプリケーションというお客様に価値を提供することに集中できます。そんなエコシステムができていることが素晴らしいと思います。


著者プロフィール

  • 冨永 裕子(トミナガ ユウコ)

     IT調査会社(ITR、IDC Japan)で、エンタープライズIT分野におけるソフトウエアの調査プロジェクトを担当する。その傍らITコンサルタントとして、ユーザー企業を対象としたITマネジメント領域を中心としたコンサルティングプロジェクトを経験。現在はフリーランスのITアナリスト兼ITコンサルタントとして活動中。ビジネスとテクノロジーのギャップを埋めることに関心があり、現在はマーケティングテクノロジーを含む新興領域にフォーカスしている。

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