サブスクリプションビジネスで成長するためにはベストプラクティスが必要
Zuoraが定期的に実施しているサブスクリプションエコノミーに関する調査では、同社の製品を利用している企業の実績を集めたデータベースを用いている。このデータベースは顧客のプライバシーの保護と守秘義務を徹底した上でそのビジネス成果を集計しており、現在のデータベースには企業数にして全世界700社超のデータがあるという。ただし、運用を開始してから2年以上を経過した企業のデータが対象であり、創業間もないスタートアップがZuoraを利用していても、集計の対象にはならない。Gold氏によれば、調査はサブスクリプションビジネスの世界的な市場トレンドを把握すること、そしてビジネスを成長させるためのベストプラクティスを特定することを目的に実施しているという。
Subscription Economy Index(以降、SEI)は、このデータベースを用いてサブスクリプションビジネスを展開している企業の収益成長をインデックス化したものである。株価のインデックスに似ているが、サブスクリプションビジネスの重要指標である各企業の売上──MRR(Monthly Recurring Revenue)やARR(Annual Recurring Revenue)に着目している点がSEIの特徴である。
そのSEIを2019年第4四半期までの四半期ごとの推移を見た結果が図1である。2012年1月の100に対して、2019年第4四半期のSEIは378。年平均成長率(CAGR:Compound Annual Growth Rate)は18.1%で成長している。比較材料のS&P 500企業の売上成長率は同3.7%であり、サブスクリプションビジネスを展開している企業はS&P 500企業と比べ約5倍の成長を遂げているとわかる。また、アジア太平洋地域の動向を見ると、2018年1月を基準とするSEI APACのCAGRは16.3%。同時期のNikkeiのCAGR4.1%と比べると、地域を限定してもサブスクリプションビジネスを展開している企業の成長性が高いとわかる。
しかし、「個社単位で見ると結果に開きがあるため、全体的な成長の高さに騙されてはいけない」とGold氏は警告する。実は上位10%の企業はCAGRが88%であるが、下位10%の企業のCAGRはマイナス24%である。この結果からは、サブスクリプションビジネスをやれば成功が約束されているわけではない。だからこそオペレーションを改善し、ビジネスを成長させるためのベストプラクティスが必要になるとGold氏は訴えた。