VDIもクラウドの時代、高まるDaaSニーズと時代の必然性
クラウドの時代と言われて久しい中、クラウド型の仮想デスクトップ、いわゆるDaaSへのニーズが急増している。オンプレミスで構築するVDIの悩みとして「高い初期費用コスト」「運用負荷の高さ」「保守・サポート切れへの対応」「相応の規模が必要」などがよく挙がるが、それに対してクラウドを利用することで以下のようなメリットを企業は享受できる。
- スモールスタートで開始ができ、初期導入費用が安く済む
- 日常業務の運用負荷軽減
- ハードウェアのスペック不足、老朽化、保守切れへの対応不要
また従来までのVDIはセキュリティ観点での導入が多かったが、昨今は働き方改革、オリンピック、グローバル化、これまでとは前提が変わりつつある災害対策などの複数要因から、セキュリティ以外の観点からも時代の要請としてVDIの構築が企業には求められている状況となっている。数年前までは試してみようという状況だったのが一変、現状では業種・業態を問わずニーズが広がっているわけだ。
これらのニーズへの対応にクラウド利用は最適だ。クラウドを利用したVDIであれば、柔軟性と拡張性をもった構築が可能であり、お試しニーズへの対応や災害のような突発的な事態への対応もしやすい。つまりVDIは「小規模でちょっと試してみよう」というソリューションから、「なくてはならない」ソリューションへとここ数年で変貌を遂げているのだ。
これらが追い風となり、Azureを利用したVDIの存在感も増している。シトリックス、ヴイエムウェアといったベンダーが提供するVDIのソリューションと組み合わせるのも一手だが、直近で注目を集めているのは2019年の9月に一般公開となったWVDだ。マイクロソフト純正サービスでVDIを構築できるという利用のしやすさから、待ち望んでいた企業も多いという。
Azureを利用したVDIへのニーズやWVDへの反応、そして今後の展望まで日本マイクロソフトと共にAzureのVDI普及を推進するパートナーのうち、日本ビジネスシステムズ、パーソルプロセス&テクノロジー、日商エレクトロニクスの3社に現状について聞いた。
日本ビジネスシステムズ:様々なニーズに対して、Customer Firstで最適な提案を
── VDIを検討されるのはどういった課題・きっかけからが多いと捉えていますか。
久保田:VDI導入を検討する理由はいくつかありますが、代表的にはワークスタイル変革、災害対策、端末の紛失・漏洩などがわかりやすい理由です。特に端末の紛失・漏洩は昨今のご時世もあり敏感になっている企業が多いです。VDIを利用することで、自宅の端末からアクセスできるようになれば防げます。
月岡:クラウドとオンプレミスを比べて考えると、管理がしやすくなるというのもよく挙がる声です。ただ管理がゼロになるかというとそうではないので、管理の仕方の質が変わる形というイメージです。
── Azureを利用したVDIの導入メリットをどう捉えていますか。
久保田:Azureを含めてクラウドのVDIという視点だと、まず初期費用のコストメリットが挙げられます。クラウドであれば、ハードウェアを準備するなどの必要がなくなり、一度利用できる環境を用意すれば、後は利用したい時に利用する、必要がない時には使わない、削除するといった柔軟な対応ができます。小さく始めて、まずはお試しで使ってみましょうという感じで利用できる点は、柔軟な働き方を実現するという面はもちろん、災害等の対応時にも便利です。
月岡:ニーズの高まりもあり色々なサービスが乱立している印象がありますが、Azureを利用するメリットは多くの日本企業がWindowsやOffice、Office365を利用しているという点から、トータルでの統一感や一貫性が出せる点だと思います。特に大企業となると、Windowsを使われているお客様が圧倒的に多いので、Azureとの親和性が高く、提案もしやすいです。既に利用しているので、その延長線上で使ってみようとなります。
── 御社ではどのようなアプローチで課題解決を図っていますか。Azureを利用したVDIの活用事例もあれば教えてください。
久保田:災害対策での活用事例となりますが、オンプレミスのVDIを災害対策として利用する場合、別のデータセンターにまったく同じ形でVDIを構築するとなると、本番環境とは別にもう一つ環境を作らないといけないため、非常にコストがかかります。
一方クラウドを利用すれば、事前に利用できる環境を構築しておいて、実際に災害が起きた際にだけ使うといった利用が可能となりますし、普段は停止しているので利用料金も安くなります。イニシャルコストを抑えつつ、ランニングコストは必要な分だけ支払えばよいので、柔軟な運用が可能となります。
月岡:VDIは導入のニーズが様々です。実際に運用する中で使わなくなったというケースもあり、導入後の柔軟な対応を見据えるならば、やっぱりクラウドがおすすめですね。
── 今後の展望について教えてください。
月岡:最近だとWVDの話題がホットです。他のベンダー製品も含め、今後はクラウドでのVDIが今後より活況になってくると想定していますので、お客様のニーズに柔軟に応えていきたいと思っています。
久保田:弊社は企業理念として、Customer Firstを掲げていますが、いかにお客様に対して最適なものを提供できるかに尽きると考えています。さらに変化が激しい時代なので、それに対応するスピードも求められていると感じます。クラウドの最大のメリットはスピードと柔軟性です。マイクロソフトゴールドパートナーとして弊社が長年培った経験と、弊社が有する多数のAzure認定エンジニアの技術力を総動員し、クラウドのスピード感を最大限活かしてお客様の期待に応えていきたいですね。
セミナー紹介
- タイトル:デジタルトランスフォーメーションに向けたクラウド移行徹底解説! ~IT インフラから仮想デスクトップまで、まるっと Azure 上で実現~
- 詳細:申し込みページ
パーソルプロセス&テクノロジー:WVDにより構築自体は容易に、+αで付加価値の高い提案を
── VDIを検討されるのはどういった課題・きっかけからが多いと捉えていますか。
昨今は働き方改革をはじめ、外的要因が追い風になっているよう感じますが、元々のニーズとしてはシンクライアントが提唱された時から根強く残っていると思います。そのため既存環境からのリプレイスか新規導入かできっかけは変わると捉えています。
オンプレミスで構築済み場合は、約5年おきに物理的な保守・サポート切れ含めたタイミングでクラウドを検討します。一方新規でVDI検討の場合は、先程も申し上げた働き方改革をはじめ、災害対策、グローバル化など、そもそもVDIが必要な環境になっており、オンプレミスとの比較というよりは、前提としてクラウドで導入検討という流れになっていると感じます。
── Azureを利用したVDIの導入メリットをどう捉えていますか。
弊社はパートナーの中でも初期からAzureを提案している一社ですので、Azureへの理解は深いと自負しております。数年前からAzure上でのVDIも提案しておりました。
その中でお客様の声として要望が多かったのがコスト面です。それが比較検討の際のハードルになっておりました。しかしWVDが一般公開されたことにより状況が変わってきています。WVDを活用することによって、コストの面だけ見ると最低限のIaaSコスト、Azure利用料、Windows10のライセンス料のみで利用することができます。これは大きなコストメリットです。昨年WVDが発表されてから、現在までのお客様の問い合わせも多くWVDへの期待の高さを感じております。
もちろん他が悪いわけではありませんが、色々なソリューションを比較検討したコストという意味で、ちょうどお客様が求めるコスト水準になってきています。もちろんシトリックスやヴイエムウェアのソリューションを活用することで、WVDの補完ができる面もあります。お客様のコスト感と状況に合わせて、ピュアなWVDだけでなくシトリックス、ヴイエムウェアと組み合わせた構成もとれるようになっている点もメリットです。
── 御社ではどのようなアプローチで課題解決を図っていますか。Azureを利用したVDIの活用事例もあれば教えてください。
お客様の業種・業態は幅広く、総合メーカー、文教系、弊社と同業のIT系など、幅広く活用頂いておりますね。大手だけではなくベンチャー企業なども働き方改革の観点から活用頂いております。Azureだからこそ、様々な選択肢を提案でき、幅広いニーズに対して応えることができると認識しております。
WVDに関していうと、現在PoC(Proof of Concept)の段階で、今現状はお客様もまずはWVDを知りたい、試してみたいというニーズが多く、それに対して対応している状況ですね。WVDの登場により従来と比べ何が大きく変わるかというと、構築のスピードが格段に変わります。
PoCでもシンプルな構成でよいのであれば、1~2日ぐらいで構築できてしまいます。従来は要件確認から構築完了まで、なんだかんだで3週間ぐらいは要していました。逆にいうとその分運用等で付加価値を高めていかないと、と考えております。
── 今後の展望を教えてください。
まずWVDに関しての情報発信を積極的に行っております。弊社では「CloudSteady」というクラウドサービス、IoT、AI、ビッグデータなどのテクノロジー活用支援を目的とした、サービスサイトを運営しているのですが、その中で技術ブログのコーナーがあり、ここでWVDの情報についての発信を行っています。
自分たちで試すことでノウハウを貯めることはもちろん、情報発信を続けることで「WVDを依頼するならパーソルプロセス&テクノロジー」というブランディングをしたいという目的も兼ねています。その他にもVM稼働管理ツールという弊社独自の管理ツールも提供しており、Azure環境を提供する際の付加価値としております。
WVD関連のセミナーも積極的に行っております。直近では1月31日に行いますので、ご興味ありましたらぜひお越し頂けると嬉しいです。
セミナー紹介
- タイトル:導入課題をまるっと解消!WVD サービス紹介から本番導入プロセスまで一挙紹介 WVDサービス紹介セミナー
- 詳細:申し込みページ
日商エレクトロニクス:オンプレミスとクラウド、双方の知見から最適な選択肢を
── VDIを検討されるのはどういった課題・きっかけからが多いと捉えていますか。
大きなトピックとしては、やはり働き方改革のためにVDIを選択するニーズが高まっていると感じます。もちろん、以前も導入している企業はありましたが、その時のニーズは出張者や出向者向けが多かった印象です。
実際に利用する中で、業務で問題なく使えるよねという意識に変化し、さらにワークスタイル変革が後押しになってきていると思います。特にお客様の声として多いのはセキュリティと運用負荷の部分ですね。情報漏洩の防止、管理負荷の軽減といった声が多いです。
── Azureを利用したVDIの導入メリットをどう捉えていますか。
弊社はオンプレミスでのVDIも数多く手掛けてきましたが、クラウドでのメリットは、小規模からスタートできる点がまず挙げられます。オンプレミスですと、数百の規模からスタートしないといけなかったり、機材の調達手間はもちろんリードタイムも長いです。そうなると最初のモチベーションが下がってしまいます。
一方、クラウドであれば、小規模かつ環境をすぐに構築することができます。たとえばある課で構築してみたいといったニーズに応えることができ、さらに増やしたいようであればそれにも対応できるので、柔軟な対応が可能となります。
── 御社ではどのようなアプローチで課題解決を図っていますか。Azureを利用したVDIの活用事例もあれば教えてください。
弊社のお客様は、金融系、鉄道系、流通系など業種は幅広く、比較的規模も大きめのお客様が多いです。ただ業種が変わっても抱えている課題はほぼ共通だと感じます。
既に発表していますが、VMware Horizon Cloud on Microsfot Azure(以下、Horizon Cloud on Azure)では国内初の構築公開事例として、ニトリ様の事例があります。既にオンプレミスでVDIの運用をされていましたが、クラウドを活用したVDIは国内企業でも初めてのチャレンジでした。
導入にあたっては、まずニトリ様の既存環境や課題の理解から始まり、不安要素に対してはデモや検証を行いました。そこで、実際に検証を行って頂き、ログインや認証基盤との連携など、不安を感じられていた点を一つずつ払拭するご支援からさせて頂きました。
結果的に、運用管理負荷の30%軽減に成功。利用者増減にも柔軟に対応し、セキュリティレベルの向上も実現しております(事例詳細)。その他にも、金融サービスの企業でも導入事例があり、このお客様は当初は一部のチームだけでの導入でしたが、その後ご要望を頂きご利用者数を拡大しました。
── 今後の展望について教えてください。
技術部隊の観点から申し上げますと、早い段階から情報をキャッチアップして常に進化するクラウドサービスの現状を正しく把握し、最適なものをお客様へ提案できる力を、これまで以上に身につけていきたいと考えております。昨今話題のWVDに関連する情報も、正式リリースされる前から実際に検証を行いキャッチアップしてきました。
弊社ではAzureに関連するサービスサイトを運営しており、その中にある技術ブログは頻繁に更新していますが、 WVDの情報はもちろん、海外カンファレンスやイベントのレポートなどの情報発信もしています。こういった取り組みを続けることで、お客様の役に立つような情報をどこよりも早くお届けし、現在直面している課題解決のヒントになれば良いかなと思っています。実際にブログの人ですよねといった声をかけられるなどの反響を頂いたり、問い合わせを頂くことも多くございます。
私たちの強みの一つとして、オンプレミスのVDIに多くの経験・実績があります。クラウドで新規構築のニーズも当然ありますが、現実的にはオンプレミスからの移行を選択する企業が多いです。オンプレミスのVDIだとこういう考え方だが、クラウドのVDIであればこうした方がいいという視点は、両方の経験を持ち合わせているからこその視点です。お客様に寄り添い双方の視点からの付加価値の高い提案で、様々なニーズに応えていきたいと考えています。