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週刊DBオンライン 谷川耕一

SASはクラウドに力を入れ、コンサルティングサービスも製品とバランスをとりながら伸ばしていく

 デジタル変革の肝はデータ活用ということもあり、BIやアナリティクスのソフトウェア製品を提供する企業の業績は、概ね好調のようだ。独立系アナリティクスソリューションの老舗ベンダーSAS Instituteのビジネスも、2019年は堅調に推移し増収で過去最高の売り上げを記録している。

SAS Institute Japan 代表取締役社長 兼 日本・韓国地域統括 堀田徹哉氏

SAS Institute Japan 代表取締役社長 兼 日本・韓国地域統括 堀田徹哉氏

企業のデジタル変革への取り組みがSASのビジネスの追い風に

 好調な要因としては「日本においてもデジタル変革が進み、その中で新しいデータ活用の取り組みがありました。さらにクラウドビジネスの成長も昨年のハイライトでした」と言うのは、SAS Institute Japan 代表取締役社長 兼 日本・韓国地域統括の堀田徹哉氏だ。3つ目の好調要因としては、サービスビジネスの躍進も挙げる。SASではこれまではソフトウェア製品の販売が中心だったが、顧客のデジタル変革をサポートするサービスビジネスが大きく伸びたのだ。

 日本のコンサルティングサービス・ビジネスは、米国を除けばSASグローバルの中でNo1の規模。とはいえコンサルティングサービスだけに特に注力しているのではなく、ソフトウェアとコンサルティングのバランスがとれており、今後もこの2つは同期をとりながら伸ばしていくと、堀田氏は言う。

 企業のデジタル変革への取り組みが、SASのビジネスの追い風になっているのは事実だろう。中でもインダストリーごとに特化したデジタル変革支援のアプローチは功を奏している。もともとSASが強みを持つ金融領域では、SAS Anti-Money Launderingによる不正検知の評価が高い。これをより幅広い金融犯罪に対応できるようにしたことで、採用が広がっている。また製薬業界では、MRの営業やマーケティング領域でのアナリティクスの需要が高く、さらに臨床に関する情報の解析で医薬品製造の規制対応や効率化でもSASが活用されている。他にも流通業では需要予測、最適化、さらに新規商品の売れ行き予測などでSASデータサイエンスの強みが発揮されているようだ。

 クラウドについてはこれまで、SASではあまり積極的な姿勢で取り組んできたようには見えなかった。これはビッグデータをクラウドに全て持って行くことが、コスト的にも手間的にも得策ではなかったことも1つの理由だろう。また医療など臨床にかかわる情報や顧客情報など、クラウドに持って行きたくない機密性の高いデータがあったことも、クラウドにそれほど注力してこなかった理由の1つかもしれない。

 とはいえ昨今は、データそのものが最初からクラウドで生まれることも多い。またハイブリッドクラウド構成にして、適材適所にデータを配置して活用する形も一般化してきた。SASも昨年からハイブリッド・クラウド・マーケティング・プラットフォームとなるSAS Customer Intelligence 360や、Amazon Web Services上でSAS Viyaをマネージドサービスで動かすSAS Managed Cloudなどを提供し、クラウド上でのデータ活用のサポートに力を入れ始めた。そして実際にこれら新しいクラウドサービスの利用が、2019年は大きく成長しているのだ。

 全てのデータ活用の環境をクラウドでとはならずとも、企業は今後積極的にクラウドを利用することになる。そのニーズに遅ればせながらSASも応えた形となった。主にどちらかと言えば慎重な行動をとる大手企業を相手にしているSASとしては、クラウドへの対応は後発故にしっかりと準備しビジネス展開ができたことになる。それがむしろ、SASが主とする顧客のクラウドシフトのスピード感に合っていたのかもしれない。

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谷川 耕一(タニカワ コウイチ)

EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーターかつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリスト...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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