前回は、実例を交えて自分を独善する方法について紹介しました。しかし、今日のソフトウェア開発では、複数のメンバーで開発する「チーム開発」スタイルが主流であり、自分独りの改善だけでは解決できない問題がたくさんあると思います。 そこで、今回は「自分」の次に身近な「チーム」を独善する手法をご紹介します。
チームとは
みなさんは、「チーム」という言葉にどのようなイメージをお持ちでしょうか。良いチーム、悪いチーム、大きなチーム、小さなチーム ―― 様々なイメージがあることと思います。
私の場合、「チーム」と聞くと、いままで経験してきたプロジェクトでの様々な思い出と、共に苦労したメンバー皆さんの顔が思い浮かんできて、ついつい感慨に浸ってしまいます…。
さて、チームという言葉は世間一般で使われる言葉ですが、ソフトウェア開発においては、1つのプロジェクトを機能単位にグループ分けした1つの集団が「チーム」であると言えます。1チームの人数は、小規模で1~2名、大規模になると10名以上になる場合もあります。基本的にチームは複数のメンバーから構成されるため、チームを独善するためにはメンバー(つまり他人)の行動を変化させる必要があります。
なかなか進まないチームの改善
自分を独善するだけでも大変ですが、チームを独善するには他人の行動を変化させるという高いハードルが待ち構えています。このハードルは、次の2つに分類することができます。
- ハードルその1「変化への拒絶反応」
- ハードルその2「価値観の押し付け」
この2つのハードルについて、それぞれ説明します。
ハードルその1「変化への拒絶反応」
例えば、素晴らしい開発手法が記載されている書籍を入手して、内容を熟読したとします。しかし、即座にその手法を導入しようとは考えないのではないでしょうか。あるいは、自分が発見した素晴らしいテクニックを他の人に教えても、結局使ってもらえなかった経験があるのではないでしょうか。
「新しいことへの挑戦」には「失敗」というリスクが付きます。人は、失敗を恐れるため、失敗のリスクを含んだ新しいことへの挑戦に臆病になり、手を出すことをためらってしまいます。過去に成功した手法がある場合は、特別な理由がない限り新しい手法は採用されません。
これが「変化への拒絶反応」です。

ハードルその2「価値観の押し付け」
人は個々に異なった価値観を持っており、その価値観に基づいて行動します。そのため、意見のすれ違いが発生します。
ソフトウェア開発を円滑に進めるためには、チーム全員の意思統一を図る必要があります。そのためリーダーは、叱責や権限による「価値観の押し付け」を行い、強制的に意見のすれ違いを排除することがあります。しかし、人の価値観は一朝一夕に変えることは難しく、価値観を押し付けてはメンバーの不平/不満を買ってしまい、モチベーションを下げてしまう危険性があります。

さらに、チームの意思統一が図れないと、リーダーにも不満が溜まり、リーダー/メンバー双方のモチベーションを下げてしまう「モチベーション低下の連鎖」へと発展する可能性もあります。モチベーションの低下が進むと、改善どころかチーム崩壊の危険性もあります。
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- この記事の著者
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にし たけよし(ニシ タケヨシ)
某社で組込み系ソフトウェア開発に従事。
ソフトウェア開発手法に興味を持ち、様々な手法にチャレンジしている。社内/社外を問わず、様々なセミナーやワークショップにも出没。最良のソフトウェア開発手法を追い求め、日夜修行中。知る人ぞ知る、自称『歌って踊れるプログラマ』。※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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