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洗練されたデータから健全なデータへ、B2Bで重視するべきデータマネジメント 【JDMCセミナー 庭山☓堀野対談】

 2020年9月30日、日本データマネジメント・コンソーシアム(JDMC)は「第53回 定例セミナー・ライブ:BtoBマーケターから見たデータマネジメントの重要性」をオンラインで開催した。この記事では、同セミナーの内容からデータマネジメントを重点的に取り上げた箇所を抜粋してお届けする。

シンフォニーマーケティング 代表取締役 庭山一郎氏

見落としがちなデータマネジメントのポイント

 第1部では庭山一郎氏が講演を行った。庭山氏が代表を務めるシンフォニーマーケティングは、B2B企業に特化したマーケティング支援を行う会社である。

 日本企業がMA(Marketing Automation)導入に着手したのは2014年からであるが、庭山氏が見るところ、そのほとんどはMAをうまく活用できていないという。同社に来る典型的な相談例が、「SIベンダーが戦略商材としてパッケージアプリケーションを開発したが売れない」「オンプレミスのパッケージアプリケーションのクラウド版をリリースしたが売れない」というものだという。思い描く理想に実態が伴わない企業に向け、庭山氏が提唱するのは、企業の中に「デマンドセンター」を設置することである。デマンドセンターとは、商談機会を創出する仕組みの総称であり、データマネジメントはこの仕組みを機能させるために不可欠な要素の一つである。

 MAを使う前のデータマネジメントの重要性を認識していないマーケターは多い。本来は、MA導入以前に、どんな業種のどの部署をターゲットにして、いくら売りたいのかを明らかにすること、そしてそのために必要なコンタクト情報が何件あるかを明らかにすることが求められる。例えば、シンフォニーマーケティングが支援したある企業の場合、売上単価が約2,000万円の業務アプリケーション製品を開発したが、全く売れずに困っていたという。最後の手段として年間売上目標を8億円とし、1年以内にこの目標を達成できなかったら撤退することにした。つまり1年で40件の受注が必要という計算になる。

 次にマーケティングは営業とディスカッションを行い、SAL(Sales Accepted Lead)の条件を合意しなくてはならない。この企業に残された時間は1年。25%以上の確率で1年以内に受注が取れることを条件とし、160件のSALが必要と分かった。さらに、SALの上流のMQL(Marketing Qualified Lead)からの減衰率を30%と仮定すると、逆算してMQLは480件。月に40件のアポイントが必要という計算になる。電話でアポイントが取れる確率は庭山氏の経験則では20%〜30%弱となる。ここから逆算すると、月に180件の電話をかけなくてはならない。どこに電話をかけるかを決めるにはメルマガを使う。最低でも900人はメールをクリックしてほしい。CTR(Click Through Rate)が5%だとすると、マーケティングは18,000人にメールを送らないといけないと分かった。

MAで使うべき健全なデータとは?

 「リード(見込み客)データを整理するのは、ここまでの数字を全て“実数で”明らかにしてから」と庭山氏は強調する。どの企業でもデータは様々なフォーマットで散在している。データはSFAシステムの中にあるものだけではない。例えば、展示会で集めたアンケートはダンボールの箱の中に入れっぱなしになっていることも多い。一人の営業担当者が集めた名刺は平均2,000〜3,000枚と言われている。社歴が長い人のものはもっと多い。これを全部デジタル化しなくてはならない。その企業の場合、全部のデータを集めたところ72,000件になった。

 ここでよくある誤りは、この72,000件のデータをそのままMAに入れればいいと考えることだ。実はこのデータの中には、複数の営業が同一人物と名刺交換をしていたり、人事異動で部署が変わっていたり、転職で勤務先自体が変わっているものが含まれる。システムの中には名前や住所の表記に誤りがある場合もある。名寄せを行った結果、使えるものは18,000件と、メールターゲットとしてはギリギリの数であることが分かったという。MAに入れるのは、この18,000件のコンタクト情報でなくてはならない。その後、この企業は1年で10億円の受注を獲得し、今でも業務アプリケーションビジネスは成長を続けている。

 この仕組みを支えているのが「健全な(Hygiene)データ」である。以前は「洗練された(Sophisticated)データ」と呼ばれていたものだ。この表現の変化の背景には、近年のGDPRや日本の個人情報保護法などに準拠していることがより強く求められるようになったことがある。B2Bマーケティングにおけるデータマネジメントの肝は、この健全なデータを維持することに他ならない。ビジネス活動を継続する限り、新しいデータが手に入る。すべてのコンタクト情報を集約した上で、定期的に古いデータを新しいデータを入れ替え、マーケティングと営業が共有する。もっと言えば、マーケティングや営業を無視して自分勝手に“戦略商品”を開発しないよう、開発部門とも共有することが求められる。

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データマネジメントの欠落がもたらす悲喜劇

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この記事の著者

冨永 裕子(トミナガ ユウコ)

 IT調査会社(ITR、IDC Japan)で、エンタープライズIT分野におけるソフトウエアの調査プロジェクトを担当する。その傍らITコンサルタントとして、ユーザー企業を対象としたITマネジメント領域を中心としたコンサルティングプロジェクトを経験。現在はフリーランスのITアナリスト兼ITコンサルタン...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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