ターゲットは「中堅企業」、DXとバックオフィス生産性向上が目的
『マネーフォワード クラウド』は、これまで個人事業・中小企業向けの会計サービスから出発し、給与、経費、勤怠、社会保険まで拡大してきた。昨年はIPO準備企業向けのサービスを開始するとともに、M&Aにより、経営分析の「Manageboard」、入金消し込みの「V-Oneクラウド」などを追加している。今回新たに4つのサービスを加えることで、中堅企業向けのクラウドERPとして体系的なサービスを展開する。10月12日に行われた記者向け会見で、マネーフォワード 取締役 マネーフォワードビジネスカンパニーCOO 竹田正信氏が「マネーフォワード クラウドERP」を説明した。
「ターゲットは100名から1000名の個人や中小から成長した中堅企業。これまで、ITやクラウドという言葉に“冷たさ”を感じ、クラウドに移行できずにオンプレミスを利用してきた企業を取りこみたい」(マネーフォワード 竹田氏)
ERPといえば、大企業は外資系エンタープライズの製品、中小企業は国産のパッケージ型の製品がひしめいている。この中間に存在する中堅企業の市場は膨大で、まだまだオンプレミスが中心だ。既存のオンプレミス型ERPでは、サーバーの保守メンテナンスやバージョンアップの導入に時間がかかるうえ、他社のSaaS系のサービスとの連携が柔軟にできないことに加え、法制度の変更のたびに有償アップデートになってしまう。中堅企業のこうしたERPの課題を克服し、クラウドによる自動アップデートやAPI連携によって、バックオフィスの生産性の向上とDXへの対応を進めることが狙いだという。
新たに追加する4つのサービス
今回新たに加わるサービスは、以下の「債務支払」「債権請求」「固定資産」「人事管理」の4種類となる。
(1)『マネーフォワード クラウド債務支払』(2020年12月リリース予定)
取引先からの請求書に対するワークフロー承認から支払までの債務管理業務をペーパレスで完結。
- 電子帳簿保存法にも対応
- 会計ソフトと自動連携
(2)『マネーフォワード クラウド債権請求』(2021年春リリース予定)
- 受注から入金管理まで債権管理に関わるすべての業務を一元管理
- 会計ソフトやその他CRMツールなどとも自動連携
(3)『マネーフォワード クラウド固定資産』(2021年春リリース予定)
- 固定資産管理、減価償却・減損処理など、固定資産に関わるあらゆる業務をクラウド上で完結
- 複数担当者のPCやスマホなどデバイスから固定資産情報にアクセス、棚卸しができる
- 会計ソフトと自動連携
(4)『マネーフォワード クラウド人事管理』(2021年リリース予定)
- 従業員情報や人事異動情報の一元管理が可能になる人事DB
- 『マネーフォワード クラウド』やその他のSaaSと連携して、人事労務業務を一気通貫
パソナグループによる導入
マネーフォワードのサービスの強化の背景には、社会全体の変化への対応がある。その例が政府による「電子帳簿保存法の改正」、「書面規制、押印、対面規制の見直し」、菅政権誕生後の「デジタル省の創設」などだ。2020年の10月1日に改正された電子帳簿保存法により、クラウド上のデータなどで改変できないものは電子データとしての保存が可能になった。こうしたDXの進展とテレワーク加速により、企業の働き方やライフスタイルが大きく変化しつつある。
その代表的な企業として、先ごろ本社を淡路島に移設することを発表し話題となったパソナがある。パソナグループ全体の人事管理を一元的におこなうパソナHRソリューションでは、グループ4社の人事労務管理ツールとして『マネーフォワードクラウド給与』を活用している。
事例紹介として登壇した同社取締役副社長の吉永隆一氏は、「淡路島はワーケーションなど新しい働き方が試せる場所」だと語り、今回のマネーフォワードの導入もそうした「淡路島シフトの一環」であるという。吉永氏は今回の導入の効果についてこう語った。
「これまでグループ内で1,000名以上の企業ではエンタープライズ系のERPを活用してきており、300名以下の中堅・中小企業では未着手だった。エンタープライズ系のERPに比べると、導入も早くすみ、また機能がある程度限定されていることで、業務フローの見直しやBPRにつながった」(吉永氏)。
パソナグループでは今回の導入を踏まえ、今後は人事クラウドのBPOサービスとして外販をスタートしていく予定だという。