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デル・テクノロジーズが掲げるサーバーの“自動運転レベル5” 新たなPowerEdgeの全貌をみる

新CPU搭載だけではない、今だからこそ求められるサーバーの姿を具現化

 2021年3月18日、デル・テクノロジーズが次世代「Dell EMC PowerEdge」の新サーバー17機種を発表した。最新の第3世代Intel Xeonスケーラブルプロセッサーおよび第3世代AMD EPYCプロセッサーを搭載するサーバーで、デル・テクノロジーズではこれを“ユーザーのためのイノベーションエンジン”と位置づけている。

ラインアップ拡充で顧客の多様化するワークロードニーズに応える

 今回発表されたDell EMC PowerEdgeサーバーは、「たんにインテル、AMDの新しいCPUを搭載したものではありません」と言うのは、デル・テクノロジーズ データセンターコンピュート&ソリューションズ事業統括 製品本部シニアプロダクトマネージャーの岡野家和氏だ。製品開発においてデル・テクノロジーズでは、顧客からのフィードバックを聞くことに時間をかけてきた。たとえば、ここ最近の顧客の声として、ITを取り巻く環境変化がある中でデータをどこに置いて処理するべきか、高度化、多様化する攻撃に対しセキュリティをいかに確保すれば良いかなどである。このような、顧客がDXに取り組む上での様々な課題を解決するために、今回のPowerEdgeサーバーは、2年ほど前から開発されてきたものなのだ。

 PowerEdgeサーバーの基本設計思想は3つある。最新テクノロジーの優位性をいち早く取り込み、それらを適材適所で活用して新しいワークロードニーズに対応する「アダプティブコンピュート」、管理者が行わなければならない膨大な管理タスクを自動化し、生産性を向上する「自律型コンピュートインフラ」、ハードウェア、ファームウェアそしてソフトウェアの相互作用で高度なセキュリティ対策と脅威検知力を発揮する「プロアクティブレジリアンス」だ。自律化や高度なセキュリティ対策機能はこれまでも取り組んできたことだが、時代のニーズに合わせ強化している。

3つの特徴をもつ新たなPowerEdge
3つの特徴をもつ新たなPowerEdge
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 アダプティブコンピュートで最新テクノロジーを取り入れることは、ビジネスニーズに対しサーバーでの処理を最適化することであり、ビジネスを向上することにも直結する。そのためにデル・テクノロジーズでは「他ベンダーでは縮小傾向にある中、PowerEdgeではポートフォリオを拡大しています。その際のキーワードは、AIとエッジです」と岡野氏。17機種の刷新は、これまでの同社の歴史の中で最大規模のものだ。

 特に今回注目すべき点として、エッジや通信などの処理に特化したモデルを用意していることが挙げられる。また、2Uサイズのコンパクトな2ソケットサーバーにGPUを4枚まで搭載できる機種「R750xa」で、AIや機械学習の領域も強化した。

 さらに、汎用ワークロードに対応する製品も拡充している。従来のエントリーとフラッグシップの中間となるミッドレンジのラインアップを新たに追加しているのだ。「エントリーでは足りないけれど、最上位構成までは不要というユーザーに、よりコスト効率に優れたラインアップを加えました」と岡野氏は言う。

多様な要件に対応できる柔軟なラインアップに
多様な要件に対応できる柔軟なラインアップに
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 今回の新しい製品群で採用するCPUは、他ベンダーでも同じものが使える。つまり、CPU自体の差はない。一方、最新のCPUは性能が向上している分だけ「より熱く」なっている。また、機械学習のために多くのGPUを搭載することで、さらに熱を持ちやすい。この熱いサーバーを安定して運用するには、冷却が重要となる。

 デル・テクノロジーズでは、マルチベクタークーリングという独自の熱対策ハードウェアを提供し、今回はバージョン2.0としてそれを強化した。標準ファンと別により冷却効率の高いGoldおよびSilverファンを新規投入しており、CPUヒートシンクも新たに設計した。また筐体のエアフロー設計も見直し、システムボードレイアウトもより効率的な冷却ができるよう刷新しているのだ。これらに加え、iDRAC(integrated Dell Remote Access Controller:アイドラック)も活用した温度監視、管理能力の強化など、「これまでに考えられないような細かい温度やエアフローの制御がシステム単位、ラック単位で可能となっています」と岡野氏は自信を見せる。

徹底的な熱設計と温度監視で細かな制御が可能に

徹底的な熱設計と温度監視で細かな制御が可能に
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人がまったく介在しない管理の自律化を目指す

 3つの設計思想のうち、現状でデル・テクノロジーズのサーバー製品の方向性を最も強く打ち出しているのが、自律型コンピュートインフラだろう。数多く実施されている管理タスクを極力自動化し、人はDXにつながるイノベーションに注力できるようにする。このような個々のサーバー管理タスクの自動化は、他ベンダーも取り組むものである。一方でデル・テクノロジーズは、トータルな管理タスクの自動化を目指しており、サーバーインフラ管理全体の自律化を見据えているのだ。これはクルマで言うならば完全な自動運転に当たるレベル5であり、人間の管理者を一切必要としないサーバー管理を目指すものとなっている。

 既にPowerEdgeでは、クルマの自動運転レベルの2に当たる「手を放すことができる部分的な自動化」の域を超え、「目を離すことができる条件付き自動化」のレベル3の状況にある。これはスクリプトなどで管理ルールを設定し、人の介在なしにルールに沿った自動管理ができるものだ。そのために、サーバーの状態をリアルタイムに監視する常時テレメトリ配信の種類が180以上もある。現状では、集まったテレメトリの情報を別途解析することにはなるが、他ベンダーはそもそもテレメトリが常時取得できなかったり、テレメトリの対象が限定的だったりと、PowerEdgeのレベルには追いついていないのが現状だと岡野氏は指摘する。

自動運転レベル5相当の実現を見据える
自動運転レベル5相当の実現を見据える
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 豊富なテレメトリ情報を自動化のためのポリシー設定に活用できることに加え、管理の自律化の新たな要素として貢献するのが、ストレージ製品で提供中のCloudIQの仕組みだ。顧客システムを常時監視するだけでなく、機械学習を活用した予測型のシステム分析で既に実績を積んでおり、今年後半にサーバーでもサポート予定だという。つまり、各PowerEdgeサーバーの180種類のテレメトリは今後CloudIQで分析されることになるわけだ。

デル・テクノロジーズ データセンターコンピュート&ソリューションズ事業統括 製品本部シニアプロダクトマネージャー 岡野家和氏
デル・テクノロジーズ データセンターコンピュート&ソリューションズ事業統括
製品本部シニアプロダクトマネージャー 岡野家和氏

 「PowerEdgeでは、完全な自動化であるレベル5を実現するために必要なケーパビリティ(能力)が既に揃ってきています」と岡野氏。今後は機械学習などで得られる結果を実際に適用しても何ら問題ないかなど、自律管理の精度を向上させることで順次4、5とレベルを向上させ、完全な自律化を目指すこととなる。

 このようにデル・テクノロジーズの管理の自律化が他よりも進んでいるのは、多くの研究開発投資をこの領域に継続的に行っているからだと岡野氏は説明する。これは自律化を実現することが、ユーザーのDXに貢献することになるからこその投資だ。このように処理性能の向上だけでなく、他領域にも積極的な投資を続け実績を上げていることこそが、PowerEdgeの優位性でありユーザーからの評価につながっている。

多様な攻撃から守る最後の砦となり、エッジ環境の安全性確保へ

 もう1つ、プロアクティブレジリアンスで強化している、ハードウェアレベルでのセキュリティ機能も、PowerEdgeの大きな優位点となっている。米国に本社を置くデル・テクノロジーズのサーバーは、当然ながら米国の政府機関などでも数多く使われている。そのため、米国におけるNIST(米国国立標準技術研究所)の高いレベルのセキュリティ標準にも準拠した製品となっている。この高いセキュリティレベルの要求に応えるために、デル・テクノロジーズではiDRACを活用したハードウェアレベルのセキュリティ機能をこれまでも提供しており、継続的に強化を図っている。

 これに加え、デル・テクノロジーズでは、2020年末からサプライチェーンセキュリティにも新たに対応した。これまでもハードウェアそのものは「サイバーレジリエントアーキテクチャ」として、工場など現場での生産過程におけるセキュリティ対策は「サプライチェーン保証」として、攻撃者などによる改変がないことを保証する仕組みを提供している。これらに加え、輸送途中のセキュリティも含め万全にするため、輸送中に何らかの攻撃を受けたかどうかを検知する仕組み「Secured Component Verification(SCV)」を新たに加えているのだ。

コンポーネントレベルで異変を検知
コンポーネントレベルで異変を検知
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 SCVでは、工場から出荷される際にデジタル署名した証明書をiDRACに格納し、サーバーが納品された際に顧客が管理ツールを用いることで、サーバー製品がコンポーネントレベルで信頼性、整合性があることを、デジタル署名で確認できる。「他ベンダーでサプライチェーンを含めここまで厳密なセキュリティ管理をしているところがあるでしょうか。まさに、プロアクティブなセキュリティ対策と言えます」と岡野氏。SCVによってどこの工場で製造されようと、安全、安心が提供されることになる。ちなみにこのSCVの仕組みは、サーバーだけでなく今後デル・テクノロジーズのすべての製品に展開されていく。

 まだまだセキュリティ対策と言うと、アンチウイルスなどのソフトウェア防御やファイアウォールなどの境界防御のイメージが強い。とはいえ、多様化、高度化する攻撃からシステムを守るには、従来のセキュリティ機能だけでは十分ではない。ソフトウェアによる防御や境界防御なども欠かせないものだ。それらで対処しきれない攻撃に対し、ハードウェアレベルのセキュリティ機能は最後の砦のようなものと言える。

 実際、様々な方法でファイアウォールなどをすり抜けてくる攻撃があり、それらが大きなセキュリティインシデントにつながっている。攻撃者の侵入があっても、大事なシステムをどう守るのか。ハードウェアレベルのセキュリティ機能の重要性は、大きく増しているのだ。さらに、昨今はエッジコンピューティングの利用も増えている。エッジ環境には、様々な攻撃から守る仕組みが揃っているとは限らない。そのような環境でも大事なシステムを守らなければならない。この場合も、ハードウェアレベルでのセキュリティ水準の高さが重要となるのだ。

 今後、サーバーハードウェアを選ぶ際には、サーバーの処理性能やコスト効率の高さも重要な指標だが、管理の自律化により運用負荷が極めて小さくなることやハードウェアレベルの高いセキュリティ性があることが、選択の際の重要な要素となるだろう。

 そして、今回発表された17のPowerEdgeサーバーは、性能面の向上は当然として、その上で今後の重要な選択のポイントとなる点が強化された製品ラインアップになっている。

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谷川 耕一(タニカワ コウイチ)

EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーターかつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリスト...

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