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ソニックガーデン 倉貫義人さん 「プログラマを一生の仕事にするために」社内ベンチャーから起業

連載第11回:ソニックガーデン 倉貫義人氏 インタビュー

 IT関連のメディア記者を経験し、エンタープライズIT系のベンダーを経て、PR会社ビーコミ社長としてB2B系の企業広報を手掛ける加藤恭子の連載。今回は、ソニックガーデン 倉貫義人さんへのインタビューをお届けします。プログラマを一生の仕事にするというビジョンを掲げ、「納品しない」ビジネスを提唱するに至ったその背景を語っていただきました。

アジャイル開発をきっかけに社内第一号のベンチャーカンパニーへ

株式会社ソニックガーデン 代表取締役社長 倉貫義人 氏
株式会社ソニックガーデン 代表取締役社長 倉貫義人 氏

--まずはこれまでの経歴、ソニックガーデン起業に至るまでを教えてください。

 TISに新卒入社、2年ほど現場でSEとしてプログラミングや設計をしました。当時、ウォーターフォール型開発による働き方に大変さを感じ、何か改善できないかと思って、アジャイル開発を学びました。じわじわとその活動が伝わり、社内でも本社部門でもアジャイル開発に関しての支援を求められるようになりました。自分が考える働き方やチームを実現するには新規事業にする必要があり、当時の社長と相談したところ社内カンパニー制度ができてその第1号ベンチャーカンパニーとなりました。これがソニックガーデンの誕生の背景です。2009年のことです。

--そもそも数ある企業の中からTISに入ろうと思ったきっかけは何だったのでしょう?

 プログラミングは10歳の頃からやっていました。また学生時代からベンチャーで働き、そこそこ良い収入がありました。作ったゲームがメディアに取り上げられたこともあります。そのため「どこに行っても大丈夫だ」と謎の自信があったんです。新しいことをやりたかったので、オープン系の仕事をしたく、上場企業で技術力がある独立系で探しました。独立系なら新しい技術を扱っていそうですので。実際、TISはオブジェクト指向の分野で先進的だったんです。

 TISの最終面接では当時の役員の方が「大学で学んだことを教えてくれ」と言うので、そこにあったホワイトボードに学生時代に作ったゲームのアーキテクチャを解説しました。すると「(自分には)分からないけど、採用だな」と言ってくれました。面白い会社だなと思い、ここなら自分のやりたいことがやれそうと思い入社しました。

--MBOを考えたきっかけは何だったのでしょうか?

 当時はSaaS型の企業向けSNSをアジャイル開発で作り、そのサービスを提供していたんですが、その後黒字化のメドも経ち、MBO(Management Buyout)することになりました。TISは風通しのいい会社です。起業を自分から言ったら、後押ししてくださいました。企業の中にいると、多くの人は起業なんて言ってもだめだと思ってしまいがちで、言うに至らないことがあると思います。しかし、言えばチャンスをもらえるかもしれません。

--最初はどのようなメンバーでスタートしたのでしょう?

 一緒に独立したのは5人です。大半がTISで私の部署に新卒入社したメンバーで、一緒に起業したかたちです。外部から経営のプロやすごい人を招き入れたのではありません。起業という大きなリスクがあるなか、ついてきてくれた仲間には感謝しかないです。メンバーは、私個人というよりも、私たちが考えること、価値観や使命感のビジョンに共感してくれているのだと思います。

そもそもの問題は「納品」にあると気づいた

--独立後はどのようなビジネスをされていたのでしょうか? 社内ベンチャー時代のビジネスと比べて変わったところなどを教えていただけますか?

 独立後に企業向けSNSとは別の軸を持つか考えた時に、ビジョンを決めていないことに気づきました。ビジョンはどうやって決めるのだろうかと迷った時に、『ビジョナリー・カンパニー2』(ジム・コリンズ著)という本を読んだら「ビジョンとは、運転手が決めるのではなく、同乗者の顔ぶれを見て決めるといい」と書いてありました。そこで、自分たちのバスに乗る人の顔ぶれを考えたのです。うちの顔ぶれは全員がプログラマーです。ならば、「プログラマーが一生プログラミングで食っていける会社」になることをビジョンにしようと考えました。受託開発ならば、お客さんがいる限りは続きます。とはいえ、受託開発は普通にやると下請けになってしまい、それでは面白くない。じゃあ、どうしたら勝てるだろうかと考えました。

 そこで、ビジネルモデルを変えようと考えたのです。現状のシステム開発のビジネスの問題は何かを考えたとき、「納品」にいろんな問題があると気づきました。それなら「納品のない開発」をすればいいと思い至ったのです。

 この考えは『「納品」をなくせばうまくいく』(日本実業出版社)にまとめています。この本はおかげさまで評判となり、著書を見て「うちの会社でセミナーして」と依頼されることもあります。講演は本業ではないですが、業界のためになればと思ってお請けしています。本にまとめたのは、このアイデアで業績を上げられると確証を得てからなので創業から3年後になります。

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最初はぎょっとされたリモート営業

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この記事の著者

加山 恵美(カヤマ エミ)

EnterpriseZine/Security Online キュレーターフリーランスライター。茨城大学理学部卒。金融機関のシステム子会社でシステムエンジニアを経験した後にIT系のライターとして独立。エンジニア視点で記事を提供していきたい。EnterpriseZine/DB Online の取材・記事も担当しています。Webサイト:https://emiekayama.net

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

加藤 恭子(カトウ キョウコ)

IT記者を経て、ナスダック上場IT企業のマーケティング・PRマネジャーを歴任。 現在は、その経験を活かし、マーケティング・広報のコンサルティングを行う株式会社ビーコミの代表として活動。日本PR協会認定PRプランナー

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