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加藤恭子のエンタープライズIT業界の歩き方

外資系ITで築いた「人のつながり」で業界を進化させる タニウム 古市社長

連載第14回:タニウム 古市社長 インタビュー

 IT関連のメディア記者を経験し、エンタープライズIT系のベンダーを経て、PR会社ビーコミ社長としてBtoB系の企業広報を手掛ける加藤恭子の連載。今回は、若くして外資系企業でのさまざまなチャレンジと時に厳しい経験をし、現在はセキュリティ界のユニコーンと呼ばれるタニウムで日本代表を務める古市力さんに、その仕事術について訊く。新卒で外資系企業に入って奮闘し、さまざまな経験を振り返りつつ、世界を相手にするためのコミュニケーションの重要性、エンタープライズIT業界の営業という仕事の面白さについて語る。

新卒で大手外資系IT企業に就職、IBM流の営業の帝王学を学ぶ

タニウム合同会社 代表執行役社長 古市 力 氏
タニウム合同会社 代表執行役社長 古市 力 氏

 新卒でコンピュータアソシエイツ(以下CA。現在はブロードコムが買収)に就職した古市さん。当時は超大手のソフトウェア会社で、買収戦略などで数多くの企業向けソフトウェアを販売していた。この頃は日本オラクルなどで新卒採用を多く行なっており、新卒で外資系企業に入る流れができ始めた頃だった(筆者注:日本オラクルに新卒で入ってその後活躍しているエンタープライズIT業界の著名人としては年次は異なると思うが『THE MODEL』の著者の福田康隆氏やLINE AIカンパニーCEOの砂金信一郎氏などがいる)。

 古市さんはスタートアップのような企業に興味があったため、内定の出ていた日本企業ではなく、CAに入ることを選んだ。CAの日本オフィスは急拡大しており、社員数は400人くらいに膨れ上がり、さまざまな経歴の人が入社してくる。その中で古市さんに大きな影響を与えたのはIBM出身の上司だった。トップセールスで華々しい成績を収めたこの上司のもとで働いたことが、大きな転機になったと古市さんは言う。

 その上司は当時のIBMの過酷な環境を生き抜いてきた人だった。そんな上司からIBM流の営業の帝王学を学び、吸収していった。提案書は上司に添削され、真っ赤になって返される日々が続いた。「お客さんの潜在的な課題をどう顕在化するかということを延々とやっていました」(古市さん)。スパルタな上司に食らいつき、「振り返ってみると、自分は同年代の人と違うことをしていた気がしますね。当時話題になった高柳さんの『激動を奔(はし)る 伝説の営業マンからのメッセージ』(日経BP)と言う本があるのですが、その本の中で『IT営業はロマンがある』ということが書かれていて。まさにそういうことをやっていました」(筆者注:IBMに入社、その後は当時日本企業で勢いのあった日本タンデムコンピュータの社長となりその手腕から「伝説の営業マン」と言われた高柳肇氏の著書)

自分はメジャーリーグのような、特殊な場所にいた

 新卒の古市さんは周りの社員より若く、周りは全て先輩社員だ。今から振り返れば、理不尽ともいえる厳しい環境だった。「苦労してやっとサインをもらってきた注文書を、条件が不十分だという理由で、目の前で破り捨てられたこともありました」(古市さん)

 そんな中で、同じレベルになることを求められたことが成長につながった。そのことに気づいたのは転職した後だ。自分より年齢が上の営業担当がやっていることを見て、それがあまりに自分と違っていることに驚いた。そして、「自分はすごいレベルのことをやってきていたんだ、野球に例えたらメジャーリーグにいたんだ」と感じた。とある日系企業から来た人からは「お前がもし新卒でCAではなく日本企業に入っていたら、きっと潰されていただろう」と言われた。そして置かれた環境の大事さをあらためて感じたという。

 「自分みたいに尖っている人間は、適切な環境も与えられるし、頑張ってついていけば、どんどん道が開ける会社にいたことが本当に恵まれていましたね」と古市さんは言う。自分の性質を理解して、環境を選んでいくことはとても大事であるように思う。

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この記事の著者

加藤 恭子(カトウ キョウコ)

IT記者を経て、ナスダック上場IT企業のマーケティング・PRマネジャーを歴任。 現在は、その経験を活かし、マーケティング・広報のコンサルティングを行う株式会社ビーコミの代表として活動。日本PR協会認定PRプランナー

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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