
アドビは12月8日に、BtoB企業の経営層、営業管理職、マーケティング担当者約1,000人を対象に実施した「アフターコロナに向けたデジタル戦略に関する調査」の結果を発表した。それによると「デジタルマーケティングを導入していた企業の7割以上がコロナ禍における業績の縮小を回避」と回答したが、経営層の3割以上が「アフターコロナにおけるマーケティング課題がわからない」と答えるなど、マーケティングにおける経営の問題も浮き彫りになった。
デジタルマーケティング導入企業は業績悪化を回避

「アフターコロナに向けたデジタル戦略に関する調査」はBtoB企業に務める経営層、営業管理職、マーケティング/CRM部門担当など1040人を対象に2021年9月に行なわれた。調査発表会見でははじめにアドビの山下宗稔氏が、この調査の結果のポイントを以下の3点に整理して述べた。
- デジタルマーケティングソリューションを導入している企業が、コロナ禍における業績の縮小を回避できた
- デジタルマーケティングソリューション未導入企業の半数以上は「施策が無い/分からない」
- 経営層と現場でのマーケティングに関する認識に乖離、経営層の3割以上が、アフターコロナのマーケティングが「わからない」
ここでいうデジタルマーケティングソリューションとは、Webinar、Web商談、案件管理などのソリューションとされ、調査対象のうち、約1/3程度の32%が導入している。
デジタルに遅れた企業の業績悪化が顕著
今回の調査では、36.1%がコロナ禍以前と比較して業績が縮小したと回答。この傾向は、デジタル化に後れを取っている企業に対して顕著に表れており、デジタルマーケティングソリューションを導入していた企業のうち、業績が縮小したとの回答は27.1%にとどまったものの、そうでない企業については約1.5倍の40.3%にまで及ぶ結果となっている。デジタルマーケティングソリューションを利用している企業は、「顧客との関係性構築」を重要視し、「顧客のニーズ/アンメットニーズ」に応じ、適切なタイミングに適切な情報発信をしていたことが業績悪化を食い止める要因になったと推測される。

浮上した経営層とマーケターの乖離
本調査で明らかになったのは、従業員がコロナ禍に行った対策に対して、経営層には理解が浸透していないことだ。マーケティング担当者がコロナ禍以前の施策を見直し、オンライン商談やオンラインセミナーの強化を実施してビジネスの維持を図っていた一方で、経営層の42.0%が「特に見直しはしていない」と回答しており、企業内でのマーケティング戦略にデジタルマーケティングがどれほど寄与していたかについて、経営層の理解が限定的だといえる。

またアフターコロナのマーケティング課題についての質問では、マーケティング担当者からは「顧客との関係性構築」(44.1%)や「リードの獲得」(39.3%)という具体的な項目が挙げられた一方で、経営層の3割以上から「特にない/わからない」との回答だった。マーケティングについては経営層と従業員の間で認識の乖離が目立っている。

約4割がアフターコロナのデジタル活用意欲的、企業間のデジタル格差が明確に
デジタルマーケティングソリューションを導入している企業では、顧客との接点をデジタル化する傾向が顕著で、半数以上の回答者がオンライン商談の強化(57.5%)やオンラインセミナーの活用(50.3%)に積極的に取り組んでいる。一方で、デジタルマーケティングを採用していない企業では、そのような取り組みが限定的となっており、特に見直しはしていない(37.1%)との回答が最も多く寄せられたことから、デジタル化の進捗状況によって企業の対応力に差が出ている。

一方、デジタルマーケティングの活用を推進している企業の経営層は、アフターコロナにおけるテクノロジーのさらなるビジネス活用に意欲的だった。今後の注力分野として「デジタルツールを活用した業務プロセスの改善」(42.6%)、「デジタルツールを活用した新たなビジネスモデルの構築」(41.6%)を挙げるなど、未導入企業との差(それぞれ17.5%、14.0%)が大きく表れる結果となった。
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京部康男 (編集部)(キョウベヤスオ)
ライター兼エディター。翔泳社EnterpriseZineには業務委託として関わる。翔泳社在籍時には各種イベントの立ち上げやメディア、書籍、イベントに関わってきた。現在はフリーランスとして、エンタープライズIT、行政情報IT関連、企業のWeb記事作成、企業出版支援などを行う。Mail : k...
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