アドビが実施した「未来のマーケティングに関するグローバル調査」によると、日本のマーケティング担当者は、世界と比較して積極的にAI(人工知能)や機械学習を採用していることが明らかになった。
この調査は、企業のマーケティングの実態や今後の方向性を明らかにすることを目的に、日本を含めた世界6か国(米国、英国、フランス、ドイツ、オーストラリア、日本)の消費者とマーケティング担当者を対象に実施したもの。
一方で、消費者の約半数は企業の提供するパーソナライゼーションに満足しておらず、消費者の求める顧客体験の水準が高まっていることがわかったという。また、管理者層でのデータガバナンスに関する理解に遅れが出ていることも判明したという。
日本のAI/機械学習の活用割合は41%で世界でトップ
コロナ禍によって日本のマーケティング分野でもデジタル化が進んだ。背景にあるのは、企業と消費者のチャネルがリアル店舗、オンライン、スマートフォンやインターネットなど多様化とテクノロジー化が進んだことになる。
今回の調査ではマーケティング担当者の半数以上(54%)が、自社のマーケティング テクノロジーに高い信頼を寄せていると回答している。マーケティング担当者のテクノロジーへの関心が高まっている。
特に、注目すべきは、AI/機械学習の分野だ。日本では回答者の41%が積極的に活用しており、これは調査対象となった6か国の中でフランスとならび最も高い結果となった。日本はしばしばデジタル後進国と評されるものの、新しいテクノロジーを活用して顧客体験を改善し、業績につなげようとする前向きな姿勢が明らかになった。
AI/機械学習を活用している領域としては、コンテンツのパーソナライゼーション(55%)が最も多く、次いでコンテンツの最適化(47%)が挙げられ、顧客が購入を決定するまでのカスタマージャーニーに集中していることがわかった。
日本のマーケティング担当者は今後のAI/機械学習への投資に意欲的で、コンテンツのパーソナライゼーション(55%)に加えて、マーケティング予算の最適化(45%)といった現在AI/機械学習の導入が進んでいない領域にも展開していきたいという意向が明らかとなった。
日本のマーケティングの弱点は「パーソナライズ」
AI/機械学習の活用やテクノロジーへの関心度が高い一方で、近年のデジタルマーケティングの重要なテーマである顧客への適切なパーソナライズによるマーケティングという面では、日本は非常に弱いという結果が出た。
「パーソナライズされた体験を大規模に展開する」という点において、日本のマーケティング担当者は世界で最も自信を持っていないことが明らかとなった。
現在、日本企業のマーケティングコンテンツのうちパーソナライズされたものは25~50%となっており、マーケティング担当者はこれを50~75%にまで拡大することを理想と捉えている。優先すべき項目として、マーケティング担当者は、商品のレコメンデーション、顧客氏名の表示(電子メールやwebサイトなど)、割引オファーをパーソナライズすることが重要であると考えており、消費者も同様にこの3つの項目を最も重視すると回答している。
しかし、日本の消費者のうち約5割が、現在パーソナライズされたコンテンツに価値を感じていないという。また、企業が提供している顧客体験が消費者の求める水準に達していないこともわかった。「過去12ヶ月間に企業のデジタル顧客体験が改善した」と答えた日本の消費者はわずか15%で、米国の37%やオーストラリアの36%と比較して、グローバル全体で最も低い結果となっている。デジタル中心の生活となり、消費者はあらゆるチャネルを跨ぎ一貫性のある顧客体験を求めている、企業の対応が消費者のニーズを満たしていないと考えられる。
顧客との信頼関係構築が日本企業成長のカギ
企業と顧客との関わり方が変化するにつれて、信頼関係がビジネスの成長に直結する重要な要素となる。日本の消費者は信頼のおけるブランドに対して、商品を購入したり(62%)、口コミで拡散(32%)したりする一方、信頼性の低いブランドからは購入を控えたり(70%)、情報の受信を止めたり(44%)と、顧客との信頼関係の構築が企業の収益に響くことが明確になっている。
日本の消費者は企業との信頼関係において、愛される商品を提供すること(43%)や、自分のデータに対するコントロールを得ること(37%)を求めている。一方で企業が取り組んでいることとしては、データ利用の透明性を保つことや(64%)、個人データの使用許可を得ること(57%)が挙げられており、両者とも信頼関係において企業に提供した個人データの活用方法を重視していることも明らかとなった。
日本の管理者層はデータガバナンスに対する理解が不足
このような中、ほぼ全てのマーケティング部門の管理者(94%)が、自社の優先順位としてデータガバナンスを挙げている。しかし、日本の管理者のうちデータガバナンスやプライバシーポリシーについて「十分理解している」と回答した割合は43%と、グローバルで最も低い結果となった。さらに、グローバル平均で86%の管理者が自社におけるデータガバナンスの実行力に懸念を示しているのに対し、日本では同様の回答が65%と、管理者層がデータガバナンスの重要性を理解しつつも、実際には十分な関心を寄せておらず、世界の管理者層と比較しても課題意識が低いことが明らかとなった。
進んでいないサードパーティCookie依存からの脱却
データ利用に関する消費者からの期待や法規制の課題、着実に迫っているサードパーティCookieの廃止といった要因が重なっているにも関わらず、企業の方針転換が進んでいないことが明らかとなった。日本企業においても、サードパーティCookie廃止に向けて、アイデンティティパートナーとのデータ連携(66%)、他ブランドとのデータ連携(59%)、ファーストパーティCookieの活用(49%)が進められている。しかし、新規顧客の獲得(52%)、顧客体験のパーソナライゼーション(47%)、収益の創出(43%)といったビジネスの根幹となる部分で、現在でも引き続きサードパーティCookieを利用していると回答しており、サードパーティCookieからのデータ取得が難しくなっている中で、企業は早急にクッキーレス時代のデータ戦略を推し進める必要に迫られているという。
本記事は、アドビがリリースした記事の内容を編集したもの。「未来のマーケティングに関するグローバル調査」は、アドビが日本を含めた世界6か国(米国、英国、フランス、ドイツ、オーストラリア、日本)の消費者とマーケティング担当者を対象に実施したオンライン調査。