第三次AIブームの初期、AIは大上段に語られてきた。その用途は、脅威分析、需要予測、物流、エネルギー、都市など広く幅広い社会領域に及び、高度な専門性を感じさせる一方、AIが人知を超え、人間の仕事を奪うという議論も交わされた。しかし最近では、AIはテクノロジーとしてすっかり日常のビジネスに浸透し、B2Bのビジネスの中に溶け込んでいる。パンデミックを経た米国で、特に目覚ましい進化を遂げているのが、AIテクノロジーを活用したクリエイティブ領域だ。アドビが最近発表した事例からは、AIが主導するクリエイターエコノミーともいえる潮流が見えてくる。
Adobe Senseiが活躍している理由

ワトソン、アインシュタイン、レオナルド……。IT大手企業が相次いで発表したAIのブランドは偉大な天才の名前が多く、全脳型の知性と先端性を感じさせた。それに比べると、日本語の「先生」に由来するアドビの「Adobe Sensei」は、身近なイメージ。どちらかといえば、AIの先端性よりも少し地味な印象を与えたかもしれない。
しかし、この「Adobe Sensei」がこれまでに増して大活躍している。米国ではCovid-19によるパンデミックによって、クリエイターやデザイナーなどの在宅ワークが隆盛したこともあり、Adobe Creative Cloudなどのツールが浸透しているという背景がある。そして、最近では、デザインツールだけにとどまらず、マーケティング、顧客体験、デジタル文書、契約管理などB2Bの領域に拡大している。これらのデジタルツール背景にはアドビのAIテクノロジーがある。「ポスト・パンデミック×クリエイターエコノミー」の世界の進展が「Adobe Sensei」を後押ししているといえるだろう。
こうしたアドビのAIテクノロジーのいくつかの代表的なものは「Adobe Summit 2021」の各セッションで紹介されたが、さらに注目すべきは開発中の製品やプロダクトをチラ見せする「Sneaks」というセッションの数々だ。ここではその6つのプロジェクトを紹介する。

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京部康男 (編集部)(キョウベヤスオ)
ライター兼エディター。翔泳社EnterpriseZineには業務委託として関わる。翔泳社在籍時には各種イベントの立ち上げやメディア、書籍、イベントに関わってきた。現在はフリーランスとして、エンタープライズIT、行政情報IT関連、企業のWeb記事作成、企業出版支援などを行う。Mail : k...
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