
上場企業、あるいはこれから上場を目指す企業にとってESG(環境、社会、ガバナンス)経営の重要性が高まるばかりだ。しかし、取り組み成果の開示以前に、企業価値への貢献を測定する方法に悩む経営者が少なくない。ESG経営の壁を越える方法について、アビームコンサルティングの今野愛美氏に訊いた。
3つの機能で打ち出す「Digital ESG経営」
――まず、アビームが提唱している「Digital ESG経営」の考え方の紹介からお願いします。
アビームの造語で「デジタル×ESGによる“見えない企業価値の可視化”と“新しい経営管理“の実現」というコンセプトで、2018年から提唱してきたものになります。企業がこれまで取り組んできたESG活動や社会ムーブメント対応の意味合いでのSDGsの枠を超え、積極的に非財務情報を活用することで、持続可能な経営を目指してほしい。そう考え、Digital ESG経営の実現を支援するサービスを立ち上げました。非財務情報を活用する基盤として、3つの機能から成るDigital ESG Platformを提供しています(図1)。

その3つの機能とは、非財務情報を収集し情報を一元管理する「Digital ESG Data Connection」、収集した非財務情報が経営に与えるインパクトを分析する「Digital ESG Data Analytics」、非財務情報と企業価値に関連する情報を可視化し、経営層や関係者の確認や意思決定を促す「Digital ESG Cockpit」です。2018年に発表したコンセプトの下、初めて一緒にプロジェクトを行ったのがエーザイで、以降も多くの企業と一緒に取り組みを進めています。
――プロジェクトを一緒に進めるのはどこの部署でしょうか。
多いのは経営企画部もしくはIR部ですね。私たちのお客様にとって、非財務情報の活用と聞いてまず連想するのはESG対応です。お客様との対話を通じて、決算報告書や統合報告書に記載する投資家との対話材料や、財務領域と非財務領域との融合への解を求める動きが顕在化していると感じます。これまでは定性的な情報が中心だったけれども、社会的な潮流の変化を受けて定量的な分析を加味したいと皆さん意欲的です。
――非財務情報の活用にはどんな目的がありますか。
多いのは情報開示の負荷軽減を目的とするお客様です。当初は3つの機能のうちData ConnectionやCockpitに関心を持たれることが多いのですが、実際は9割の企業がData Analyticsから取り組みを着手しますね。と言うのも、非財務情報に分類されるデータは多種多様で、これまでデータ管理が進んでいなかった領域とあって、社内のどこの部署にどんなデータがあるかを十分に把握できていない場合が多いのです。まずは手元にある、集められるデータを用いた分析を優先し、企業価値へのインパクトを可視化しよう。そんな事情でData Analyticsから着手する企業が増えています。

デジタルプロセスビジネスユニット FMCセクター シニアマネージャー
今野愛美氏
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冨永 裕子(トミナガ ユウコ)
IT調査会社(ITR、IDC Japan)で、エンタープライズIT分野におけるソフトウエアの調査プロジェクトを担当する。その傍らITコンサルタントとして、ユーザー企業を対象としたITマネジメント領域を中心としたコンサルティングプロジェクトを経験。現在はフリーランスのITアナリスト兼ITコンサルタン...
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