
CMS(Content Management System)のビジネスで成長してきたサイトコアが、今大きく戦略を変えようとしている。2020年9月に就任したCEOスティーブ・ツィカキス氏は、今後のビジネス成長に向けて、2021年1月から12億ドル(約1,300億円相当)の大規模投資を実施していくことを明言した。新しい成長戦略で製品ポートフォリオがどう変わろうとしているのか。サイトコア日本法人に訊いた。
ツィカキスCEOが見据える4つの戦略の柱

ツィカキス氏はサイトコアのCEOに就任後、早々に新成長戦略の柱として以下の4つを据えた。
- SaaS企業の買収
- 技術イノベーションの加速
- 人員の増強
- 日本及び中東市場への投資強化
この戦略の一環で、サイトコアは2021年3月にCDP(Customer Data Platform)製品を提供するBoxever、4月にコマース製品のFour51、5月にMA製品のmoosend 、9月にAI搭載の検索処理製品のReflektionと、4つのSaaS企業を買収している。買収で重視したのは、他社製品との連携性を高めるテクノロジー領域の強化であり、具体的にはマイクロサービス、APIファースト、クラウドネイティブ、ヘッドレスが該当する(図1)。

これまでのサイトコアは、顧客体験提供のインフラとなるCMS(Content Management System)を中心に企業のマーケティング活動をサポートするソリューションを提供してきた。コンテンツ管理のニーズは依然として大きいが、すでに他社のCMS製品を導入している場合も多い。CMSに限らず、インフラソリューションは置き換えにくい性質があるが、他のソリューションを組み合わせる拡張ニーズは確実に押さえたいところだ。
実際のところ、マーケティング部門が必要とするテクノロジーは多種多様であり、現在の市場環境ではスイートとして包括的にテクノロジーソリューションを提供できるベンダーは存在しない。企業側も最初はスモールスタートで最低限の仕組みを整え、その後の施策の高度化に即して、随時ソリューションを拡張することが現実的という事情もある。
米調査会社のガートナーは、「2023年までに60%の企業が新しいアプリケーション投資にコンポーザビリティを求めるようになる」と予測している。この拡張ニーズに応えるには、すでに企業が導入している製品との連携が容易なアーキテクチャーでなくてはならない。自社製品を中心とするソリューションを拡充しつつ、一部の製品だけの導入も可能にするには、APIで製品間の連携ができるSaaSを中心に製品ポートフォリオを変えることが必要になる。
ガートナーは、「コンポーザビリティを確保することで、新機能を80%早く実装できるようになる」とも主張している。SaaSであれば、運用しながらのアジャイルな拡張も容易に対応できるわけだ。「今までの製品提供を止めるのではなく、『コンポーザブルデジタルエクスペリエンスプラットフォーム(DXP)』を戦略的に推していきたい」と、サイトコア製品のプリセールスを担当する原水氏は意気込む(図2)。

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冨永 裕子(トミナガ ユウコ)
IT調査会社(ITR、IDC Japan)で、エンタープライズIT分野におけるソフトウエアの調査プロジェクトを担当する。その傍らITコンサルタントとして、ユーザー企業を対象としたITマネジメント領域を中心としたコンサルティングプロジェクトを経験。現在はフリーランスのITアナリスト兼ITコンサルタン...
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