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富士通 柴崎辰彦の「一番わかりやすいDX講義」

JR東日本 松本氏に聞く:デジタル変革の波に乗り「やりたいこと」でチャレンジする

第19回【DX実践研究編】JR東日本のデジタル変革に向けた挑戦【前編】


 富士通で初めてのデジタル部門の創設やサービス開発に取り組んで来た著者の実践に基づくDX連載の第19回。著者は、富士通 デジタルビジネス推進室エグゼクティブディレクターの柴崎辰彦氏。シリーズの第3部となる「実践研究編」では、実際にデジタル変革に取り組む企業の取り組みをプロジェクトリーダーのインタビューを通してご紹介する。実践研究編3つ目の事例は、東日本旅客鉄道株式会社 JR東日本研究開発センターフロンティアサービス研究所(以下JR東日本)松本貴之氏にお話をお伺いした。

ヒトが生活する上での“豊さを起点”とするDXの推進

JR東日本研究開発センターフロンティアサービス研究所 松本貴之氏
JR東日本研究開発センターフロンティアサービス研究所 松本貴之氏

 JR東日本は、1987年4月1日に、国鉄分割民営化に伴い長野、新潟及び東北・関東地方の鉄道事業を引き継いで発足しました。日本国内では東北地方、関東地方、甲信越地方を中心とした地域に鉄道路線を保有して運営しているほか、多様な関連事業を展開しています。意外と知られていませんが、鉄道を運営する会社としては輸送人数×距離で世界最大であり、運輸収入ではドイツ鉄道と比肩する規模です。

 同社は、2018年に発表したグループ経営ビジョン「変革2027」で「発足以来軸としてきた駅や鉄道の利便性で収益向上を図るハード起点のモデルを転換し、ヒトが生活する上での“豊さを起点”とするDXの推進を図る」と発表しており、デジタル変革への積極的な取り組み姿勢を明確にしています。

 今回、ご紹介する松本さんが所属するJR東日本研究開発センターは、環境の変化に迅速・的確に対処するために2001年12月に設立され、役割・使命に応じた6つの研究開発組織を配置しています。そのうちの一つであるフロンティアサービス研究所は、駅・車内サービスのイノベーションとこれを支える安心な構造物の実現を目指して「個々のお客さまのニーズに応じたサービスの提供」、「誰にでも使いやすい駅空間の構築」「鉄道特有の建設技術の創造」をテーマに据えています。

一見控えめなデジタルイノベーター

 松本さんとはじめて出会ったのは、2018年Pivotal Labs Japan(現VMware Tanzu Labs)のイベントでの講演をお聞きした時でした。当時の印象は、失礼ながら「同じ匂いのする奴」というのが第一印象でした。当日の懇親会で意気投合したときからのお付き合いなのですが、どこが同じ匂いなのかというと苦労しながらも大きな企業をベースグランドにイノベーションにチャレンジしているところ。直感的にそう感じました。

 松本さんはJR東日本アプリという会社名を冠した情報提供アプリの開発をリードし、同アプリは現在600万件以上のダウンロードを記録しているといいます。松本さんは、デザイン思考の総本山とも言えるIDEOとの協業や、リーンスタートアップの提唱者として知られるエリックリースが取締役を務めていたPivotal Labsに常駐をしてきました。こうした国内外の研究機関への参加が、本質の理解につながっているのです。

 ユーザーの抱える課題や潜在的に感じる価値の仮説を立て、ユーザーインタビューなどを通じて仮説を検証し、事業視点・技術視点を考慮したソリューション案を構築、プロトタイプなどを用いたユーザーインタビューによって妥当性を確認した後、商用プロダクトとしてリリースするというリーンスタートアップのプロセスを実践されてきました。

 またかねてからMITでの留学経験等をベースに、海外の鉄道関係の会議や技術交流にも積極的に参加してこられましたが、デザイン思考を採用するキッカケはドイツ鉄道との意見交換だったとお聞きししました。

 とかく、保守的なイメージの強い社会インフラを支える会社の研究員でありながら、先見性と実行力を兼ね備えたデジタルイノベーターという印象だったのですが、今回インタビューを通して実は、悩みながらも試行錯誤をしてきた苦労人でもあることがわかりました。まずはそのあたりから紐解いていきたいと思います。

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「やりたいことをやって会社内で生きる」には

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柴崎 辰彦(シバサキタツヒコ)

香川大学客員教授 富士通株式会社にてネットワーク、マーケティング、システムエンジニア、コンサル等、様々な部門にて“社線変更”を経験。富士通で初めてのデジタル部門の創設やサービス開発に取り組む。CRMビジネスの経験を踏まえ、サービスサイエンスの研究と検証を実践中。コミュニケーション創発サイト「あしたの...

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