メタバースは没入型イノベーション
今回のAdobe Summitでは同社が初めてメタバースの世界観を紹介したことが注目される。アドビの安西敬介氏、橋本翔氏はその概要を、動画「Insights from Adobe Summit 2022」で解説している。キーノートのセッションでアドビは没入型の3D体験作成ツールや、Eコマースプラットフォーム、バーチャル顧客体験を「メタバースReady」な製品群にしていくと表明し、事例として顧客体験のパーソナライゼーションソリューションの連携の模様が紹介された。さらに、メタバース対応の主な要素を含む数々のテクノロジーの進化とデジタル体験の提供に関して、The Coca-Cola Company、Epic Games、NASCAR、NVIDIA などトップ企業とのコラボレーションを発表している。
アドビは2022年中にSubstance 3D Collectionの3D機能を拡張し、新しい「Substance 3D Modeler」を追加することで、3Dビジュアルとエクスペリエンス制作を支えるソリューションとして刷新する予定だ。アドビの3Dツールは、Fortnite、Roblox、Halo、Flight Simulatorなどの没入型ゲームの開発に使われている。また「Dune」「The Mandalorian」「Blade Runner 2049」などの映画にも使用されている。また、アドビは、AR体験をオーサリングする業界最先端のツールであるAdobe Aeroも提供している。
アドビが公開したメタバースのプレイブックでは、メタバースを「共有可能な没入型体験」と定義している。そしてこの没入型体験を、「ブランドと顧客が交流する新しい可能性」として位置づけ、「Experience」「Device」「Commerce」「Engines&Delivery」「Creative Ecosystem」の5つの分野で拡充していくというのが、アドビのメタバースの方向性だ。
製品面では、「メタバースReady」な没入型コンテンツの制作のための3Dデザインやレンダリングツールを今後さらに進化させ、製品設計やマーケティングおよびEコマース資産の開発に活かしていくようだ。
「例えば、遠隔地にいる同僚がバーチャルデザインスタジオで一緒に新製品を開発したり、顧客が衣服をカスタマイズして自分だけの一着を作り、自分の体型やサイズを模倣したアバターでそれがどう見えるかを確認するなど、さまざまな形で実現することができること」(『メタバース プレイブック』より)
将来的には、メタバースの中でのEコマースが新たなビジネスチャンスを生む。現在、アドビの事業は、BtoBでの企業のデジタルソリューションを提供するAdobe Experience Cloudと、Photoshop、Illustratorなどに代表されるクリエイター向けのツールを提供するAdobe Creative Cloudの2つがある。この2つの領域が、メタバースの時代には融合していく可能性を見据えているといえるだろう。