攻めのIT投資で電力・ガス業界をリードする関西電力
経済産業省では、東京証券取引所に上場している企業の中から、その年の「DX銘柄」にふさわしい企業を業種ごとに選び、紹介している。選定銘柄企業は、いずれも優れた情報システムの構築や積極的なデータ活用にとどまらず、ビジネスモデルそのもの、あるいは経営変革に果敢にチャレンジする姿勢を示していると評価された企業ばかりだ。
「DX銘柄」の前身となるのが、2015年から選定の始まった「攻めのIT経営銘柄」である。当時の選定条件では、変革の実践よりも、中長期的な企業価値向上や競争力強化を目的として積極的にIT活用を進める企業を選出しており、関西圏に電力を供給する関西電力は、2018年と2019年の2回、電力・ガス業としては唯一の選定を受けている。特に、2019年の「攻めのIT経営銘柄」選定時には、社長をトップに「DX戦略委員会」を立ち上げ、ビジネス部門にDX推進体制を構築したこと、そのサポートのためにデジタル専門会社を設立したことを評価された。DX銘柄企業ではないものの、関西電力は積極的にデジタル投資を進めている電力・ガス業界のリーダー的存在と言えるだろう。
2021年4月からは「関西電力グループ中期経営計画(2021-2025)」の実行が始まった。実は、計画策定時と比べ、現在は大きく経営環境が変化している。当時は再生エネルギーの大量導入に、原油価格の下落が加わり、電力市場の取引価格が大幅に低下すると予想していた。ところが、2022年2月からのウクライナ情勢の影響で、一時は1バレルあたり20ドル水準にまで落ち込んだ原油価格が120ドル水準にまで高騰し、計画の前提条件が崩れてしまった。関西電力の場合、その電源構成はLNG(液化天然ガス)火力が4割超で最も多く、石炭火力、原子力、水力がこれに続く。LNGの輸入元の多くはオーストラリアだが、ロシアからの輸入がゼロではない。
不透明な経営環境が続き、難しい経営の舵取りが求められる中、2022年3月期決算は残念ながら減収減益となった。それでも、2025年に向けて経常利益1,300億円の目標を達成する計画を変更するつもりはない。達成に向けてのビジョンのビジョンは明確だ。「エネルギー」「送配電」「情報通信」「生活・ビジネスソリューション」それぞれの事業でデジタル化を推進する。さらに、事業領域の重なり合うところで新しい価値を創出する。一連の取り組みを通じて、「様々な社会インフラサービスを提供するプラットフォーマーの担い手になる」ことを目指す。このビジョンには、電気以外の様々なソリューションをお客様に提供し、強靭な経営体質に改善していきたいとする思いが込められている。