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紛争事例に学ぶ、ITユーザの心得

個人事業主への発注リスク、正しく見積もって依頼できてますか?

 本連載はユーザー企業の情報システム担当者向けに、システム開発における様々な勘所を実際の判例を題材として解説しています。今回取り上げるテーマは「個人事業主への発注」です。クラウドソーシングなどのサービスを通して、個人事業主へ発注する機会が増えておりますが、リスクを見積もって発注を行わないと、痛い目に合うケースもあります。今回の事例を通して、個人事業主への発注の勘所を学んでいきましょう。

当たり前になってきた個人事業主への発注

 読者の皆様は、ソフトウェアの開発をクラウドソーシングを利用して、個人事業主へ発注したことはありますか? その数が爆発的に増えているという印象こそありませんが、比較的小規模な開発案件を、クラウドソーシングを利用して依頼することは、もう二十年以上も前から、一定の需要と供給が変わることなく存在しています。結果、システム完成のための一形態として定着した感はあります。

 ITベンダーにもソフトウェア企業にも属さない、個人事業主への発注は確かにコストメリットがあります。ホームページ作成や比較的小規模な開発には有効でしょうし、大規模開発の一部をお願いすることもあるようです。

 ただ、誰もが心配するように、個人事業主へ仕事を依頼する場合には、その作業や成果物の品質を誰も保証してくれません。企業であれば、開発者の作った設計書やプログラムに内部レビューやテストを行い、欠陥の是正を行えるのですが、個人事業主に頼むと、そのあたりはどうしても発注者側がチェックする必要があります。

 また、優秀な技術者であったとしても、その人が病気や怪我でいなくなることもありますし、私の知るケースでは破産して行方不明になってしまったという技術者などもいます。今回は、そうした個人事業主への発注のリスクが具現化した裁判の例です。ベタと言えばベタな内容ですが、発注者として注意すべき点の示唆もあるかと思います。では、事件の概要から見ていきましょう。

個人事業主への発注がトラブルを生んだ事例

【東京地裁 令和2年2月26日判決】

インターネット関連コンサルタント会社Yは顧客企業から、業務系システムの製作を依頼され、Yはこの作業をクラウドソーシングを通じて応募してきた自営業者Xに依頼した。開発に入ってから両者のやりとりは主としてクラウドソーシングのメッセンジャー機能を介して行われた。

Xは請負契約に基づき、当該システムのうち、生産等管理システムの製作を完了し支払いも受けたが、併せて請け負っていた追加人事管理については、ファイルのインポート機能に不具合があった他、画面入力に関しても修正点があったため、これをXに依頼した。しかしXによる要望の理解や作業に不安を覚えたYはXに対して直接対面しての打ち合わせを希望したが、Xはこれに応じず、さらに交渉を重ねようとしたところXからYへの連絡が途絶えた。この為、Yはシステムの完成に不安を覚えXに対して本件開発の停止を伝え、プロジェクトは頓挫した。Yは人事管理システムについて検収を行わず、費用支払いも行わなかった。

これについてXは、人事管理システムは既に完成し、サーバーにアップロードしている。Yがこれを検収しないのは債務不履行(受領遅滞)にあたるとして、費用の支払い等をYに求め訴訟を提起したが、Yはシステムは完成していないと反論した。

(出典:ウエストロー・ジャパン)

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一時的に連絡がとれないことは、重大な問題か

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この記事の著者

細川義洋(ホソカワヨシヒロ)

ITプロセスコンサルタント東京地方裁判所 民事調停委員 IT専門委員1964年神奈川県横浜市生まれ。立教大学経済学部経済学科卒。大学を卒業後、日本電気ソフトウェア㈱ (現 NECソリューションイノベータ㈱)にて金融業向け情報システム及びネットワークシステムの開発・運用に従事した後、2005年より20...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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